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フィリップ・ドゥクフレ『新作短編集(2017)ーNouvelles Pièces Courtes』インタビュー!

フィリップ・ドゥクフレ率いるカンパニーDCAが、『新作短編集(2017)ーNouvelles Pièces Courtes』を引っさげ来日。昨春フランスで初演を迎え、話題を呼んだ最新作が早くも日本上陸を果たします。公演に先駆け来日中のドゥクフレに、作品についてお聞きしました。

日本初演を迎える最新作『新作短編集(2017)ーNouvelles Pièces Courtes』。まずは各々の作品についてご紹介ください。

ドゥクフレ>今回『新作短編集(2017)』を日本でご紹介することができ、とてもうれしく思っています。この作品は5つ、あるいは数え方により6つの作品で構成されています。

一作目は、音楽とダンスの関係で描く作品です。出演者はふたり。男女のデュオで、彼らはダンサーでありながら、歌も歌い、男性はピアノを、女性はフルートを演奏します。ダンサー自身が演奏をして、同時に踊りやアクロバットといった肉体的なパフォーマンスもするという試みです。この作品の創作にはとても時間がかかりました。

二作目は亡き父からインスピレーションを得た作品です。“穴”をモチーフにしたもので、劇場にも実際に穴をつくって上演します。父は私にとって非常にミステリアスなところがあり、知識人で、まるで穴のように深い知識を持っていた人だったので、こうした作品になりました。両親は5〜6年前に亡くなっていて、今回の短編集にはふたりへのオマージュ作が二作品入っています。とはいえ決してオマージュを前面に出している訳ではありません。彼らへの想いは創作の上で栄養にはなっていますが、おそらく実際の作品を観てもそうは見えないでしょう。

三作目は亡き母へのオマージュ。ヴィヴァルディの曲に合わせた純粋なダンス作品です。私は母が大好きでした。彼女はすごく強くてうつくしい女性であり、ダンスが好きで、自身もダンサーになりたいと願っていた人でした。母への想いが作品に力を与えてくれていると思っています。メインビジュアルにもなっていますが、この作品はアフリカの部族の服装からインスピレーションを得てつくったニットの衣裳をダンサーが着て踊ります。振付はネオクラシックで、音楽もクラシックを使っていますが、衣裳だけがズレている。狂気をそこで表現しています。

 

フィリップ・ドゥクフレ

©Charles Freger

 

四作目は“進化”と呼んでいる作品で、映像テクニックのリサーチがテーマになっています。舞台の前に三台のカメラを設置し、ライブで撮影した映像を投影します。ダンサーは映像で投影された自分のクローンと踊り、そうすることでリアルとリアルでないものが空間の中で混乱を起こすような状況が生まれてきます。こうした手法は音楽の世界では何年も前から採用されていて、例えば舞台上で演奏した楽曲を録音してすぐに再生し、それに合わせてまた演者が演奏するといったことが行われてきました。映像でも同様の演出ができないかと思い、数年前からスタッフに依頼していましたが、技術が進化してようやく実現することができました。とてもフィジカルな作品で、衣裳も身体のラインがよく見えるようなものにしています。この作品は最後に女性が空中を飛ぶパートで終わりますが、これが数えようによっては5作目にあたります。

最後の作品が一番長く、ここでは日本への旅を語っています。正直なところ、この作品を日本のみなさんがどう受け止めるか非常に気になるところです。作品の構想をはじめたのが二年前で、ちょうど『CONTACT-コンタクト』で来日していたときのこと。同行していたダンサーたちに、音や物や言葉など、何かしら日本にまつわる要素を持ち帰って欲しいと伝えていて、それをもとに作品をつくっていきました。私自身が持ち帰ったものはたくさんありすぎて全てリストアップすることは不可能ですが、そのひとつに日本の小さなもの、ミニュチュアへのこだわりが挙げられます。作中は俳句が所々に登場して、それらが映像によって描かれていき、そこに日本から持ち帰った物が登場します。全部お話ししてしまうとネタばれになってしまいますので(笑)、ぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。

 

フィリップ・ドゥクフレ

 

-コンテンポラリー