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中村恩恵×近藤良平×首藤康之『トリプレット イン スパイラル』インタビュー!

中村恩恵、近藤良平、首藤康之という異色の組み合わせで贈る『トリプレット イン スパイラル』。構成・演出を中村さんが、振付を中村さんと近藤さんのふたりが手がけ、ひとつの作品世界を描きます。開幕を前に、近藤さん、中村さん、首藤さんの3者にインタビュー! 作品の構想をお聞きしました。

タイトルのトリプレット=“3”が意味するもの、そこに込めた想いとは?

近藤>最初にこの3人で話したときに、“トリプレット”という言葉を恩恵さんに教えてもらったのがはじまりでした。そこで“3”という数字に秘められたものの豊かさに驚かされて、ほうほう、“3”かと。これは面白いかもしれないぞと、それで“3”でいこうということになってーー。“3人寄れば文殊の知恵”とか、“3度目の正直”とか、“3”にまつわるうんぬんって実はいっぱいあって、調べてみるとすごく面白い。だから僕、今ちょっと“3”に詳しいですよ(笑)。

中村>数学的なもの、図形的なものから人間が受ける感情にずっと興味を持っていて、とりわけ“3”にはとても惹かれる部分がありました。実際『Shakespeare THE SONNETS』にしてもデュエットの形でつくってはいるけれど、実はそのテーマにはトリオが隠れていたりと、作品にもたびたび“3”を潜ませていたんです。

例えば人間も3人になると急に不安定なものが生まれてきたりと、その安定と不安定の境もまた興味深い。 “3”になることによって、それまで線しかなかったものが面になったりもする。数学的なことや図形的なことと、そこから生まれる人間の感情の綾みたいなもの、人間のドラマのようなもの、接点を探したいというのが今回のテーマ。

この3人の出会いがあってますます“3”という数に刺激されたのかもしれないし、もともとそうしたテーマがあったからトリオをつくりたいという気持ちが起こったのかもしれないし、どちらが先かはわからないけれど。

首藤>僕も“3”という数字にはずっと興味を抱いていて。だいたい人間関係でもふたりのときはありきたりなことしか起きないけれど、3人になった途端に感情が一気に複雑になったりする。ひとり加わるだけなんだけど、がらりと様子を変えることがある。いつもは恩恵さんとふたりで作業をしていますが、そこに良平さんが加わることでこの3人がどうなるか。そこにどんな作用が起こるのか、興味しかないですね。

 

首藤康之、中村恩恵

 

この3名と、福田紘也(新国立劇場バレエ団)さん、渡邊拓郎(新国立劇場バレエ団)さん、加藤美羽さんとの関係性は? 

中村>数字の“3”のほかに、3層のメゾネットが入りこんでいる集合住宅のこともトリプレットと呼びますが、同様にひとつの作品ではあるけれど3層に別れているようなイメージが私の中にあって。レイヤーが3つに別れていて、ひとつひとつの層で別々の物語が展開されている。“3”を巡る物語が展開されていくけれど、それが3つの異なるレイヤーで起こっている。舞踊で言う“時間差がある”ということです。

6人がトランジションで交差することはあったとしても、物語はすみ分けになっている。なので私たちのトリオはここでひとつ完結します。もしそこに物語があるとしたら、人間にいろいろなドラマがあるように、抽象的なものになると思います。

近藤>ときにはメゾネットの隣人に何かを借りに行くようなこともあるかもしれないし、ふと交わる瞬間も生まれてくるかもしれない。最初から物語があるタイプの作品だともっとわかりやすくなると思うけど、そうではなくて“何かが生まれるであろう”というものの方が強い気がします。それは脚本がある芝居とは違う、舞踊的な面白さかもしれない。

中村>だいたい作品をつくる前って取りかかりだとか糸口を探している感じだけれど、日を追うごとに着実に何もないところに何かしら生まれてくるのがすごく不思議でもあって。

首藤>時間が経つと何故かできてるんだよね。芝居の場合は最初に台本があるから終わりが見えているじゃないですか。でも舞踊はどういう方向に進むのか全く予想がつかない。わからないところが面白いから、きっと辞められないんでしょうね。

 

首藤康之、中村恩恵

(C)Tadashi Okochi

 

 

-コンテンポラリー