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大貫勇輔『メリー・ポピンズ』インタビュー!

この春日本上陸を迎える大型ミュージカル『メリー・ポピンズ』に、メインキャストのひとり・バート役で出演する大貫勇輔さん。開幕に先駆け、大貫さんにインタビュー。長期に渡ったオーディションと、リハーサルの様子、作品への意気込みをお聞きしました。

稽古の手応えはいかがですか?

大貫>年明けから稽古が始まり、一日8時間みっちり稽古をしています。全部で2か月半くらい稽古期間があるので、最初は余裕があるかなと気楽に考えていたんです。でも実際に稽古が始まってみたら、全然そんなことはなくて……。

稽古初日は本読みをして、次の日からいきなり立ち稽古でどんどん芝居をつけていきました。一週間で一幕の芝居がついて、二週間で全部の芝居がついてしまった。きっと全体を把握させるために先にざっと芝居をつけたんだと思うけど、最初はやっぱり戸惑いましたね。とにかくスピードが速すぎてついていけないんです。芝居が全部ついた段階で改めておさらいしたら、“これ何だったっけ?”という部分がたくさん出てきて。最初は“こんなスピードで進めていたらものすごく早く終わってしまうのでは?”と思っていたけど、やればやるほど“時間が全然足りないよ!”という心境になってきた。

歌稽古と踊りの稽古は芝居の合間に進めていきました。身体に動きが入らないと楽しめないけど、身体に入れるまでにすべきことがいっぱいありすぎる。最初の2週間はすごく苦しかったけど、セリフや動きが身体に入ってきたころから少しずつ楽しめるようになってきた気がします。

 

大貫勇輔

 

バート役は劇団四季出身のミュージカルスター・柿澤勇人さんとダブルキャストで演じます。

大貫>相手が柿澤さんということで、最初はすごくプレッシャーを感じてました。だけど制作発表記者会見のときに、彼と僕とではタイプが全然違うんだということを改めて感じて、それからプレッシャーを感じていてもしょうがないなと気持ちを切り替えるようになりました。

制作発表のときは本当に緊張しましたね。二日前から緊張していて、全く寝付けなかったんです。でもそれが良かったのか、前日はくたくたになってぐっすり眠れて、当日の朝はもうふっ切れてた。“どうせ始まるんだから緊張してもしょうがない、楽しもう!”と考えられるようになっていました。

実際に制作発表の会場に立ったときは楽しむことができて、そこでちょっと自信が付きました。柿澤さんとは“お互いの良い部分を伝え合いながら、支え合っていこう”という話をしていて、それもあってプレッシャーを感じなくなりました。

 

大貫勇輔

製作発表

柿澤さんの魅力をどんなところに感じますか?

大貫>まず歌の中での自由度が素晴らしい。同じ歌でもリズムを変えて歌ったり、セリフのように歌うのがものすごく上手いんです。歌っていても常に自然体に見えるし、伸ばす声もすごくきれい。一緒に稽古をしながら、“僕もああいう風に歌えるようになりたいな”といつも思ってしまいます。

ダンスでダブルキャストというのは経験あるけど、芝居やミュージカルでは初めて。なので、客観的に役を見ることができるのはすごくありがたいですね。柿澤さんのバートを見て“そういう風にするんだな”とか、“こういう風に見えるんだな”とか、稽古をしていても学ぶことがすごく多い。とはいえ僕とは全然タイプも取り組み方も違うから、参考にさせてもらう部分もありつつ、自分ならではのバートをつくり上げていかなければと思っています。

メリー・ポピンズ

(C)Disney/CML

 

今の課題、特に集中して取り組んでいることは?

大貫>やっぱり一番は歌ですね。あと芝居、もちろん踊りもそう。バートとしての存在を自分の中にしっかり入れて、早く自由になりたいと思いながら日々稽古をしています。毎日気づきと発見の連続です。

劇中は10曲以上歌います。ただバートの歌ってどれも短いんですよね。狂言回しではないけれど、ひとつのシーンから次のシーンへとシーンを変えていく役なので、曲自体は短いけれど歌う数は多いんです。またやっかいなことに、曲がどれも似ているんです(笑)。”チム・チム・ニー”の音で歌詞が変わったり、アレンジされたり。リズムとセリフがごちゃ混ぜになってしまって、曲を頭に入れようと思っても上手く入らない。最初はものすごく苦労したけれど、芝居が入って景色を意識し出したらすっと入るようになってきて、それからはだいぶ歌いやすくなりました。

最近は通る声と通らない声の違いというのがだんだんわかるようになってきました。以前“母音の使い方を研究するといいね”と言われたことがあって、当時は意味がわからなかったけど、最近はこういうことかと理解できるようになってきて。音程がはまらないのは母音がおかしくなっていたんだとか、母音のつながりがいいとセリフに聞こえやすいんだ、ということが少しずつわかるようになってきました。あと、自分はテンポ感とセリフ感を合わせるのが苦手なんだな、というのも最近気づいた部分です。稽古をするたびいろいろな気づきがたくさんあります。ダンスもそうですけど、僕はきちんと分析しないとできないタイプみたいです。

毎日ものすごくヘコんでいます。でもそんな中でも楽しみをどう見つけられるかが大事だと思う。一日一日をきちんと積み重ねていかないと幕が開いてしまうぞ、という気持ちが強くあって、とにかく今は稽古でたくさん失敗しようと思っています。落ち込んでいても一日、前を向いていても一日。だったら僕は前を向いて過ごしたい。

もちろん日によっては起き上がれないときもあります。僕のリカバリー法は、まず考え続けて、とにかくやり続ける。それで、光が見えたら大丈夫。やり続けたら絶対にできるんだって信じてやっています。そう思い込んでいるんです。そうしないと続けられない。支えてくれる人が周りにいっぱいいるので、それに応えたいという気持ちもあって、がんばれている気がします。

 

大貫勇輔

製作発表

 

 

 

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