金森穣Noism0『愛と精霊の家』インタビュー！

昨夏一夜限りの上演を行い大きな注目を集めたNoism0『愛と精霊の家』が、この夏待望の再演を実現！　Noism0とは、Noism芸術監督・金森穣が立ち上げたプロジェクトカンパニー。メンバーには金森穣を筆頭に熟練の芸術家たちがそろい、ステージを通し新たな舞台活動の可能性を提示します。再演を前に、金森さんにインタビュー。作品への想いをお聞きしました。

投稿日：2016/08/08

キャストにはNoism副芸術監督であり筆頭舞踊家の井関佐和子、Noism2専属振付家兼リハーサル監督の山田勇気、NDT IやNoismのゲストメンバーとして活躍するなど国内外で幅広い活動を続ける小㞍健太、Noism劇的舞踊シリーズでもお馴染みのSPAC−静岡県舞台芸術センター所属俳優・奥野晃士らが名を連ねています。キャスト選定の決め手、彼らに魅力を感じた部分とは？

金森＞今回の『愛と精霊の家』は2012年にユニットシアンで発表した作品が母体となっていますから、シーンごとに似合いそうな実演家をキャスティングしています。なぜ彼らなのかという問いに対する答えは、ある音楽を聴いた時、なぜ私の中にあるイメージが立ちあらわれるのかということに対する答えがないのと同じです。私が感じる彼らの魅力は、この作品を実演する彼らの中にあらわれていると思います。

初演を振り返り、このメンバーならではの醍醐味を感じた部分はありましたか？

金森＞それはきっと実演家たちの身体、すなわち踊りにあらわれているでしょう。特に佐和子演じる「女」にとって「声」が奥野さんでなかったら、「男」が健太でなかったら、「振付家」が勇気でなかったら、立ちあらわれる微細な感情及び表現は変わったものになるでしょう。そして作者である私も出演していることで、この「家」の出来事は非常に内省的なものになると同時に、人類にとって普遍的な「愛と死」というテーマを「主観と客観」の問題として表象するものとなるでしょう。

Noism0『愛と精霊の家』撮影：篠山紀信

今回の再演にあたり、何か手を加える予定はありますか？　あるとしたら、どういった部分を変える予定ですか？

金森＞何かをあえて変えようとは思いません。初演時に立ちあらわれたものを大切に、よりその精度を上げ、密度を高めていくための稽古をします。その過程でより良き選択肢が見い出されれば手は加えますが、それは作品がすでに持っている力をより引き出すためのものであり、変更ではなく成熟であると考えています。作者にとって創作とは一期一会の非常に高い集中力と瞬発力を要するものです。ですから時として創作を「今この瞬間的なもの」と捉えて、手を加え続けてしまうことがあります。しかし変化や革新による刺激に惑わされることなく、作品の起源を見失わずに地道な稽古を続けることは、身体表現において非常に重要なことだと考えています。