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久保綋一『海賊』インタビュー!

久保綋一芸術監督率いるNBAバレエ団が、この春新制作『海賊』を発表! 音楽に作曲家の新垣隆氏を迎え、シナリオも新たにかつてない『海賊』をお披露目します。開幕に先駆け、久保さんにインタビュー。創作の経緯と作品への想いをお聞きしました。

久保綋一版『海賊』がこの春世界初演を迎えます。『海賊』の新制作に取り組もうと考えたのは何故でしょう。

久保>NBAバレエ団の特色といえば、ガンガン動ける男性がそろっていること。20代〜30代前半が中心と、みんな若くてイキがいい。彼らを生かせる作品で、なおかつお客さんが観てワクワクするプログラムは何だろうと考えたとき、行き着いたのが『海賊』でした。

『海賊』を全幕で上演するなら、既存の版ではなく、思い切ってシナリオを新しくつくってしまおうと考えました。1960年代にジョージ・ゴードン・バイロンが書いた詩をもとに、従来の『海賊』とは全く違った物語を書き上げています。

 

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かつて世界を旅していたバイロンが、オスマン帝国でパシャという高級軍人に接待され、その経験をもとに書いたのが『海賊』だった。ただそのままだとバレエ化には向いていないので、バイロンが書いた詩のエッセンスを取り入れつつ独自の物語に仕上げました。愛憎の部分を深く掘り下げて、よりシリアスな人間ドラマにしています。

正直なところ、当初はもっと込み入った話にしようと考えていたんです。メドーラをパシャのスパイにしてコンラッドに近づけ、でもそこで恋に落ちてしまったりーーといろいろ考えてはみたけれど、バレエではきっと伝わらない。お客さんが“何だかよくわからなかったね、何だったんだろうね”という気持ちで帰るのはよくないと思い、あえてざっくり単純化しました。もともとバレエって単純な話が多いけど、やっぱり伝えきれないんですよね。セリフを喋って説明できればいいけれど、映画やミュージカルと違ってそこがバレエの難しいところです。

 

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新しい要素のひとつとして、オスマン軍と海賊が剣で闘うシーンを取り入れました。従来の『海賊』には剣のシーンはなかったけれど、海賊なのに闘わないのはおかしいだろうと思い、劇団四季や宝塚などで教えている剣術指導の先生をお招きして、かなり本格的なシーンをつくっています。『ロミオとジュリエット』(マーティン・フリードマン振付で2017年に日本初演)のときも剣のシーンがたくさん出てきましたが、剣の種類が違うとまたテクニックも違ってくる。ウチの男性は作品ごとにいろいろな闘い方を学んでいるので、剣使いが日に日に上達しつつあります(笑)。イキのいい戦闘シーンもそうだし、よりシリアスな人間ドラマもそうだし、今までにない『海賊』になっていると思います。

一番苦心したのはラストシーンで、ここはすごく悩んだところです。当初はAパターンでいこうと思っていたけど、最終的にBパターンに決めました。本当はもっとドラマティックかつどんでん返しがあるエンディングにしたかったけど、終わったときにお客さんにどういう気持ちを持ち帰ってもらいたいかと考えたとき、やっぱりこのラストは違うのではないかと考えなおして。だけどいまだにAパターンの方がよかったのではないかとも思うし、映画だったらディレクターズカットにしていたかもしれない。ネタバレになるので詳細は伏せますが、もし再演があるとしたらAパターンのラストにするかもしれません(笑)。

 

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