久保綋一『海賊』インタビュー!
アリ役にはオーストラリア・バレエ団プリンシパルのチェンウ・グオさんをゲストに招いています。
久保>昨年の『横浜バレエフェスティバル』で知り合ったご縁で、ゲストとして出ていただくことになりました。彼の踊りは本当にすごい。一見の価値ありですよ。ただ今回は剣のシーンがあるから大変だと思う。男性陣が今いちから剣のテクニックを教わっていて、闘い方もしっかり手順が決められているからひとりが失敗すると全部が狂ってきてしまう。
彼にも剣をマスターしてもらわなくてはならないので、今回は少し早めに日本に来てくれるようにお願いしています。でも男性でチャンバラが嫌いな人ってまずいないと思うので、きっと彼も喜んでやってくれるのではないでしょうか。
Wキャストでアリを踊るのは新井悠汰くん。彼は舞台度胸があるし、ジャンプも高くテクニックもあって、舞台映えもする。アリ役にぴったりだと思います。
美空ひばりの一生をバレエ化した『HIBARI』、林英哲・新垣隆とのコラボレーション作品『死と乙女』、そして今回の『海賊』など、新たな作品に意欲的に取り組んでいます。その狙いとは?
久保>今これだけバレエ団がある中で、NBAバレエ団ならではの特色を出していかなければならない。他と同じことをやっていてもなかなか観てもらえないだろうから、そういう意味ではバレエ団としての戦略の一部ですよね。
以前ある人が“一万円払って日本のバレエ団の『白鳥の湖』を観に行くなら、もう一万円足してパリ・オペラ座バレエ団を観る”と言っていたのを聞いて、“そうだよな、まっとうな意見だ”と思ったことがあって。同じフィールドで勝負して勝ち目がないなら、オリジナリティを出していく必要がある。もちろん古典の全幕は、バレエ界にとっても宝の作品ではありますので、私たちも上演をしていきます。ただそれだけでないバレエの世界を観客のみなさんに届けるのが、私たちNBAバレエ団の存在意義でもあると思っています。
現在2021年の春までプログラムが決まっています。『海賊』が終わると6月にガラ公演が控えていて、そこでまた宝満くんに一作品振付けてもらうつもり。彼はその後も何かしら振付の機会が巡ってくるでしょう。9月は『リトルマーメイド』の日本初演を予定しています。振付は『HIBARI』のリン・テイラー・コーベットさん。『リトルマーメイド』はアメリカで上演されていて、僕も観ましたがとても楽しい作品ですよ。
例えば夏は『リトルマーメイド』、冬は『くるみ割り人形』と定期的に上演して、バレエ団のレパートリーにしていきたい。『海賊』もそう。つくるからにはレパートリーとして定着させていきたいし、ブラッシュアップしていきたい。そのためには良かったところはもちろんですけど、厳しい意見もどんどん聞きたいですよね。
幅広い作品を経験することで、ダンサーのクオリティも着実に上がってきているのでは?
久保>みんなすごく頑張ってくれていると思います。ただ作品によっては粗が出てしまうものもあるだろうし、古典の全幕作品となるとまだ心配な部分もあります。
今の課題は提携する劇場です。使いたいときに使いたい会場を使えるバレエ団にならないといけない。作品を上演しようとしても、劇場をおさえられる、おさえられないという気苦労が常にある。
地元ということで、所沢市民文化センターミューズさんが協力的に共催公演などをさせていただいてますが、やはり日本の芸術文化向上を目的とすると、集客のある都内の劇場で公演することも重要であると思いますよね。