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笠井瑞丈×笠井叡『花粉革命』インタビュー!

舞踏家・笠井叡さんの代表作として知られるソロ作品『花粉革命』。日本国内はもちろん海外でも高い評価を受け、各地で上演を繰り返してきた本作を、実の息子である笠井瑞丈さんが再演。父・叡さんの演出・構成・振付のもと、新たな『花粉革命』を発表します。上演に先駆け、瑞丈さんと叡さんのおふたりに本作への想いをお聞きしました。

2001年にシアタートラムで初演を迎え、国内外で高い評価を集めてきた笠井叡さんのソロ作品『花粉革命』。お父様の代表作を踊ろうと思ったのは何故でしょう。

瑞丈>ここ数年、自分の踊りのルーツをずっと考えてきました。僕自身はヒップホップやブレイク、コンテンポラリーからダンスを始めましたが、自分の中に舞踏に対する想いのようなものがどこかにあって。僕は自分のことを舞踏家だと言ったことはないし、実際に舞踏家ではないと思う。ただ叡さんの原点は舞踏であり、それを知りたいという気持ちがありました。ダンスについて叡さんが考えていること、それは舞踏的なこともあるし、もう少し精神的なものも含めて、全ての要素が一番詰まっている作品が『花粉革命』だと感じたんです。

叡さんの公演はほとんど観ていますが、なかでもこの作品は特別だという感覚がありました。とはいえ最初にかしこまって“踊らせて下さい!”とお願いした訳ではなく、お酒を飲んでいるときにその勢いも手伝って、“やりたいんだよね……”となんとなく話をした感じ。それが5〜6年前のこと。あれから少しずつ話が進み、今ようやく時期がきたように思っています。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

叡>瑞丈から初めて“『花粉革命』を踊りたい”と言われたときのことはよく覚えています。そんなことを考えていたのかとびっくりしましたね。彼なりに真剣に話していたとは思うけど、私としては瑞丈の中でどういう流れがあって『花粉革命』を踊ろうと思ったのか掴むことができなくて、そのときは“じゃあいつやろう”というような具体的な話はせずに終わりました。

私としては、自分ができなかった新しい領域を見てみたいという気持ちもありました。しかし踊り手とは自分の世界をつくっていくものであり、彼自身の中にあるものが一番いい形で出るのが望ましい。私から振りをもらい、それを踊ることが瑞丈にとってどういう意味があるのかわからなかったし、やっていいものだろうかとも考えました。でもあるとき瑞丈から“自分の踊りを続けいく上で重要なことだから絶対にやりたい”と言われ、じゃあ私も真剣に向き合わなければと改めて考えるようになりました。それが一年半くらい前のことです。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

これまでさんが踊られてきた『花粉革命』の要素はどの程度再現されるのでしょう?

叡>もともと『花粉革命』に振付はなく、全て即興で踊っています。だから二日上演すれば二日間とも違うものになる。でも瑞丈から“今回は全部振付にして欲しい”と言われて、そこからして全然違う。即興の作品を振付にして彼のところに流すということです。

瑞丈>普遍的なものにしたい、作品を残したいという想いがあり、振付にして欲しいとお願いしました。即興が普遍じゃないとは言わないけれど、例えばこれから先また踊る機会があるとしたら、この作品に関しては同じことを繰り返したい。それを10年後、20年後まで続けていきたいと思っています。そのためには振付がなければいけないという気持ちがありました。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

叡>私の振付法は割と単純で、準備はしないんです。私がつくるというよりも、ダンサーが目の前にいるとそこに乗り移るような感覚があるので全く苦労というものがない。ダンサーを前にすれば自然と出てくる。だから、“この人にこういう振りをつけよう”ということは考えたことがありません。ところが今回はそういう感覚がなくて、自分の動きしかやってない。そこが大きく違う気がします。

これは実際にリハーサルを始めてわかったことですが、人に踊ってもらっているというよりも、もうひとつの新たな自分の作品をつくっている感覚に近い。彼の作品なんだけど、私が振付けている限り、自分の踊りの延長という感じがする。彼の作品というより自分の作品のような気がしています。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

 

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