フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT-コンタクト』インタビュー!
“空間演出の魔術師”と呼ばれていますが、本作の舞台美術でこだわった点は?
ドゥクフレ>今回は斜めの線をひとつのテーマにしています。床は水平ですが、他の装置の線は全て斜めになっています。これには空間を歪める狙いがあります。あと他の作品でも使っている手法ですが、ビデオを使用しています。今現在行っていることをカメラを使ってライブで写す、遠くから見えないディテールを大写しにするという手法を取り入れています。あと今回は大がかりなサイズの装置を使っていて、それを照明によって細かく区切るような演出も行っています。
愛知公演を皮切りに、新潟公演、埼玉公演と巡演します。その過程で作品が変化していく可能性はありますか?
ドゥクフレ>ツアーをはじめて3年目になりますので、完成形に近づきつつあるし、ベースの部分はもう変わらないと思います。もちろん振付や作曲のなかに少しは即興の部分が入っているため、全く同じにはならないかもしれません。やはりライブ演奏ですし、ミリ単位で決め込んで作曲している訳ではないので、その部分で変化は出てくるでしょう。
やはり公演というのは毎回違うもの。発見というのは毎日あります。私がベースにしているのはダンスであり、ダンスは抽象的な芸術である。つくってしばらく経ってから、実はこれがテーマなんだと自分自身気付かされることが往々にしてあります。振付はある意味無意識の作業なので、後から意識がはっきりすることがあるんです。
こういった舞台作品にはミステリアスな部分があるべきだと思うし、説明しきれない部分は取っておきたいという気持ちもあります。プロセスのなかにはコントロールして作り込んでいる場面もあれば、そうでない場面もある。コントロールしているのはテクニックの部分。そこは完璧を求めます。例えばビジュアル的に観て破綻のない完璧にうつくしいもの、でき上がっているものを技術として取り入れます。目指しているのは、目にとっても耳にとっても受け取るもの全てが完璧であるということ。一方でダンスはダンサーの肉体から観客の脳を経由しないでダイレクトに伝達されるのが面白い部分だと思っています。
自分のカンパニーでこれだけの人数のキャストを使い、これだけの規模の公演を行うのはこの作品が初めてです。キャストやスタッフ合わせて総勢25名ほどクリエイションに関わっていますが、私としては25名がこの作品の親だと考えています。私がコントロールしているのは、作品のとある一部分だけだと思います。ダンスあり、音楽あり、演技あり、空中劇を含めたサーカスあり、映像ありと、多彩な要素が詰め込まれています。きっと見応えがあると思うし、お子さんからお年を召した方まで観る方の年齢を問わない作品になっています。ぜひみなさんに足を運んでいただけたらうれしいです。