dancedition

バレエ、ダンス、舞踏、ミュージカル……。劇場通いをもっと楽しく。

NDT(ネザーランド・ダンス・シアター) 刈谷円香インタビュー!

世界最高峰のダンス・カンパニーのひとつ、NDT1のメンバーとして活躍する刈谷円香さん。NDTの来日ツアーに伴い、現在帰国中の彼女にインタビュー! 日本公演とこれまでのキャリア、NDTでの今をお聞きしました。

2019年のNDT来日ツアーに続き、5年ぶり二度目の日本公演に参加されます。

NDTのメンバーとして日本で踊ったのは前回の日本ツアーがはじめてでした。あの時はNDT1に入って2シーズン目だったので、まだまだ若手という感じで、先輩ダンサーたちの中で踊っていた印象があります。あれから4年半が経ち、カンパニーもレパートリーもメンバーも大きく変わりました。

日本ツアーのプログラムはオランダでも今シーズンを通して上演していた作品で、なかでも選りすぐりの5作品といった感じでしょうか。ただ今回の日本ツアーのように毎公演ごとにプログラムが変わるというのは国際ツアーでも少ないですね。

私は神奈川と愛知の全公演に出演します。高崎公演は私は踊りませんが、メンバーと一緒に高崎入りしています。やはりキャストに何かあったときに踊らなければならない場合もあるので。

またこうしてカンパニーで来日することができて、また違った舞台をシェアできるのはとてもうれしいです。久しぶりにまた同じ舞台で踊るとことができるのもすごく楽しみです。

『I LOVE YOU, GHOSTS 』リハーサル ©sacha grootjans

今回の来日ツアーで上演されるのは、クリスタル・パイト振付『ソロ・エコー』、シャロン・エイアール&ガイ・ベハール振付『ジャキー』、ガブリエラ・カリーソ振付『ラ・ルータ』、マルコ・ゲッケ振付『アイラブユー, ゴースト』、ウィリアム・フォーサイス振付『ワンフラットシング, リプロデュースト』の5作品。うち刈谷さんは『アイラブユー, ゴースト』と『ワンフラットシング, リプロデュースト』の2作に出演されます。

『アイラブユー, ゴースト』はマルコがNDTに振付けたレパートリーで、私もクリエイションに参加しています。マルコとのクリエイションはこれまで何回か経験していますが、いつもすごく速いですね。つくるスピードもそうだし、つくったものはほぼ作品に入ってきます。

ただ最初は本当にひとつひとつつくっていき、それを組み立てていく感じ。パズルのようにピースをつくりながら、全部組み立てたら大きな絵になる、というプロセスです。

彼が言葉でイメージを言ったり、身体でちょっと見せたものを、ダンサーが動きにする。そこで「僕はタバコを吸ってくるから、その間に馴染ませといてね」と言ってぱっといなくなって、戻ってきた途端「じゃあ見せて」となる。それもマルコの「通常のスピードで踊って見せて」と言う。つくって、「はいできた」「じゃあ次ね」と、どんどん進んでいきます。

マルコは動きも独特です。例えばひとつの動きをつくるときに、「それを10倍の速度で10回繰り返してみて」と言われ、ダンサーが身体に落とし込み、自分のコーディネーションを見つけていく。最初のクリエイションのときは、たいていみんな首や腕が痛いと悲鳴をあげていますね。だからマルコのリハーサルに入るときは、あちこち痛めないように、しっかり筋肉をウォームアップするようにしています。

マルコは朝から晩まで働くというタイプではなくて、ぱぱっと作業をして午後になったらもう帰っちゃう。あとはダンサーが自分のパートをクリーンアップしていきます。ただクリエイションはギリギリまでやっていて、初演を迎えるまでずっとつくり続けてる。だからダンサーにとってはフレッシュな感覚があります。

『I LOVE YOU, GHOSTS』2022  ©Rahi Rezvani

『ワンフラットシング, リプロデュースト』は2000年にフォーサイス・カンパニーでクリエイションされた作品で、他のカンパニーでもたびたび上演されていますよね。NDT初演は2020年だったと思います。芸術監督がエミリーになってからレパートリーに加わりました。

初演時はコロナ禍だったので、フォーサイスとのリハーサルはzoomを使ってのものでした。今年またオランダ・ツアーでフォーサイスのトリプル・ビルをすることになり、改めてフォーサイスがリハーサルに来ています。

前回踊ったことのあるダンサーもいるので、動きの指導はもちろん、今回はそれをいかにレベルアップするか、というリハーサルでした。

この作品はグループ内で音楽のカウントを数えるので、毎回タイミンが違います。またビジュアル・キューで動きのテンポが決まったり、それをきっかけにみんなで一緒に動いたりもするので、テンポをつくる人がどうするかでまた変わってきます。

フォーサイスが言っていたのは、そのリズムをいかに想像するかということ。動きのテンポや軽さ、重さ、リズムをどうクリエイトするか。グループ内でいかにみんなでテンポをつくっていくか、というリハーサルです。

例えば、インスピレーションとして、フォーサイスが全く違う音楽をかけて、「このパートはこのテンポで踊ってみて」「じゃあ今度は音楽なしでそのテンポでやってみて」といろいろ試すこともありました。あとタイプライターがカタカタと鳴っているyoutubeを流し、そのイレギュラーなテンポを聴いて、リズムについてみんなで話をしたり。

本番ではキューの目印となっている動きやカウントは変わらないけれど、スピードが変わったり、間が変わったりもするので、互いのテンポを調整し合うこともある。すごく楽しいけれど、毎回スリリングです。

テーブルも重く硬い素材でできているので、足をぶつけるとすごく痛くて。そこを走り抜けたり、上下で踊ったりと、いろいろな動きがあるので、またいろいろな意味でスリリングですね(笑)。

『ONE FLAT THING, REPRODUCED』リハーサル ©sacha grootjans

-コンテンポラリー
-, ,