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大駱駝艦舞踏公演 村松卓矢『バカ』インタビュー!

大駱駝艦メンバーの最古参、村松卓矢さんが壺中天で新作『バカ』を発表! 村松さんが壺中天で自作を披露するのは実に3年ぶりのこと。作品の構想と本作にかける想い、そして舞踏家として歩んできたこれまでの月日と今後の展望をお聞きしました。

2013年に大駱駝艦の拠点・壺中天で初演を迎えた『忘れろ、思い出せ』から3年、この冬待望の新作『バカ』を発表します。創作のために普段から行っていること、心がけていることはありますか? 

村松>評判なっているダンスを観に行くようなこともあまりないし、作品をつくるために日常的に何かをするようなことは特にないですね。ただ壺中天で他のメンバーの作品を観たり、麿さん(大駱駝艦主宰・麿赤兒)の作品に出たり、といったことが創作のためになるという意味では一番大きいと思います。他のメンバーの作品を観て、“コレ面白いな”とか、“こういうことは思いつかなかった、くやしいな”と感じることが刺激になります。

いつも次の作品に向けて何かをずっと温めていることはなく、いざ創作に取りかかってから急に始めることが多いですね。今回の『バカ』は一年くらい前に決まっていたんですけど、ずっとぼんやり考えていた感じでした。頭の中で“こういう雰囲気かな”と思っていても、実際に人を立たせてみないと僕の場合あまりわからないんです。

 

『バカ』というタイトルの由来、作品の着想はどこからきているのでしょう?

村松>まず、『バカ』というタイトルにしようと決めました。前回の『忘れろ、思い出せ』のときは、“こういうことをやっているんだ”という、いわゆるテーマを自分の中で先立たせ過ぎてしまった部分があって。それよりも今回は体を立たせたいという気持ちがあり、そのためにはもう少し意味をなくそうということで、このタイトルを付けました。

最初に『バカ』って言ってしまえば、僕も『バカ』というところから入るしかなくなってしまうし、“『バカ』って何だろう、どういう意味なんだろう”なんてことはあまり考えずに、もっと意味なく“ダンスや体というのは楽しいものなんだ”という部分を出していけたらと思っています。ちょっとした物語みたいなものは一応ありますが、“これが大事だ!”とか、“これが人間というものです!”というような説教臭い部分はあまり出さないようにしようと考えています。

 

2013年『忘れろ思い出せ』(C)松田純一

2013年『忘れろ、思い出せ』(C)松田純一


それは長いキャリアを積み重ねて行き着いた境地でしょうか?

村松>もともと“こういうことを世の中に言いたい!”というような感覚はあまりない方なんです。作品をつくり始めた頃は、“舞踏というのはこういうものだと思うよ”とか“僕は踊りについてこういう風に考えました”という作品をつくることが多かった気がします。

ただ作品をつくっているときって、体のことをやっているにも関わらず、話をしながら進めていく訳ですよね。みんなとのコミュニケーションや演出にしてもそうで、踊りをするのは体だけど、振付を考えるのは自分の頭の中であり、テーマも頭の中で考えている。そういうことから、記憶や頭の中の事柄というものに一度焦点をあててみようということでつくったのが『忘れろ、思い出せ』でした。

それはそれでやってよかったけれど、ちょっと理屈っぽくなったかなと思っています。壺中天に来るお客さまの中には“意味は全然わからなかったけど楽しかった”という方も多くて、だったらもっとわからなくしちゃってもいいんじゃないかと、がんばってわからせようとする方向ではないものにしてみようと考えました。

 

テーマがあった方がつくりやすいのでは?

村松>今回の作品は目指すものがないので、どこに着地していいかわからないんです。こういう始まりがあって、それに対して反論するシーンがあって、最終的にこうなった……、という時間の流れを取ってしまおうとしているので、確かにやりにくい部分はありますね。でも作品をつくっていく上で、僕はその方が面白いと思いました。

創作の時間を楽しみたいという欲望があって、自分が考えた場所へみんなに向かってもらうのではなくて、最後はどうなっちゃうのかわからないというところから始められたらと。これまでは僕がテーマを出して、このイメージがやりたい、体はこういう見せ方をしたい、と伝えるところから創作をしていました。でも今の気持ちは、自分の中のものではないものが欲しい。

今回はみんなに“何でもいいからそれぞれやりたいことを言ってくれ、やりたいことをやってみてくれ”と話しています。作品に出るとなったらみんなはりきるし、こういうことがやりたいという想いはそれぞれありますからね。例えばあるメンバーが“地球が滅びて人類が滅亡してしまうのを止める未来人がやりたい”と言うと、僕の中にはそういう感覚はないので、“え、それがやりたいのか”と思うんですけど、とにかく考えずにやっちゃおうということで取りかかるんです。そこから“じゃあお面を付けてみたらどうだろう”とか、こういう風にした方がいいのではといろいろ調整しながら進めているところです。

 

2013年『穴』(C)松田純一

2013年『穴』(C)松田純一

 

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