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谷桃子バレエ団75周年ガラ開催! 芸術監督・髙部尚子インタビュー

リアル動画で話題沸騰中の谷桃子バレエ団が、この夏75th Anniversaryガラ公演「TMB HISTORY GALA PERFORMANCES」を開催。谷桃子バレエ団が誇る人気演目とダンサーが勢揃いする豪華プログラムで、大きな話題を集めています。開幕を6月に控え、リハーサル中の髙部尚子芸術監督にインタビュー! 75周年を迎えたバレエ団の現在と未来についてお聞きしました。

YouTubeでのリアル動画配信をはじめ、3年前から本格的にバレエ団内改革を進めてきました。今、その成果をどう受け止めていますか?

髙部>手応えは本当に感じています。何十万人もの方がYouTubeを見てくださる、いわゆるバズるという状況になったのはやっぱり驚きでした。

しかも日本だけではなく、世界中の人が見てくださっている。平田桃子さんに“ロンドンにいる日本人のみなさんみんな見てるわよ”なんて言われて、うわ、恥ずかしいな、という想いもありました。またそこでもっとちゃんとしなくちゃ、という気持ちになって。世界中の方が見るのであれば、やっぱり恥ずかしくないような状況にしたい。でも私たちも何かものすごい能力を持っているわけではないので、真摯に日々頑張るしかないけれど。

勉強しなければいけないことがもう山ほどあって、受験のときより勉強時間が増えています。私が高校受験のときはバレエが優先で、先生にもよく”成績は落第しなければいい、低空飛行で飛んでいればいいから、バレエを頑張りなさい”と言われたものでした。なので今の方が机に向かってる時間が長くなっていますね(笑)。

YouTubeは現在6万7000人の方が登録してくださっているそうです。また少しずつ増えていったらうれしいなと思っています。

『シンデレラ』過去公演より

バレエ団内改革の集大成のひとつが新春公演『白鳥の湖』でした。プリンシパルの永橋あゆみさん、新人の森岡恋さん、ゲストの平田桃子さんの三名を主演に据え、東京文化会館で3日間にわたり上演されています。芸術監督として、どんな想いでご覧になっていたのでしょう。

髙部>永橋さんは脚を痛めていたので、私も三幕はもう倒れそうなくらい緊張していました。だけど無事終わってほっとしましたね。

森岡さんは技術的にはそれほど心配はなくて、私も客席で見守っていました。でも公演というのは何が起こるかわかりませんから、永橋さんとはまた違う緊張感がありましたね。ただ彼女は根性があるので、失敗には終わらせないだろうなという想いはどこかにありました。

新春公演『白鳥の湖』

平田さんの回はスタンディングオベーションもいただきました。あれだけ多くの方が立ち上がって拍手をしてくださったのは、うちのバレエ団でははじめてだったと思います。やっぱり感慨深いですよね。谷桃子バレエ団の『白鳥の湖』は奇をてらっているわけではないけれど、四羽の白鳥など独自の部分もあり、コール・ド・バレエが最後にロットバルトを追い込むところはやはり感動を生む。私もいろいろなバージョンを観ていますけど、一種独特な世界観があると思っています。

平田さんが踊ってきた『白鳥の湖』はそれとはまた違うけど、うちのバレエ団に沿うように踊ってくださった。そこでコール・ド・バレエとマッチして、コラボレーションがうまくいったときはもう本当にうれしくて。『白鳥の湖』はみなさんに喜んでいただけて、やっぱり『白鳥の湖』というバレエは人気があるんだなというのを改めて感じました。

新春公演『白鳥の湖』

新春公演ではイヤホンガイドをはじめて導入されています。これも画期的な出来事でした。

髙部>イヤホンガイドに関してはどうしてもやりたいという想いがありました。なかにはイヤホンガイドに反対される方もいるとは思います。でも改革を進めていくためには、やはり私たちが当たり前だと思っていることを当たり前だと思ってはいけない。

はじめてのことだし、ある程度お金もかかることだし、最初なのでそれほど大勢の方が借りてくださるわけではないというのはわかっていました。ただバレエ団の中に反対する人はいなかったですね。800個用意して、実際に出たのはトータルで300個くらい。でも反響はありましたし、やって良かったなと思っています。

台本は私が書きました。全幕だと主役に目がいきちですけど、いろいろなところでいろいろな人がいろいろなことをしているので、そういうことをお話しすると面白いかなというのは意識した部分です。ただあまり喋りすぎてもいけないので、歌舞伎を参考に、ここは踊り観てもらいたいというところはあまり喋らずにしたりと、ほどよく合間合間で説明しようというのは気をつけたところでした。

永橋さんの回は私がお話をして、あとの2回は本職の声優さんにお任せしています。やはりはじめてバレエをご覧になる方は何をしているかわからないではないですよね。お客さまの声で、奥様はバレエ好きだけどご主人と息子さんはさほど興味がない、それを無理やり引っ張っていくと奥様だけ楽しんで2人はいつも寝ている。だけど今回は2人にイヤホンガイドを聞かせたら、はじめて最後まで寝なかった、と言ってくださった方もいました。

そういうお役に立てるのなら、もうどんどんやっていきたいし、これから広まっていけばいいなと思っています。歌舞伎も現在のようにイヤホンガイドが主流になるまで50年かかったそうです。当初はイヤホンガイドの“ガイ”は公害の“害”だと嫌味を言われたと、イヤホンガイドの会社の方から聞いています。

音が漏れるのではと心配される方もいましたが、隣に漏れることはないので、安心して聞いていただけます。ここは音楽を聴きたいと思ったら外したり、といった使い方もしていただけますし、システムとしては非常にいいのではないかと考えていて。イヤホンガイドはこれから定番にしていこうと考えていて、今回のガラ公演でも導入する予定です。

新春公演『白鳥の湖』

 

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