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金井芙三枝『プロメテの火』インタビュー!

1950年に江口隆哉・宮操子振付により初演を迎えた『プロメテの火』。モダンダンス界の歴史に輝く伝説の作が、この春オーケストラ演奏により完全再現を果たします。ここでは、江口門下生であり、作品監修を手がける金井芙三枝先生にインタビュー! 初演時の思い出と、作品への想いをお聞きしました。

日本モダンダンス界で長く創り、踊り、今も指導者として精力的に活躍されています。そのバイタリティの秘訣はどこにあるのでしょう。

金井>やっぱり踊りが好きだから。好きなことは長く続けたいと思っているので、身体訓練は欠かさず行っています。ピラティスも随分長いことやっているし、ヨガはもう30〜40年近く続けています。

自彊術も覚えてやっています。大正時代に流行ったもので、自分で自分の身体を直す術。ラジオ体操ができる前は、自彊術が一般的な体操法でした。今でもカルチャーセンターなどでやっています。いずれにしても基本的な身体の動かし方を大切に、筋肉を衰えさせないようにするというのが私の身体づくりです。

 

金井芙三枝『プロメテの火』

 

長くダンス界に携わってこられて、昔と今で一番変わったなと感じられる部分はどういったところでしょうか。

金井>昔はみんなわりと感情をはっきり出していましたね。『プロメテの火』にしても、喜びの踊りなど昔は思い切り喜んでた。今はああいう踊りはあまりないでしょう。感情を出さずに、どちらかというと無表情。感情を出すのは古いと思っているのかもしれません。物語的なものではなくて、動きだけみせる、抽象的な踊りが多い。今の流行りはそうなんですよね。

ただそればかり観ていると面白くない。人間だから、ちょっとでも感情の入ったものが観たいし、その方が面白い。歌だってそう。譜面に書かれていることを機械的に歌っていては面白くない。何かしら表現をして欲しい。音楽も抽象的なものが流行った時期があったけど、そういう時代はちょっと乗り越えて、また新たに気持ちを出すようになってきているように感じます。絵画の世界もそうだし、芸術ってみんなそうですよね。だから踊りもまた少しずつ変わってくるんじゃないかと思います。

昔のように仰々しく感情を出さなくても、やはり人間らしさが動きの中に出てこないとつまらない。ただ単に手を上げるのではなくて、どんな感じで手を上げるのか、どんな気持ちで手を上げるのか。感情がちょっと入っただけで魅力的になると思うんです。ただ最近の人たちは感情表現に乏しい傾向がありますね。第三景(火の歓喜の群舞)の稽古をしていても、初めのころは笑いなさいといっても誰も笑えなかったし、もちろん声も出せなかった。稽古を重ねるうちに、やっと笑って喜びを表現してくれるようになりました。

技術的には昔より上手くなっていますね。男性も女性と同じように動けるようになってきた。身体付きも違います。昔はみんな胴長短足で顔も大きかったけど、今は西洋人に近くなってきた。手脚が長くて顔が小さくて、踊り向きになってきたと思います。

 

金井芙三枝『プロメテの火』

 

今後のモダンダンス界に期待することをお聞かせください。

金井>大きな作品をつくる人が少なくなってきているのが少し寂しいですね。近頃はわりとつましい作品が多いように感じます。もちろん大きな作品を上演するには予算も必要ですが、できればどんと大きな作品をやって欲しい。

最近はモダンダンスより、日本のスペイン舞踊界に大きな創作作品がみられます。モダンダンスの場合は動きからつくって作品を構成しなければならないけれど、スペイン舞踊の場合は型を使ってできるからわりとつくりやすいのかもしれない。そういう意味では、バレエもパを組み合わせられるから比較的つくりやすい事情はあるかもしれないですね。

先日も創作法を教えてくれといわれて講義をしましたが、もちろん講義を聞いたからといって急に良い作品がつくれるようになる訳ではないでしょう。ただそうやって勉強しようとする意欲ある人たちが出てくるのはうれしいですね。今後どんな作品をつくってくれるのか、若い人たちに期待したいと思います。

 

金井芙三枝『プロメテの火』

 

 

 

-モダンダンス