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フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT-コンタクト』インタビュー!

“空間演出の魔術師”フィリップ・ドゥクフレが、自身のカンパニーDCAを率い、最新作『CONTACT-コンタクト』を日本初披露。ポップで奇抜なドゥクフレ流フレンチ・キャバレー・ミュージカルを繰り広げます。この秋の開幕を前に、来日を果たしたドゥクフレにインタビュー! 作品への想いをお聞きしました。

ピナ、ファウスト、キャバレー。これらの要素に共通するものとは?

ドゥクフレ>何かしら統一性があると思います。例えば、みんなドイツですよね。キャバレーといえばベルリンで、ピナはドイツ人、ゲーテもドイツ人。とはいえクリエイションのときは全くそんなことは考えていませんでしたけど(笑)。

『ファウスト』をテーマにしているのはゲーテだけではなく、全ての本を集めたら本棚がいっぱいになるくらいさまざまな『ファウスト』が存在している。そういう意味では全ての『ファウスト』を読んでいる訳ではないし、もちろん翻訳のバージョンもいろいろあって、私が読んだのはジェラール・ド・ネルヴァルのフランス語訳です。古く格調高い翻訳で、詩的でうつくしい反面、難解でもあります。『ファウスト』はある意味文学界の伝説ではありますが、神になろうとした人物であるというところが面白い。永久に満足することがない、そこが私との共通点だと思います。

『ファウスト』を下敷きにしてはいるけれど、かなり自由な脚色を加えています。まずミュージカルへのオマージュがあります。私が15歳のころ好きだった『ファントム・オブ・パラダイス』も『ファウスト』のいち形態なんです。ブライアン・デ・パルマがあれだけ自由に『ファウスト』を描いているのを観て、私も自由に描いていいんだと思いました。実は今回の作品にファウストが出てくるのは舞台が始まって40分経ってから。しかも登場してからずっと出ている訳ではなくて、引っ込んだり戻ってきたりと自由な展開になっています。なのでこの作品を通して『ファウスト』を理解しよう、探そうとはしないで欲しい。つまり物語を伝えるタイプの作品ではなく、私がやろうとしているのは、イメージを与えつつ何がしかのセンセーションを人々に感じてもらうこと。そのセンセーションにより、幸福を感じたり、日常の辛く苦しいことを一瞬忘れられるような何かを提供したいと考えています。

 

『CONTACT』©Laurent Philippe

『CONTACT』©Laurent Philippe

映画やミュージカルと多彩な要素で構成された本作。なかでもドゥクフレさんがアーティストとして最も影響を受けたものとは?

ドゥクフレ>言い出したらキリがないですね。おそらく200くらいの要素があると思います。ただ『CONTACT-コンタクト』に関していえばミュージカルであり、私がここで指すのはミュージカル映画です。というのも私が若いころ観ていたのはミュージカル映画ですし、ミュージカルは舞台より映画の方が好きなんです。

なかでも私にとって重要な意味を持つ映画は『天井桟敷の人々』。すごく古い映画で、私というよりむしろ両親にとって影響のあった映画です。この映画が私に舞台の世界で仕事をしたいと思わせた。主人公のバチストに共感して、彼のようになりたいと思ってこの職業を選びました。私の根幹をなす映画です。私がはじめてこの映画に触れたのは記憶にないくらい幼いころのこと。というのも私の兄はピエール・フランソワという名ですが、これは登場人物のひとりの名前と同じなんです。あやうく私もバチストという名前になるところでした(笑)。それだけ両親がこの映画に入れあげていたということです。

 

© Cie DCA

© Cie DCA

キャリアのはじめにサーカス学校で学んでいますが、それは『天井桟敷の人々』の影響によるものでしょうか。

ドゥクフレ>それは確かにあると思います。というのも『天井桟敷の人々』はサルティンバンコや大衆芸能といった演劇小屋にオマージュを捧げた映画であり、舞台というのはそれらも含めた芸術であるということを教えてくれた。ただ何より子どものころ家にサーカスのポスターが貼ってあり、それを見ながらいつも“どんなものなんだろう?”と想像していた、その影響が大きいような気がします。

 

『CONTACT』©Laurent Philippe

『CONTACT』©Laurent Philippe

 

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