dancedition

バレエ、ダンス、舞踏、ミュージカル……。劇場通いをもっと楽しく。

『ルグリ・ガラ』出演、ワディム・ムンタギロフ インタビュー!

英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのワディム・ムンタギロフが、この夏開催されるマニュエル・ルグリのガラ公演『ルグリ・ガラ』に登場! ルグリの絶大な信頼のもと、ルグリ版『海賊』をはじめ4作品を披露します。開幕に先駆け、来日中のムンタギロフにインタビュー! 舞台への意気込みをお聞きしました。

ルグリが芸術監督を務めるウィーン国立バレエ団にゲストダンサーとして招聘されるなど、ルグリから厚い信頼を寄せられていますね。ゲスト出演のきっかけとは? ルグリとの出会いを教えてください。

ムンタギロフ>2015年に東京で開催された世界バレエフェスティバルがルグリとの最初の出会いでした。僕はルグリが踊る様子をずっと舞台袖で見ていましたが、本当に素晴らしかったですね。僕が踊ったのは『海賊』のパ・ド・ドゥ。出演後にルグリが僕のところへやってきて、“とても素晴らしい踊りだった。もしよければウィーン国立バレエ団で私の『海賊』を踊ってくれないか?”と声をかけてくださって……。うれしくて天にも昇る気持ちで、“もちろんです!”と答えました。

実際にルグリとお会いしたのはそのときが初めてでしたが、彼の踊りはDVDでずっと観ていました。僕がまだイングリッシュ・ナショナル・バレエにいたときに、ヌレエフ版『ロミオとジュリエット』のDVDでルグリを観たのが初めてだったと思います。あのヴァージョンはとても難しいけれど、ルグリはとても美しく踊りこなしていて本当に圧倒させられました。ルグリのDVDを参考に、ロミオの勉強をしたのを覚えています。『ロミオとジュリエット』をはじめ、『眠れる森の美女』や『ドン・キホーテ』など、彼の出ているDVDはほとんど観ていると思います。

 

(c)Daria Klimentova

(c)Daria Klimentova

ルグリとのリハーサルはいかがでしたか?

ムンタギロフ>ルグリとの仕事は全てが印象的であり、全てが重要な出来事でした。リハーサルはまず振りうつしからはじまりました。ルグリとのマンツーマンです。普通リハーサルは技術面の指導がメインになり、表現の部分まで到達しないことが多いけど、ルグリは演技面も含めた全てを僕に教えてくれました。振りやステップにとどまらず感情面も丁寧に指導してくれたので、実際に舞台に立ったときとても演じやすかったですね。

ルグリの時代のダンサーは、技術面はもちろん情熱や魂を感じられる踊りを目指していたように思います。最近のダンサーはどうしても技術的な部分にばかり意識がいってしまいがちだけど、彼らの世代が大切にしていた情熱の部分は、今僕たちの世代が引き継いでいくべきだと思っていて……。ルグリのような伝説的な方と一緒に仕事をするチャンスはまずないし、彼の言うことを一生懸命吸収しようと必死でした。ルグリに言われたことはどれも僕にとって役立つものばかりで、ハーサルを重ねるごとに自分自身成長しているのを日々実感していましたね。

ウィーン国立バレエ団の方たちはみなさんすごく練習熱心で、とてもいいカンパニーだなという印象があります。またウィーンは建造物がどれも見事で、街全体が美しい。ウィーン国立歌劇場はたぶん僕がこれまで世界中で見てきた中で最も美しい劇場のひとつだと思います。忙しくてあちこち見る時間はなかったけれど、ホテルから劇場へ行く道すがら“何てすてきな街なんだろう!”と思いながら歩いていました。

 

マニュエル・ルグリ

マニュエル・ルグリ

ウィーンではルグリ版の『海賊』を踊られています。他の版とはどのような点が違うのでしょう。

ムンタギロフ>『海賊』は以前アンナ=マリー・ホームズ版を踊ったことがありますが、こちらはABTのヴァージョンとして知られているプロダクションで、僕はコンラッド役で出演しました。ルグリの『海賊』もコンラッド役で出演しましたが、ルグリ版はアリがいないのが最大の特徴で、コンラッドがパ・ド・ドゥもソロも全て踊らなければなりません。とても挑戦的で意欲的な作品であり、コンラッドを踊るダンサーにとっては非常に難しいヴァージョンになっています。大変ではありましたけど、お陰ですごく力が付きました。

パートナーはウィーン国立バレエ団のリュドミラ・コノヴァロワで、ウィーン公演の初日とマドリッド公演の初日を踊りました。初日はいつも苦労しますが、この作品は特に難しいので、ウィーンの初日はやはりプレッシャーがありましたね。でもとても上手くいったと思います。

 

(c)L.Liotardos

(c)L.Liotardos

ルグリも大絶賛されていました。

ムンタギロフ>彼のような伝説の人に褒められると、かえってプレッシャーを感じます。今は次回の『海賊』に向け、もっともっと上手くならなければという気持ちでいます。

 

 

-バレエ