グレアム・マーフィー『フロック(ドレス)』インタビュー!
世界的振家であるマーフィー氏が、地域コミュニティで活動する高齢者のアマチュア・ダンス・カンパニーであるMADEに振付けを行うことになったきっかけ、動機は何だったのでしょう?
マーフィー>自分の出身地であるタスマニアで再び仕事ができるということはもちろん惹かれる部分でした。それと同時に、自分自身が年を取るにつれ、年齢を重ねた身体の持つ可能性にますます魅力を感じてきたこともあります。
MADEのダンサーには多彩で魅力的な身体性と知恵があります。これは若いダンサーにはないものです。若い人たちの人生経験では深い解釈をするには限界があると、ときどき感じています。
MADEのオーストラリアでの認知度、活動とは? MADEというカンパニーをどのように捉えていましたか?
マーフィー>勇敢で恐れを知らない冒険心溢れるダンサーたちのグループがあるという評判を事前に聞いて知っていました。カンパニーに振付けを依頼された時は、彼女たちのエネルギーと我々アーティストのクリエイティビティをどのようにしたら最善の形で融合できるのか考えました。振付家とダンサーそれぞれが満足や充実を感じられなければ、一緒にやっても仕方がありませんから。
実際に彼らと対峙した印象をお聞かせください。
マーフィー>まず、彼女たちには長い長い時間を共にしてきた関係性があることに気付き、クリエイションの素材としての豊かさを感じました。人生経験は、ダンサーにとって何ものにもがえがたい財産です。
MADEのメンバーにはダンスのスキルはどの程度あるのでしょうか。彼らのバックグラウンドとは?
マーフィー>アマチュアとしてではありますが、ダンスを何年かやっていた人もいますし、全く踊ったことがなく、初めて舞台に立つという人もいます。
MADEに参加するのにダンスや演劇の経験はいりません。実際『フロック(ドレス)』が初舞台というダンサーも何人かいます。バレエや民族舞踊、社交ダンスなど、ダンスをやっていた人たちの経験をグループの活動に活かしています。
キャストはどのように決めましたか?
マーフィー>まず彼女たちが人生の特別な節目で着た想い出のドレスについて話して欲しいとお願いしたところ、非常にバラエティに富んだ反応が返ってきて、創作意欲を大いに刺激されました。彼女たちのパーソナリティや身体性は本当にさまざまですし、グループとしても多彩なキャラクターのダンサーが集まっていて、作品の配役もすぐに決まりました。
作品のクリエイションにあたり、身体訓練やワークショップなどはされましたか?
マーフィー>最初の“互いを知る”ための期間には、ディスカッションをしたり、ワークショップで動いてみたり、といったことをしました。
ドレスをめぐる女性の回想物語が描かれるという本作。創作のアイデア、発端となったものとは? クリエイションはどのように行ったのでしょう?
マーフィー>最初のディスカッションで出し合った、人生における特別な洋服の話、自分にとってどう重要なのか、その洋服にまつわる想い出の話から始まりました。
創作のプロセスはとても面白いものになりました。2016年10月と2017年の5月に約10週間かけてリハーサルを行い、そのなかで時代をあらわすための選曲をしましたが、結局舞台ではさまざまな時代の音楽が使われることになりました。
音楽に刺激され、この作品で私は初めて言葉の芸術にも挑戦しました。『フロック(ドレス)』という作品に、1950年代から現在まで——私の人生にも重なるのですが——それぞれの時代を映し出す声と手触りを与えたかったのです。
高齢のキャストに振付をする上で、苦心された点、気を付けた点とは?
マーフィー>若くても年を取っていても同じです。なぜなら、ダンスの言語はユニバーサルで、課題、解決方法、規範は年齢にかかわらず誰しもにあてはまるので。
MADEとタッグを組む上で目指したものとは? 手応えをどう感じていますか?
マーフィー>MADEとの創作は非常に豊かな経験となりました。ある意味では、振付家として新しい方向性やインスピレーションを与えてもらったと感じています。