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さわひらき×島地保武『siltsーシルツー』インタビュー!

映像作家として国際的な注目を集めるさわひらきさんと、ダンサーであり振付家として活躍する島地保武さんが初タッグ。さわさんの映像作品『silts』から想起したイメージをもとに、島地さんがダンス作品を創作するという新たな試みに挑みます。開幕を前に、クリエイション中のおふたりにインタビュー! 作品の構想と創作の様子をお聞きしました。

さわさんの映像作品『silts』をもとに、島地さんが作・演出を手がけるダンス作品『siltsーシルツー』。おふたりはもともとアート/ダンスに興味をお持ちだったのでしょうか。

島地>もともと絵を描くのは好きでした。だからといってものすごくアート好きという訳でもなくて、たまに美術館へ行くくらい。さわさんと一緒に作品をつくると決まった後、昨年11月にワタリウム美術館に展示されたさわさんの作品を観に行きました。展示してあったさわさんのスケッチを見て、“こういう絵も描くんだ!”と驚きました。とても細やかであり、かわいくもあり、それでいてナイーブでもあって……。その帰り道、さわさん本人にばったりお会いしたんですよね。

さわ>そうそう、道ですれ違ったんです。あれは本当に偶然でした(笑)。島地さんとは共通の知り合いをふたりくらい挟むという関係で、島地さんの噂は以前からたびたび耳にしていました。ただ島地さんの舞台を拝見したことはなく、昨年秋にKAAT神奈川芸術劇場で上演された『ありか』を観たのが初めて。島地さんの踊りを見て、“すごいな、プロだな”と圧倒されましたね。終演後に楽屋で初めて島地さんとお会いしました。あのときは島地さんのお客さまがたくさん来ていましたっけ(笑)。

 

さわひらき×島地保武『siltsーシルツー』

 

ものすごく失礼な話だけれど、僕は酒井はなさんのダンスも観たことがなくて。そもそもバレエ自体今まで観たことがなく、この前初めてロンドンで子供と一緒に『白鳥の湖』を観に行きました。5歳以下を対象にした子供向けのバージョンで、身体表現だけでなくストーリーをわかりやすく解説しながら上演するというものです。そこで初めて“『白鳥の湖』とはこういう作品なんだ”と知りました。

そんな状態だったので、この作品をつくるにあたり改めて勉強を兼ねて舞台を観に行きました。ウィリアム・フォーサイスの振付作品とディミトリス・パパイヤオアヌの振付作品で、両方ともロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で観ています。ロンドンの自宅はサドラーズ・ウェルズ劇場の近所なのでよく前を通っていたけれど、実際に劇場に足を運んだのはそれが初めての経験でした。

 

『ありか』(C)羽鳥直志

 

クリエイションはどこから取りかかりましたか?

さわ>まず最初に、今年の5月に能登で3日間の合宿をしました。島地さんとはそれまでも何度か話をしたり、『ありか』も観てはいたけれど、そこで初めてしっかりお手合わせさせてもらった感じです。合宿ではプロジェクターで作品の映像をお見せしたり、島地さんが踊る様子を撮影したり、そこからまたモチーフが生まれたり、いろいろ試行錯誤しながら素材づくりもしています。

島地>インプロと簡単な振りをつくって、僕が実際に踊ったものをさわさんに撮影してもらいました。なるべくシンプルな動きを毎回同じように繰り返してくれ、というのがさわさんから出されたお題。同じ振りを同じように踊っていても、人間だから絶対に毎回同じにはならない。そのズレみたいなものを撮りたいと、それを重ねたときのブレが面白いとさわさんに言われて。5パターンの振りを各々2分×5回繰り返して踊りましたが、かなりきつかったですね(笑)。

さわ>島地さんが踊っている様子をデジタルビデオカメラで撮り、多重録音をして、フレームを少しずつずらすことで同じ動きをブレとして合わせていきました。それは今回のイメージビジュアルにもなっています。

島地>実際に出来上がった作品を見て、“うわ、こうなるんだ!”という驚きがありました。こういう体験は初めてなのですごくうれしいです。

 

さわひらき×島地保武『siltsーシルツー』

 

さわ>合宿で島地さんと撮影をして、素材を撮ったという満足感もありつつ、お互いの人となりを知るにはいい時間でしたよね。

島地>合宿ではたわいもない話もたくさんしました。さわさんは話がすごく面白いんです。印象に残っているのは、石を探しに行った話とか……。

さわ>アート作品をつくる企画があって、モチーフの正珪岩という石を探しに山に登ってきたんです。山頂まで登ったら実際に落ちていて、白く光るそれは素晴らしい石でした。石を見て“本当にあるんだ!”と思って、満足してそのまま帰ってきました。拾いはしなかったけど、やっぱり耳で聞くよりちゃんと目で見なきゃだめじゃないですか。

島地>だいたい石にそこまで着目することもないし、それを探しに行って何をする訳でもないというのが面白い。僕だったらさらっと流すようなことを、さわさんはじっと見てる。自分とは違う視点で見ていたり、何か気になるものがあると穴が空くまで見続けるんですよね。時間の使い方がすごくゆったりしているのかな。

さわ>自分としては確実に急ぎ足のつもりなんですけどね(笑)。

 

 

 

 

-コンテンポラリー