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Kバレエカンパニー矢内千夏インタビュー!

Kバレエカンパニーの11月公演『ラ・バヤデール』で、主役のニキヤを踊る矢内千夏さん。今年5月にはアーティストでありながら『白鳥の湖』の主役に大抜擢。見事に大役を務め上げ、公演後に同団史上最年少の19歳でソリストに指名された期待の星です。『ラ・バヤデール』はソリスト昇格後初の主演作品となり、さらなる注目が集まるところ。開幕を控えた矢内さんに、作品への意気込みをお聞きしました。

5歳から地元・群馬のバレエ教室で稽古を重ね、数々のコンクールで優秀な成績を収めてきました。プロになろうと思ったのはいつ頃ですか?

矢内>昔からプロになろうという気持ちはなくて、コンクールも先生が薦めてくれないと出ないような生徒でした。小さい頃はみんな“将来バレリーナになる”と言ったりするけど、私自身はプロになるのはかなり早い内から諦めていて、“プロにはなれないだろうな、いつか辞めるんだろうな”とどこかで思っていたんです。バレエは私の中では純粋に習い事という感覚で、でも一方ですごく上手くなりたいという気持ちがあって、発表会やコンクールに向けて一生懸命レッスンしてました。今思うと自分でもちょっと謎ですね(笑)。先生にも、不思議な子だなと思われていたみたいです。当時は週に6日、学校から帰ったら稽古場へ行き、18時半から22時半くらいまで毎日4時間くらいレッスンをしていました。

 

2014年9月からKバレエスクールに通っています。きっかけは何だったのでしょう。

矢内>先生に勧められたのがきっかけです。高校三年生で進路を決める時期になり、大学に行きたいという気持ちもないし、さあどうしようと考えていたとき、“こんなに頑張ってバレエをやってるのにプロになる気はないの?”と先生に言われ、“あぁ、そうか”と思って……。荒井さんのファンだったということもあり、Kバレエカンパニーの舞台をよく観ていたので、“プロになるならKバレエカンパニーがいい”と思いオーディションを受けました。ただそのときはまずスクールで学びなさいということで、Kバレエスクールに入学することになりました。当時18才の高校三年生で、群馬から通ってました。

Kバレエスクールに入ってからは意識も変わりましたね。先生も実際に現役のダンサーとして活躍している方々だったので、“ああなりたい、こうなりたい”という感じでどんどんプロへの意欲が高まっていきました。プロのダンサーを間近で目にすることが多くなったのと、スクール生としてカンパニーの公演を観に行く機会が増えたのも大きかったです。レッスンの内容もそれまでとは全然違いました。もともと通っていた地元の稽古場では小さい子たちと一緒にレッスンをしているような感じでしたけど、Kバレエスクールに入ったら周りはプロを目指す同年代の子たちばかりで、雰囲気がまず違う。それから年に二回アセスメントという進級テストがあって、成績表がひとりひとりに配られるので、そこで自分の実力がはっきりわかってしまう。だからみんな仲良くはしてるけど、どこかぴりぴりした空気もあって、それでより真剣になったところがありました。

 

2015年夏に開催されたKバレエスクールのパフォーマンスでは、『パキータ』のエトワール役に選ばれています。スクール時代から期待の星だったようですね。

矢内>『パキータ』はコンクールで踊ったことはありましたけど、公演とは違うヴァリエーションだったので振付からのスタートでした。あのときは本当に大変でしたね。本番の3日前に急に39℃の高熱が出て、全然動けなくなってしまったんです。どうしようと思ったけれど、結局本番も熱が下がり切らないまま踊りました。熱のせいか、目が回ってましたけど(笑)。ただいつも本番前はすごく緊張してしまうのですが、あのときは気分が悪すぎて緊張もしませんでした。そこはちょっと助けられたかもしれません。

公演後、緞帳が下りた舞台上で小林由明先生からカンパニーへの入団が決まったメンバーの名前が発表されました。これは毎年恒例で、Kバレエスクールにずっと在籍していれば“どの程度踊れたらカンパニーに入れる”という前例を知っていたと思うけど、私は初めてでそれすらわかっていなかったので、“入れなかったらどうしよう”というプレッシャーもなかったですね。それよりもパフォーマンスが上手くいくよう必死で、余計なことを考えてる余裕はなかった気がします。実際最悪のコンディションだったけどベストは尽くせたし、やり切った感はありました。とにかく体調が悪かったので、いざ発表になってもドキドキするような状態はなくて、“あ、先生が話をしてる、ちゃんと聞かなきゃ”というくらいの感覚でしたので、入団できると知り驚きました。

 

『ラ・バヤデール』公開リハーサルの様子。(C)瀬戸秀美

『ラ・バヤデール』公開リハーサルの様子。(C)瀬戸秀美

 

2015年8月、19才でKバレエカンパニーにアーティストとして入団。プロになってやはり違いは感じましたか?

矢内>やはり全然違いました。スクールのときは先生が面倒を見てくださる感じでしたけど、カンパニーとなると普段のクラスレッスンも自己管理になるので、上手くなるどころか気を抜こうと思えばいくらでも抜けてしまう。どこまでやるかは全て自己責任になってくる。そこが一番の違いだと思います。

クラスレッスンも最初はすごく緊張しましたね。センターで踊るときも中に入っていけなくて、結局そのまま終わったり。最初の一週間くらいはずっと“今日はアレグロができなかったな”なんて調子で、みんなが帰った後ひとりで練習してました。どんどん自分から前に行かなければいけないという環境になって、そういう意味では厳しさを感じます。

 

『カルメン』で初舞台を飾っています。

矢内>当時19才でしたけど、私にとっては大人の世界が描かれた作品であり、表現面がすごく難しかったところです。テクニックが高度で難しいというよりも、とにかく雰囲気がそぐわないんです。はじめは先輩たちも注意するのを忘れて思わず笑ってしまうくらい、明らかに浮いている感じでした。スクールのときはアカデミックな基礎をきちんと習得するよう教わっていて、そこをずっと目指してきたので、いざ“ポジションを通り過ぎて”と言われても崩す踊り方ができなくて。今振り返ると、物語ではなく基礎やテクニックのことばかり意識していた気がします。あのときの映像はまだ観ることができないですね(笑)。いつかリベンジしたいと思っています。

 

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