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伊藤キム『家族という名のゲーム』インタビュー!

昨年フィジカルシアターカンパニーGEROを立ち上げ、10年ぶりに創作活動を再開した伊藤キムさん。今年1月の旗揚げ公演に続き、この秋ダンスの祭典Dance New Air 2016で新作『家族という名のゲーム』を発表します。創作にあたる伊藤キムさんに、新作に込めた想いと、カンパニー立ち上げの経緯をお聞きしました。

GEROのメンバーは、ダンサーのほか、俳優や音楽家とさまざまな出自の方々で構成されています。彼らを選んだ基準、魅力を感じた部分とは?

伊藤>一昨年オーディションワークショップを5〜6回開催して、そのなかから選びました。オーディションワークショップの案内文に、俳優・ダンサー・歌手といったジャンル、年齢も問わず、主婦もOKですと書いたところ、かなりたくさんの人が参加してくれました。今回の作品に出るメンバーはわりと似通った年齢になっていますけど、旗揚げ公演のときは50過ぎのおじさんがいたりと、いわゆるととのった感じのメンバーではないですね。

選んだ基準としては、曖昧な言い方しかできませんが、ふっと見えてくるというか、放っておいても光る人がいる。でも今回に限らないことだけど、オーディションって難しいなっていつも思います。一日だけ、数時間だけで人を見るのはなかなか大変です。

オーディションワークショップでは動きのほかに、そのとき目に入るものを言葉にしてみるという作業を課題にしました。テーブル、椅子、ソファ、茶色、黒、壁、天井……といった感じです。ただ単に言葉にするだけではつまらないので、それをどう切り取ってどう発展させていくかということを試して、そこで面白い切り取り方をしていたり、それを発展させていたり、それが身体に反映されていたり、されていなかったりする、そういうところを見ていきました。それは今回の作品のクリエイションでも行っている方法ではあります。

 

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クリエイションではキャストにある程度委ねる部分があり、そこから発展させていく形でしょうか?

伊藤>わりとそういう感じです。最初の段階では視界に入るものを言葉にするという作業を試してみて、そこから今度は色限定でやってみてとか、形限定でやってみましょうとか、いくつかの物事にフォーカスをあてる形で発展させていき、それを絞り込んでいった上で、最終的にじゃあこれとこれでと決めていきます。なので最初は本当にざっくりとした大きなものを提示する感じです。もちろん即興的な部分はゼロではないですけど、最終的にはなるべく決め込んでいきたいと思っています。

 

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GEROとしては本作が二作目となります。クリエイションはいつからスタートしましたか。

伊藤>GEROの旗揚げ公演を今年の1月に行い、そのあとすぐ1月末に高知で公演を開催しました。こちらは今回の作品のための試演会的な位置付けです。続いて5月には北九州で、6月には神戸でと、各地方をまわってカンパニーメンバーがその地方の人たちと一緒にワークショップをしながら一週間弱で作品をつくる、GERO活動という試演会的なことを重ねてきました。だから実際のところ、1月の旗揚げ公演以降はずっとリハーサルを続けてきたような状態です。

 

GERO 旗揚げ公演『くちからでる』photo/bozzo

GERO 旗揚げ公演『くちからでる』photo/bozzo

GEROでは舞台以外のトレーニングは何かされていますか?

伊藤>作品づくり以外の時間も集まっていて、去年の4月から週二回カンパニーで稽古を始めています。基礎的な身体トレーニングや発声練習的なことだったり、あとはいろいろな実験ですね。身体もそうですし、声もそう。どうしたら声と身体が結びつくのか、といったことを探っています。

 

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クリエイションを行っていて、ここで完成だと区切りがつく、手応えを感じる瞬間とは?

伊藤>区切りがつくというか、一応本番までにつけなければいけないですね。ただ正直なところ、稽古がはじまったときからだんだん完成に近づいていく気はしても、絶対に完成のラインには到達しないんです。でも限りなく近づいてはいく。稽古場に入って何ヶ月かリハーサルをして、公演をして、お客さんに観せて、公演をして、再演をして、また再演して……とやっているうちにだんだん完成に近づいていくのかもしれない。だからなるべく再演しないとダメだなとはいつも考えています。完成というのはないのかな、というのは昔から思うところです。

 

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幼少時のキムさんを収めた作品のイメージビジュアルにも注目です。

伊藤>父に抱かれているのが僕です。2〜3歳のころでしょうか。妹はふたつ違いなので、まだ生まれて一年経っていないくらいだと思います。今回のビジュアルを何にするか考えていたとき、ちょうど結婚パーティー用に昔の写真をひっぱり出してああだこうだと選んでいたタイミングと重なって。作品のテーマが家族ということもあり、ではコレを使おうということで選びました。とはいえ僕自身の家族に対する想いが作品に反映されることはないと思います。無意識ではあるかもしれないけれど、僕としては自分の何かを盛り込むということは考えてないですね。

 

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-コンテンポラリー