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首藤康之×丸山和彰(CAVA)『レニングラード・ホテル』インタビュー!

ダンサーの首藤康之さんとパントマイム集団CAVAの丸山和彰さんのタッグにより、この夏初演を迎える『レニングラード・ホテル』。バレエとマイムという異なる出自を持つおふたりがひとつの舞台に集い、新たな世界を創造します。開幕を前に、リハーサル中の首藤さんと丸山さんのおふたりにインタビュー。舞台の発端とクリエイションの様子、作品への想いをお聞きしました。

おふたりが本格的なタッグを果たす『レニングラード・ホテル』。本作の構想はどこから生まれたのでしょう。

丸山>まず最初に首藤さんから“ホテルというシチュエーションにしてみたらどうだろう?”という提案をいただきました。ただそのときはまだ僕の中ではぼんやりとした状態で、とりあえずホテルというシチュエーションを自分の中に泳がせておきました。だけど会場のスパイラルホールを下見に行ったら、ひと目で“これはホテル感があるぞ!”と閃いて。この空間ならお客様自体があたかもホテルに泊まりに来たような見立てができるだろう、ホテルをシチュエーションにしたらどういう物語ができるだろうか……、と考えたのが出発点になりました。

首藤>僕としては三つ希望があって、まずホテルの話にしたいというのがひとつ、ふたつ目は自分はホテル側の人間を演じたいということ、三つ目は東側のホテルにしたいという話をしました。そこから丸山さんが提案してくれたのがレニングラード・ホテル。丸山さんのことは本当に信頼しているので、絶対に面白いものを構築してくれるだろうなと思っていたし、だからすごくわくわくしました。

丸山>リハーサルに取りかかる前に、台本のようなものを書きました。何か軸とするものがないと作品自体があやふやになってしまうので、できる限り言葉で固定しようと思って。このキャラクターはどういう人で、どういうバックグラウンドがあってーー、というものが言葉になっていれば、淡い印象ではなく何か指針になると思う。それを全て視覚的に還元できるかどうかはさておき、クリエイションを進めていく上でお互いのヒントになるだろうという狙いがありました。もうひとつ首藤さんからの提案で、キャラクター全員に名前を付けました。ポーター役にしてもポーターと呼ぶのではなくてイワノフにしたり、全てロシア人風の名前です。最初は面白半分で付けてたけど、名前を与えると役が生きてくるんですよね。

首藤>実際に舞台上で名前を呼ぶことはなくても、キャラクターのイメージがそこでつきますよね。ジョン・ノイマイヤー振付の『ロミオとジュリエット』は、主役であるロミオ、ジュリエット、ティボルト、マキューシオはもちろん、コール・ド・バレエまで全てのダンサーに名前を付けていたんです。普通はコール・ド・バレエって名前が付いてないじゃないですか。だけどダンサーにひとりずつ名前を与えるとやっぱり生き生きしてくるんです。

立っているだけ、通りすぎるだけの人でも、キャラクターをイメージしやすくなる。ノイマイヤーさんと仕事をしたとき、こういう手法があるんだと驚かされました。立ち役の人にも名前を付けていて、しかもそれが物語の世界観を踏襲してイタリアの名前になっている。この人とこの人は家族で、この仕事とこの仕事をしているんだよ、と全部考えられていて、本当にすごいなと思った覚えがあります。

丸山>ちなみに首藤さんの名前はセルゲイ。僕はウラディミルという名前で、ちょっと悪いヤツなんです(笑)。

首藤>いかにも悪そうですよね(笑)。やはり名前というのはそれぞれの持つイメージがあり、すごく影響があるんだなって思います。

 

『空白に落ちた男』(C)青木司

『空白に落ちた男』(C)青木司

 

首藤さんとCAVAのメンバーに加え、金田一央紀さん、澤村亮さんが出演されます。キャストはどのような基準で決めたのでしょう。

丸山>コミカルな意味でよりユーモラスな場面を増やしたいなという気持ちがあって、そこから単純に直感で決めました。金田一さんは僕の友人ですが、かの有名な金田一京助さんのお孫さんであり、彼自身も戯曲を書いています。イギリスに留学していた経験があって、海外のカンパニー事情もよく知っているので、以前僕たちがイギリスのエディンバラ・フェスティバルに行ったとき情報交換をさせてもらった縁で親しくなりました。

今回の作品はホテル側を主軸に描きたいと考えていて、そうなるとキャストの大部分がホテルスタッフに使われてしまう。ただお客側の人間も欲しいと思ったとき、金田一さんに出てもらったら面白いんじゃないかと閃いて、直感に従ってオファーしました。異質な方が入ると混乱もあるかもしれないけれど、一方で自分の固定概念が崩されたりと、発見があるかのではという期待もあります。さらに身体的な部分をフォローする意味でもダンサーがいて欲しいと考えて、澤村さんにお願いしました。澤村さんとは以前僕がゲスト出演したダンスカンパニーで知り合って、彼が加わることで僕らもまた影響を受けられるのではと思っています。

首藤>個性豊かで楽しみですね。期待値がぱんぱんに膨らんでいます。

丸山>最初はみんな首藤さんに緊張していたり、どう接したらいいんだろうというところからはじまって、だんだんチームの中の関係性が出来上がっていく。僕はそれをほくそ笑みながら見ているんですけど(笑)、その中から自然と沸き上がってくる個性があると思うし、やはり得意な部分は違うので、それぞれの魅力を大切にしていって欲しい。一見バラバラの料理でも、ひとつのお皿に乗せればワンプレートディッシュになりますよね。個性はみんな違うけど、見ていてバラバラな印象にはしたくない。向いている先が同じで、そこにみんなの魅力が少しずつ出る、そんなバランスになればと考えています。

 

『ドン・キホーテ』

『ドン・キホーテ』

 

 

 

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