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H・アール・カオス『エタニティ』インタビュー!

H・アール・カオスが、この夏6年ぶりとなる待望の新作『エタニティ』を発表! H・アール・カオス主宰であり日本を代表する演出家のひとり、大島早紀子さんが構成・演出・振付を、ダンサーの白河直子さんがソロを踊る注目作です。開幕に先駆け、大島さんと白河さんのお二人にインタビュー。作品への意気込みをお聞きしました。

1989年のカンパニー結成以来、常に時代を先駆けた作品を発表し、さまざまなタブーを打ち破ってきました。当時、公然わいせつ罪の疑いで警察に事情聴取されたという有名なエピソードがありますね。

大島>『秘密クラブ・・・浮遊する天使たち』(1992年初演。上半身裸で踊るシーンが公然わいせつ罪にあたるとして警察の取り調べを受けた)ですね。警察が来てその部分だけ見せろと言われたけれど、私はOKしなかった。最初から全部観ないのなら見せない、そうじゃなければ意味がないと言って。公然わいせつ罪の定義についても、“それは一般の人が決めることで、あなたも私も一般ではないでしょう?”と言って譲らなかったので、なかなか帰してもらえなくて、結局20時間ぐらい劇場に足止めされました。だけどあのときは若かったし、三〜四日は寝なくても全然平気だったので、私としては何時間かかろうと構わなかった。ちょっと異常なくらい元気でしたね。

白河>本当にすごかったです。“この人は一体何を食べて生きてるんだろう?”って思っていたくらい(笑)。

大島>最終的に警察の方と一緒にビデオを最初から観ましたが、そこでわかっていただけて。これには後日談があって、その警察の方たちが次の公演を観に来てくれたんです。まぁ、今となってはいい想い出ですね(笑)。

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

おふたりの発表する作品は、日本のコンテンポラリーダンス界をリードするとともに、一石を投じ続けてきました。カンパニー結成から30年近くを経た今では、当時物議を醸した半裸のシーンも当たり前のようにダンサーたちが取り入れています。先駆者のひとりとして、日本のダンス界は当初の想像通りに進化していると感じますか?

大島>もっと進んでると思っていました。あれをステップにバーッと変わっていくと考えていたけど、想像していたほど変わってないなって感じます。でもお風呂の水がどれくらい溜まってるか気付かなくて、あるときいきなり溢れることってあるじゃないですか。それと同じで、あるときバン! と変わる日が来るんでしょうね。

白河>個人的には、もう踊ってないと思ってました。もう終わってると思ってた。大島さんは最初からカンパニーをやっていくって決めてたけれど、私は公演ごとに“もうこれで辞めよう!”って考えてましたから。

大島>しかもそれを毎日私に言いに来るんです。“こんな大変なこともうできません!”って。

白河>大島さんのエネルギーというのがハンパじゃないので、こちらは本当に大変なんです。

大島>あの頃は確かにすごい元気で、“これしきのことで何を言う!”という感じだったんですよね(笑)。

白河>だけど海外の人たちも含めて、みんなほとんどいなくなってますよね。コンテンポラリーダンスは同じ形でいることは不可能だし、その時々の時代によって変わっていかなければいけないから。自分がまだやってるとは想像していなかったけど、今はコレしかないという感じです。やっぱり楽しいし、自分は大島さんの作品を踊るのが好きなんだなって思う。一番大変な時期を乗り越えたから、そう言えるのかもしれないけれど。

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

休養期間を経て、H・アール・カオスとしては6年ぶりの新作上演を迎えます。

白河>ケガというか、身体の悪い部分が積み重なって出てきてしまって、しばらくお休みしてました。ひどいときは日常生活もままならないくらいでしたが、奇跡的に回復したんだなって思います。キツかったけど、人って不思議なもので、そうなると余計踊りたいなと思ってしまう。やっぱり大島さんの作品は踊りたかった。だから、休んでいる間もトレーニングと治療は欠かさないようにしてました。

最後の方はずっと身体が大変なまま踊っていて、テーピングでぐるぐる巻きにしてなんとか舞台を踏んでるような状態でした。それがとにかくイヤだったし、きちんと治るまでは踊らないって決めていました。去年あたりからミュージカルや笠井叡さんの作品に出させてもらい、この作品でまた良くなってきているのを感じています。やっぱり踊ってると治りも加速していきますね。

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

大島>気が通るようになっているというか、踊ることによって治っていく部分があって、見ていても不思議ですね。あとやっぱり表現力を超えた何かが彼女にはあって、無になっていくことで、見ている人が自分を映す、自分自身がそのなかに見えてくるものがある。そういう意味では、取り戻すだけでなくどんどん進化しているというか。取り戻しながらも深まっていく部分があるように思います。

白河>だんだん慣れてきたというのもあるけれど、この作品は最初からあまり息があがっていなかったような気がします。多分身体が気持ち良く動けているんだと思う。踊りながら身体がどんどん強くなってきているので、そこまでのシンドさはないというか。循環しているような感覚があって、だから思ったほどキツくはないですね。きっと大島さんに魔法をかけられているんです。大島マジックです(笑)。

(C) TOKIKO FURUTA

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-コンテンポラリー