フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT-コンタクト』インタビュー!
ドゥクフレ流フレンチ・キャバレー・ミュージカルと呼ばれる本作。この作品をつくろうと考えたきっかけを教えてください。
ドゥクフレ>何故こういう作品をつくったかというと、純粋に好きだから。私がつくりたいのは、自分が観たいと思う作品です。作品を構成する要素はいくつかあって、この創作をはじめたのがピナ・バウシュの亡くなったすぐ後だったので、まずは彼女へのオマージュが入っています。もうひとつの欲求は、ミュージカルを扱ってみるということです。ミュージカルというスペクタクルは、私にとってさまざまな芸術が明るい形でミックスされたもの。あともうひとつ、多彩なカルチャーや個性を集めた作品をつくりたいという想いがありました。実際今回はバックグラウンドも身体性もばらばらなキャストを集めています。年齢層も幅広く、一番若いキャストと一番年上のキャストの差はおよそ30歳。若い人ばかりを使った『PANORAMA-パノラマ』に出演したキャストもいれば、昔から一緒に仕事をしているベテランも参加しています。
作中にはさまざまな要素が詰め込まれていますが、なかでもミュージカルへのオマージュが色濃く伺えます。
ドゥクフレ>ミュージカルにおける一番素晴らしいマリアージュは歌とダンスです。なので今回は踊りに加えて歌のレッスンも必要でした。14名のダンサーのうち、11人が歌も歌っています。残り3人は残念ながら歌は上手ではないので(笑)、歌のシーンには参加させていません。演劇的な部分もありますが、いわゆるピュアな演劇ではなく、演劇とサーカスのクラウンが混ざったようなテイストであり、コミック的な雰囲気になっています。
ジャン・ラバスが手がけた舞台美術もとてもうつくしい。インスピレーションのもとになっているのは、ドイツの表現主義の映画『カリガリ博士』。それぞれのシーンが過去の映画に由来していて、例えば最初はフレッド・アステアとジーン・ケリーの映画を要素として入れています。とあるシークエンスは『ウエスト・サイド・ストーリー』を参照していて、それはみなさんもきっと気付くでしょう。ブライアン・デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』のイメージも取り入れています。これは私が15歳のころ夢中になっていた映画です。バスビー・バークレーなど、1920〜1930年代のアメリカのミュージカル映画の振付家の影響も受けています。舞台をご覧になる方には、あちこちにミュージカル映画の断片を感じていただけると思います。
バックグラウンドや個性の異なるキャストをどのように融合していったのでしょう。
ドゥクフレ>キャスティングの段階で自分の目で選んでいるという点が大きいですね。私が選ぶのは、性格のいい人、好奇心が強い人、オープンマインドで自分と違う人と仕事をするのが好きな人。そうでない人は、いくら技術的にレベルが高くても選んでいません。半分は人柄で選び、あとはいろいろなことができる人を選びました。専門分野だけではなく、他の才能を持っている人です。
たとえばダンサーだけど執筆の才能がある人もいれば、音楽活動をしている人もいます。劇中はダンサーがフルートを吹いたり、俳優がギターを弾いたりと、キャストがミュージシャンの役割も兼ねています。空中を浮遊するシーンをつくりたかったので、キャストにはサーカスアーティストも起用しています。シルク・ドゥ・ソレイユでも一緒に仕事をしている人で、作中にエアリアルを取り入れました。
ひとつの美を追究することもありますが、ハーモニーも重視します。ハーモニーの要素は、多彩、多様であるということ。ステージに登場する肉体も多彩です。スリムなブロンドの女性もいれば太った男性もいて、さまざまな肉体やエネルギーを展開しています。それぞれの背景も全く違って、バレエの素養がある人、ストリップ業界出身者、ミュージシャン、俳優、路上演劇、ジャズ出身と、いろいろな出自の人たちが融合されています。