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堀内元『Ballet for the Future 2016』インタビュー!

セントルイス・バレエ芸術監督の堀内元を中心に、昨夏第一回公演を開催し大好評を博した『Ballet for the Future』。プログラムやキャストもパワーアップし、この夏待望の第二回公演を迎えます。開幕に先駆け、公演の芸術監督を務める堀内元さんにインタビュー! 舞台への想いをお聞きしました。

セントルイス・バレエには現在何名のダンサーが所属していますか?

堀内>年間通して雇っているのは24名です。そのほかに高校の高学年、大学生のメンバーが10名くらいいて、彼らが脇を固めてくれています。スクール生は小さい子たちも含めてだいたい350人。基盤をしっかり持っているという意味では自信があるし、これからどんどん大きくしたいと考えています。

オーディションは欠員があるとき開催するので、特に決まったタイミングというのはありません。サンフランシスコ・バレエとかボストン・バレエ、スクール・オブ・アメリカン・バレエの子たちなど、いつも全国から100名くらいオーディションにやってきますが、採用するのは本当に少人数です。というのも、なかなかみんな辞めないからなんですよね(笑)。

ニューヨーク・シティ・バレエも今は一年契約だけど、僕が入った当時は終身雇用でした。男性が40代前半、女性が30代後半という定年はありましたが、それまではずっと在籍できるシステムだったんです。だから長期的に自分のことを見ることができたし、セントルイス・バレエもなるべくそうしようと考えています。“来年も契約はあるのかな?”という状態だと、みんなビクビクしてのびのび踊らない。なので僕は雇うとなったら最低5年は保証します。それがダンサーにとってはいいみたいで、みんな長くいますね。もちろんなかには結婚して辞める子もいるし、一年にふたりくらい交代しています。

 

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

 

堀内さんが採用したいと思うダンサーとは?

堀内>チームワークを大切にするというか、組織のなかにすっと入れる人がいいですね。私はここには合わないからと考えている人はだいたい最初からわかる。ただそれはその人が合わせようとしてないだけ。僕だってニューヨーク・シティ・バレエに入ったときは全然違うタイプでしたから。自分がここに入りたいと思うからこそ変わっていけるわけであり、そういう姿勢ってオーディションでも見えてしまうんです。一生懸命先生の言うことを聞いて、まわりのことを見ながらやっている人は入っても対応できるだろうなと思うし、僕はそういう人を望みます。

 

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

 

日本人がトップとしてアメリカのカンパニーを率いていく。そこには大変な苦労があるのではないでしょうか。

堀内>そうですね。僕は完璧にトップダウンです。話し合う機会を与えたら、もう収集がつかなくなりますから。トップがこうだと決める。My way or highway。僕のスタイルに従うか、高速に乗ってどこかに行きなさいという感じ(笑)。“言いたいことがあるなら言いなさい、ここに居たくないならどうぞ”という姿勢です。もちろん反発を受けることもあります。だけどもう15年もこの仕事をやっているので、自然と対応できるようになりましたね。アメリカの高校も卒業しているし、アメリカに来て36年が経つので、日本で暮らしていた時間より全然長い。僕自身アメリカの感覚に慣れているのかもしれません。

日本に来るとすごいなと感じます。僕がやりたいことを察してこちらが言う前からさっとやってくれる。リハーサルの準備などもそう。阿吽の呼吸という感覚はアメリカには一切ない。そういう意味では日本人は素晴らしいと思いますよ。ただアメリカ人にも忠誠心というのはあるし、チームワークの気持ちみたいなものはある。だけどそれはリーダー次第。リーダーが“みんな好きなことをやっていいよ”と言うとどこまでも自由になってしまうけど、しっかりしたリーダーがいればみんな付いてきます。

 

2015年公演より『VAttitude』©瀬戸秀美

2015年公演より『Attitude』©瀬戸秀美

 

バレエ団の芸術監督にバレエ学校の校長、振付家と多彩な顔を持つ堀内さん。お休みは取れていますか?

堀内>ダンサーではないので年がら年中仕事はあって、お休みというのは本当にないですね。心の支えはやはり家族であり、安らぎの一瞬でもあります。今二歳の娘がいます。毎日忙しくはあるけれど、家族との時間もちゃんとつくるようにはしています。そういう部分がないとやはり作品にも出てきてしまうんですよね。ひとりでキリキリしていると、そういう作品しかできなくなってしまう。自分がゆったりしてないと、やはりゆったりした作品や舞台はつくれないように思います。

 

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

 

 

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