中村恩恵×近藤良平×首藤康之『トリプレット イン スパイラル』インタビュー!
振付家がふたりいることになる訳ですが、意見が分かれた時の判断は? 最終的なジャッジはどうされるのでしょう?
中村>トリプルビルのような形で作品ごとにそれぞれ振付家がいたり、オペラの中のこのパートの振付けをしてくださいということはあっても、こういうスタイルは珍しいですよね。私自身初めての試みです。もしかするとすごいケンカになるかもしれないけれど(笑)、ケンカになるということは譲れないことがクリアにあるということだと思うし、それはつくり手として相手を大事にしているからだとも思う。
また自分自身もそれを通して発見があったり、新しい解決法があったり、ひとつチャレンジになるのではないかと思っています。寛容であるということも、全体のテーマになってくるかもしれないですね。
近藤>僕は口出しされても気にしないですよ(笑)。
首藤>もちろんみんな意見が違うから、創作する上で“これはこうじゃない”というものが出てくるのは当たり前のこと。でもお互い尊重しているというのがどこか根本にあって、まとまるから一緒に仕事をするんだろうなと思う。最終的に上手くいくだろうから集まってる訳だし、殴り合いにはならないはず(笑)。

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近藤>やっぱりこういうことってタイミングが合わないとできないし、何かしら縁があるんだと思う。おそらく面白いものになると感じているので、ぜひこの出来事は生の出来事として観ていただきたいなと思います。
首藤>同じダンスの世界にいるのに絶対にご一緒しない人っているじゃないですか。そう考えると巡り合わせって不思議で、すごく大切だなと思う。この巡り合わせは大事にしたい。たぶん引き寄せたり引き寄せられたりしているんだろうなというのは感じていて、それを大切にしたいと思います。
中村>いつも自分自身を裏切るようなことをしたいという気持ちでいますが、近年は自分で作品をつくって踊ることが多くて、その中でのチャレンジになってくる。今回は良平さんの世界にぽんと入ることができるので、自分の世界では体験できないひとつの人生がそこにはあるのではないかと感じています。
日常生活ではひとりの人がひとつの人生、その人の人格を生きていて、それ以外の人生を生きることはできないけれど、舞台という虚構の世界では自分ではない人生を生きることができる。違う人の世界観の中にいたらまた全然違う生き方をする自分がいて、その人の考える身体の使い方をしてみたら自分の中に全然知らない自分がいるような、新しい人生を生き直しているような驚きがあったりする。それがまた舞台という空間で演じることのすてきなところなんだろうなと思います。
人の人生というのは多角的な可能性に溢れているということをこの仕事をしながら強く感じていて、そういう意味ではすごく自由だなと思う。そういうものを観る方と共感できたらと。チャレンジしていくということ、生きる上での勇気みたいなもの、やさしさみたいなものを届けられる作品がつくれたらいいなと思っています。
観客と作り手と演者が出会って初めて完成されるトリプレットとなりそうです。3者が出会う瞬間に生まれるスパークをぜひ見届けていただきたいと思います。

(C)Tadashi Okochi