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中村恩恵×近藤良平×首藤康之『トリプレット イン スパイラル』インタビュー!

中村恩恵、近藤良平、首藤康之という異色の組み合わせで贈る『トリプレット イン スパイラル』。構成・演出を中村さんが、振付を中村さんと近藤さんのふたりが手がけ、ひとつの作品世界を描きます。開幕を前に、近藤さん、中村さん、首藤さんの3者にインタビュー! 作品の構想をお聞きしました。

この3名の意外な組み合わせに驚く方も多いのでは?

首藤>良平さんとは『音のいない世界で』と『かがみのかなたはたなかのなかに』でお互いキャストとして共演していますけど、この3人でこういう形でご一緒するのは初めてだしすごく新鮮です。何だかすごく想像もつくし、全く想像ができない部分もある。3人の絵はすんなり自分の中で描けるけれど、そこで何が起きるかは全く未知数な感じがします。名前の並びだけ見ていると不思議だなって思うけど、ただ単純に合うだろうなというのは感じていて。こうしてバレエダンサーの中に良平さんが入っているのも面白いし、その逆もあるし。

近藤>バレエのポーズなんていわれても、僕はよくわからないですからね(笑)。

首藤>『音のいない世界で』と『かがみのかなたはたなかのなかに』はいずれも長塚圭史さんの作品で、『音のいない世界で』はほとんどずっと喋ってました(笑)。『かがみのかなたはたなかのなかに』の方は良平さんとリンクする部分がたくさんあったので、普段以上に練習した記憶があります。良平さんとの共演は単純に楽しいですね。僕から見た良平さんの印象は、言葉にするとヘンだけど、自由ではあるけれどちゃんとしてるというか……。

近藤>僕ってたいてい楽観的に見られるんですよね。自分では普通だと思うんだけど。

首藤>楽観的という言葉をどう取るかだけど、一般に思われている楽観的とはまた違う気がします。

 

コンドルズ

(C)HARU

 

中村>私は良平さんが踊っているのを観客として観させていただいて、“あ、すごく踊り上手なんだな”と思って……。

近藤>楽屋に恩恵さんが来て、いきなり言われたんだよね。

首藤>あれには周りが一瞬にして凍り付きましたよ。“近藤さんに向かって何てこと言うんだ!”と(笑)。

中村>確かにあれは語弊がある言い方だったかもしれません(笑)。ただダンサーってプロになればなるほど自分に合わない靴を履いてムリやり履いて踊らされているような、ちょっと娼婦的になってくる感じがして。踊りは上手なんだけど、その踊りを観て上手だと思えない自分がいるんです。だけど良平さんの踊りを観たとき、“あ、すごく上手なんだ”と純粋に思った。自分自身のことをきちんと把握していらして、自己表現がご本人の中で過不足なく調和している。すっと回ったときのエネルギーの流れだとか、本当に単純なことなんですけど、すごくうつくしいなと思ったんです。

近藤>あ、そういう“上手”だったんですね(笑)。

首藤>それは僕も感じます。良平さんの踊りを観ていると、ムリがないというか、ウソがないなって思うんです。特に僕たちバレエダンサーの場合、たくさん回ったり足を高く上げたりだとか、テクニック重視で型に嵌めがちなところがある。それが何だか苦しそうに見えたり、痛々しく感じてしまうことが多くて。振付家のエゴが前面に出ていたり、でもそれしか生きる道がないからとにかく踊るというような。よく知っているから余計にそう見えてしまうのかもしれないけれど。

中村>踊り終わったらきっと湿布だらけになっているんだろうな、なんて想像しますよね。あとたぶん小さい頃からそういう稽古をしていると、自分の本当の声が見失われてしまうということもあると思います。

首藤>それが普通になるからコワイですよね。

 

首藤康之、中村恩恵

細野晋司

 

中村>でも良平さんの踊る姿を見ていると、踊りって本来こういうものなんだろうなって感じるんです。

首藤>バレエも本当はそうでなければいけないんだろうけど、視覚的なことがどんどん強くなってきてしまいがち。もちろん研ぎ澄ました結果すてきに見える人もいるけれど、苦しいものもたくさん見るので、それって何なんだろうなと思ってしまう。

中村>いち観客として踊っている良平さんという人間そのものにものすごく心が動かされて、良平さんの世界に入ってみたいという気持ちがだんだんと高まっていって。良平さんの世界の中に入らせてもらえる機会があればと、挑戦させていただきたいなとずっと思っていたんです。でもやっぱり良平さんには良平さんの構築された世界があって、いろいろなことを躊躇する自分がいた。それに振付家の方に“出演させてもらいたいから作品をつくっていただけませんか”と言うのはすごく勇気がいることでもあるので、今回こうしてご一緒できてすごくハッピーです。

首藤>僕も良平ワールドに入るのは初めてだし、良平さんの世界に飛び込むのはちょっと不安でもあるけれど、それと同じくらい楽しみです。フリーのダンサーで普段自分たちの作品を踊っていると、どうしても自分たちの方向ばかり見てしまいがち。だからこそこの年齢になって知らない世界に飛び込むというのはやっぱりちょっと勇気のいることなんですよね。ただこうして自分たちのしたいことが日々できているというのは幸せなことだなとつくづく思います。

 

コンドルズ

(C)HARU

 

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