『Clementia』川崎悦子×大貫勇輔インタビュー！

川崎さんは昨年の第2回公演時から『クレメンティア』に参加されています。前回の手応えはいかがでしたか。

川崎＞前回は本当に闇の中でのスタートでした。このメンバーを集めて私に何をさせたいんだろう、私に何を求めているんだろうと（笑）。3人のダンサー（大貫勇輔、宮尾俊太郎、尾上菊之丞）、そしてミュージシャンをどう互いに受け入れさせ、融合させられるかというのがまずテーマとしてあって。3人のダンサーたちにしても、ジャンルがそれぞれ違うので大変でしたね。バレエの世界でずっと生きてきた方と、エンターテインメント性の強いコンテンポラリーダンス、そして和物というのは融合させる上で非常に難しかった部分です。やはりみんながどこかである程度譲り合わないと成立しないじゃないですか。そこを見つけるのが大きな課題でした。それぞれ得意なものを踊ってみせて終りというのなら良かったんでしょうけど、そうではないものを求められていたので……。

大貫＞こういう公演ってなかなかないじゃないですか。ここまでバラバラなジャンルの人間が集まって、本当にどうなるんだろうという闇の中からのスタートだったので、僕たちキャストもやはり不安は大きかったですね。

川崎＞勇輔くんを車で送っていくたびに、“不安だ、不安だ”と言われてました。そのままそっくりお返しします、というのが私の心境（笑）。勇輔くんはこの企画を立ち上げて第一弾を成功させた方であり、何かしら助けてくださると思っていたら、毎回“不安ですね……”と捨て台詞を吐いて帰るという（笑）。

大貫＞どうかすると悦子先生には友達のような感覚で話をしてしまうんです。車の中でも演出家だということを忘れて、“あそこのあれ、ああなんですよね”“なんか違うんですよね”なんて友達に言うような調子で喋って、ずいぶん後になってから“あのときあなたものすごいこと言ってたからね！”って言われたり（笑）。

（Ｃ）ホリプロ、撮影：渡部孝弘

川崎＞私はもともと勇輔くんたちが立ち上げた企画に参加させてもらった形でしたけど、自分の中ではこれが大貫勇輔というダンサーとがっつり組める初めての企画という意識でいたので、私は私で頑張らなければという気持ちがあって、そこでお互いぶつかる感じはありましたね。

大貫＞『クレメンティア』は僕と当時のマネージャーの二人で“こういう舞台をやりたいね”ということで始まった企画ということもあり、自分の作品だという想いが強すぎて。前回は悦子先生にお願いしておきながら、自分でどうにかしようというエネルギーが前面に出てまった部分がありました。それにもともと僕自身あまり人の言うことを聞くのが好きではなくて、自分の思う通りにやりたいタイプ。だから演出を常に疑うんです。自分でやってみて初めて“あぁ、そうだな”と納得するというか。ただ最近になって意識も少し変わってきていて、今回は悦子先生をしっかりと信じて、それにプラスする形で自分には何ができるのかというスタンスでやっていこうと思っています。だからあまり自分の中で事前に膨らませ過ぎないようにするつもり。まずは台本をきちんと覚えて、稽古場で話をしながら、悦子先生の求めているものになるべく即していこうと考えています。

（Ｃ）ホリプロ、撮影：渡部孝弘