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KENTARO!! 『前と後ろと誰かとえん』インタビュー!

東京ELECTROCK STAIRS率いるKENTARO!!さんが、ダンスの祭典Dance New Air 2016に登場。KENTARO!!さん振付による世界初演作『前と後ろと誰かとえん』を発表します。10月の開幕を前に、創作にあたるKENTARO!!さんに作品についての想いをお聞きしました。

この秋はじまるDance New Air 2016で、新作『前と後ろと誰かとえん』を上演します。本作で挑戦したいこと、テーマをお聞かせください。

KENTARO!!>これまでずっとテクニックをメインに作品をつくってきましたが、今回はその集大成的なものとして新たなレベルの振付に挑戦したいと思っています。誰でもできるような部分よりも、難易度の高い振付を見せたい。僕らのようにストリートのテクニックを独自の解釈で舞台に乗せながら、抽象度をここまで増しているグループは世界的に見ても他にはいない気がする。でもそれがほとんど理解されてないのは何故かというと、レベルがまだそこまで到達してないからだと思う。

プロのストリートダンサーでもできないレベルのものを提示すればもっと伝わるのでは、という想いが最近の目標としてあって。だからこそ妥協はしたくない。でもたいてい妥協しちゃうんです。僕はできても他のメンバーができていないという場合がよくあって、みんなに落とし込んでいくのに時間がすごくかかるから。今回は、メンバー全員ができているレベルまでスキルを引き上げるのがまず第一。妥協さえしなければ、絶対にできる気がするんですよね。

 

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東京ELECTROCK STAIRSを結成して8年が経ちます。そこで積み重ねてきたスキルがあっての集大成ということでしょうか。

KENTARO!!>ダンサーのレベルはまだまだいけると思っています。これは自分がいけないんですけど、昔僕が想像していた立ち位置とは全然違って、8年経ってこれか、というのが正直なところ。例えば、30歳を過ぎたら固定の劇場で作品をつくったり、もっとキュレーションをしたいとか、いろいろ想像していたんです。だけど実際そういうことはあまり起こらなそうだということに気付いて、ちょっと停滞してしまって。とはいえグループのレベルは上がってると思います。今いるダンサーの方が初期のメンバーより上手くなってる。メンバーはみんなカンパニーに入ってからストリートダンスのテクニックを学んだ人たちばかりです。メソッドみたいなものが自分のなかにあって、カンパニーではそれを教えています。僕が若いころに見てきた動きを咀嚼して、それをブラッシュアップしていく作業です。

メンバーのなかには作家として活動してる人もいて、ひとりはランコントル・コレグラフィック・アンテルナショナルに出ているし、ひとりはトヨタコレオグラフィーアワード2016の最終審査まで残って、昔いたメンバーのなかには横浜ダンスコレクションで賞をとった人もいます。若い子たちが受け継いでくれたことで、ようやく僕が言ってきたことは間違ってなかったんだと思えるようになった。またそこで僕自身もみんなにできないようなもの、さらに上のものをつくろうというモチベーションにもなっています。

 

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キャストには青年団の役者も加わっています。難度の高いダンスを目指そうとする本作に彼を起用した理由とは? KENTARO!!さんにとって、作品に起用したいと思う基準とは何でしょう?

KENTARO!!>やっぱり自分のことを好きな人、僕の作品を好きでいてくれる人がいいですね。海津くんは青年団で役者として活動していますが、もともと東京ELECTROCK STAIRSの舞台を観ていたらしく、それで僕の芝居のオーディションを受けに来てくれたんです。女の子三人は日本女子体育大学舞踊学部の出身者で、オーディションで見込みがあるなと思って採用しました。チェックするポイントは、技術的にすごく上手くなりそうかということと、根性があるかどうか。華があるかも重要です。

微妙に踊れる男性はいても、一緒にやりたい人って今のダンス界にはあまりいないというのが正直なところ。最近だと小尻健太くんくらいでしょうか。ちょっと踊れる程度のダンサーだと、ハッとキメたときにイヤミに感じることがあるじゃないですか。でも本当に上手い人はそれを当たり前にやってみせる。若い子のなかにはそこそこのレベルはいても、そこそこだったら踊れなくても喋れる方がいい。男性だったら僕が踊る部分を引き受けるので、そうではない部分を託せる人。全然踊れなくても、踊るときの顔がウソくさくない人の方が僕らには馴染むような気がしています。海津くんのことは育てていきたいと思っていて、今回彼の踊る比重は少ないけれど、やる気があれば徐々に増やしていくつもり。そうしたら、二年後くらいにはカンパニーメンバーのようになってくれるかもしれない。

ジャンルの境目をなくしたいという気持ちがあって、そういう意味ではダンサーも芝居ができた方がいい。それも拙いというレベルではなく、きちんと上手い芝居です。喋ることができて、それでいてすごく踊れて、というレベルをいつかはエンタメでなく目指してみたい。今は全ての底上げをしている最中。踊れなくても他にスキルがある人も育てていきたいと思っています。そうでなければ、とにかく踊れるダンサーがいてくれたらいいですね。

 

    東京ELECTROC-STAIRS_2013年「東京るるる」photo:大洞博靖

東京ELECTROC-STAIRS_2013年「東京るるる」photo:大洞博靖

 

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