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カラス・アパラタス三周年! 勅使川原三郎インタビュー。

2013年7月、荻窪にオープンしたカラス・アパラタス。勅使川原三郎率いるKARASの拠点であり、館内のホールではダンスシリーズ『アップデイトダンス』の連続公演を行うなど、オープン以来精力的に活動を続けています。この夏迎える三周年記念公演を前に、主宰の勅使川原さんにインタビュー。これまでの三年間と、今後の展望についてお聞きしました。

今年の夏、カラス・アパラタスは三周年を迎えます。この三年間を振り返ってどう感じますか?

勅使川原>この三年間で大きく変わりましたね。まずアパラタスを持とうという決意と準備に半年かかり、オープンしてからはとにかく公演を重ねていきたいという想いで続けてきました。新作をつくってはひとつの作品を8回ずつ上演し、さらに再演を重ねて公演回数を増やす。なるべく活発に公演をしようと考えていましたが、こうして現実となり、継続している。成果はあると感じています。

 

『神経の湖』©KARAS

『神経の湖』©KARAS


カンパニーの拠点であり、稽古場でもあり、ホールでは自主作品の連続公演を行う。これまで日本のダンス界になかったスタイルを定着させた感があります。

勅使川原>アパラタスは24時間365日我々が自由に使える空間であり、一方で劇場として成り立ち表現し続けている。これは非常に重要な活動だと考えています。日本は劇場の数自体はかなり多くあるけれど、制作される公演数はまだ理想的な状態ではないし、ダンスの価値が欧米と比べ社会的に認められていないように感じます。欧米ではアートが生活や人生に必要なものであるという歴史的な背景がありますが、日本ではなかなかそこまで認められていないのが現実です。

もちろん日本にも古典伝統をはじめとしたいろいろな芸術があるけれど、ダンスの地位は欧米と比べるとまだ低い。世の中があまり理解していない部分があるだろうし、携わる側の人間も自分たちがやっていることに対してもっと誇りを持てばいいのにと思うことがよくあります。より高度なものを目指す面白さ、楽しみ、喜びを持って携わっていけばいいのでしょうが、ある種閉鎖的な感覚が未だに日本の劇場には残っている。そういう意味では、アパラタスはありきたりとされていた従来の状況を脱していると言えるでしょう。

 

『モーツァルト』©KARAS

『モーツァルト』©KARAS


アパラタスのB2ホールで上演されるアップデイトダンスシリーズは、再演も含めこの三年間で36作品もの上演を行ってきました。勅使川原さんはおそらく日本で一番多く舞台に立っているダンサーではないでしょうか。

勅使川原>そうかもしれません。2015年はアパラタスだけで13作品・計94回公演を行いました。今年も年明けのアップデイトダンスNo.29『ダンスソナタ 幻想 シューベルト』からNo.36『白痴』までもう60回の上演を行っていますので、去年を上回る勢いですね。もちろんアパラタス以外の活動もきちんと行った上での上演です。海外公演や海外のバレエ団への振付の仕事で数ヶ月間日本を留守にすることもありますが、東京にいるときはできるだけアップデイトダンスを続けたいと思っています。アパラタスと別の劇場での公演、海外の公演と、同時並行で活動していくことに意味があると考えています。

アパラタスの連続公演と並行して、常に他の公演の準備を同時進行で手がけています。アップデイトダンスの本番中に次の作品の構想を練り、準備をする。例えば7月20日からアパラタス三周年記念アップデイトダンスNo.37『夜』公演がスタートしますが、同時に9月に愛知で上演するオペラ『魔笛』の準備を進めていますし、10月には東京芸術劇場で山下洋輔さんとのコラボレーション公演『UP』が控えています。初日に向けて逆算して準備をし、さらにアップデイトダンスは初日が開けてもチェックをして変えていく。時計やパソコンは内蔵されている機器が複雑に絡み合って機能していますが、それと同じでKARASでは複数の活動を同時並行で進めています。

技術面も劇場テクニシャンとのやりとりを同時並行で進める必要がある。佐東利穂子はアップデイトダンスでダンサーとして踊っていますが、同時に海外とのやりとりを行っています。アップデイトダンスの照明オペレーションは全てマニュアルで、それは鰐川枝里が担当しています。舞台に出ていないときはオペレーターとしてダンスに関わっていることになり、いい勉強になっていると思います。

常に時間差をもっていくつかの作品を同時に手がけるという作業をずっと続けています。ですから公演が立て続けにあるように見えても、どれも短期間で仕上げているわけではなくて、数ヶ月、半年、長いときは一年と、ひとつひとつ準備にきちんと時間をかけているんです。

 

『静か』©KARAS

『静か』©KARAS


作品の発想となるものとは? 

勅使川原>音楽はそのひとつです。ジャンルはさまざまで、クラシック、ポップ、ロック、音、ノイズも含めて自分にとっては全ての音楽が同一線上にあり、それらを俯瞰して聴くような感覚で取り組んでいます。あと大事なのは、どう身体を用いるかということ。踊りとはどういうことなのか、ひとつひとつの作品がそれぞれ何を目指しているのかというのは深く考えないといけない部分です。例えば『春と修羅』、『トリスタンとイゾルデ』、『白痴』にしても、全く別なようでいて何かしら共通するテーマがある。ある種の葛藤と闘いがあり、人間の苦悩がある。それが全体の創作エネルギーになっています。

 

『春と修羅』©KARAS

『春と修羅』©KARAS

 

-コンテンポラリー