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遠藤康行『狂 -くるい-』インタビュー!

セルリアンタワー能楽堂主催、アーキタンツ企画制作による「伝統と創造シリーズ」。第8弾となる今回は、元フランス国立マルセイユ・バレエ団の遠藤康行さん演出振付による『狂 -くるい-』を上演。能や歌舞伎でお馴染みの『道成寺』をモチーフにした『DOJYOJI+』と、能『鉄輪』をモチーフにした『KANAWA』の2作品を披露します。開幕に先駆け、遠藤さんにクリエイションの様子とご自身の活動についてお聞きしました。

『狂 -くるい-』2部作のうち、『KANAWA』は能の『鉄輪』をモチーフにしています。『鉄輪』に着目した理由は何だったのでしょう。

遠藤>このシリーズの大きなテーマとしてあるのが、女性の内面や人間の気持ち、執念といったもの。愛情ってどんどん重なると機械的になって、本当に好きだったのかわからなくなってしまうことがあると思う。そういう意味でまずタイトルに『狂』の字を付けました。

『KANAWA』の方は新作ですが、ベースとなる『鉄輪』には、『道成寺』とはまた違った執念や怨念というシンプルなテーマがある。男性に裏切られた女性が恨み殺そうとするというだけの話だけど、僕がモチーフとして一番面白いなと思ったのが、女性に恨み殺されそうになった男性が人形を身代わりにする部分。そこが何だかすごく現代的だなと感じていて、ロボットを自分ですと言うような擬人化的感覚って今の時代にもあるのではと考えたのが、『鉄輪』をモチーフに選んだ大きな理由でした。

女性役を酒井はなちゃんが、男性役を梅澤紘貴くんが、僕はその間を取り持つ影や雰囲気、止められない力のようなものを演じます。はなちゃんのことは僕もよく知っているので、この役にぴったりだろうなという確信がありました。梅澤くんはノーブルでいてちょっと受け身なんだけど、実は芯が強そうでもある。きっとはなちゃんとも合うのではと思ってお願いしました。

『KANAWA』の方は『DOJYOJI+』とはつくり方もまるきり違って、僕がどんどん振付をつくることもあれば、僕の考えたイメージをもとに3人で動いてみることもあります。基本的に僕がマテリアルを出しますが、はなちゃんの方から“ああしたらどうかな”といろいろ提案してもらうことも多いですね。彼女はベテランだから、本当に舞台を知り尽くしてる。そのプロフェッショナルな在り方というのは素晴らしいし、そういう意味でもちょっと大人の作品にできたらと模索しています。

 

(C)MIKI SATO

(C)MIKI SATO

 

能舞台で上演するうえで、特有の制約ごとや勝手の違いなど苦心する部分はないですか?

遠藤>大変だとは思わないですね。これまで野外公演も度々経験してきたので幕がないのはさほど気にならないし、それほど制約という風には感じません。例えば『DOJYOJI+』の方はリノリウムを敷き、『KANAWA』は木の床で踊ったりと、決まりごとをどうやって面白くできるかという感覚で捉えています。

セットはほぼ使わない予定で、マテリアル的なものが少しあるくらい。能の舞台はお客さんとの距離もすごく近くて、そういう意味では普段とは勝手が違うと思う。ただ僕は遠いよりも近い方が好きですね。近いとどんな感情でも感じてもらいやすいのかなという気がします。

 

(C)MIKI SATO

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