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KENTARO!! 『前と後ろと誰かとえん』インタビュー!

東京ELECTROCK STAIRS率いるKENTARO!!さんが、ダンスの祭典Dance New Air 2016に登場。KENTARO!!さん振付による世界初演作『前と後ろと誰かとえん』を発表します。10月の開幕を前に、創作にあたるKENTARO!!さんに作品についての想いをお聞きしました。

作中は台詞を話すシーンも登場します。台詞はどこから生まれるのでしょう。

KENTARO!!>普段思っているようなこと、潜在的にあるものを書き起こしていきます。歌詞を書くときもそうですけど、わりと抽象的ですね。例えばAメロ・Bメロ・サビがあるとしたら、まずストーリーにはなってない。AメロはAメロで完結させて、Bメロで完結させて、サビで完結させたりといろいろで。台詞を書くときもすごくこだわっていて、既存の演劇の台詞で使うような言語はなるべく避けて、どちらかというと小説みたいな言葉にしたいと思っています。それが詩的だといわれることもあるけれど、あまり詩的すぎるとロマンチストみたいで気持ち悪い(笑)。だから発音を変えてニュアンスを違うものにしたりと、いろいろ計算しています。たぶん僕の演劇を観たらあまり意味がわからないと思います。面白いと言ってくれる人も稀にいますけど、ものすごくマイノリティかもしれない。

 

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音楽もご自身でオリジナル曲をつくっていますね。

KENTARO!!>いつもある程度音だけ事前に用意して、歌は振付をしながらつくったりします。作品をつくるときは音楽もつくるというのが自分のノルマとしてあって、いろいろ平行して進めています。ダンスは本番寸前でもつくれる自信があるけど、曲はある程度時間に余裕がないと生まれない。演劇もそうで、稽古初日には台本を上げてます。自信がないものに関してはかなり前もってやっておきますね。ただ音に関しても昔よりは大分早くつくれるようになりました。

音楽は独学です。でもいきなりできたわけではなくて、シンセサイザーを買ったはいいけど、三年くらいは一曲もつくれませんでした。いろいろいじったり寝かせたりというのを繰り返して、何とかつくれるようになった感じ。既存のパターンでありそうなものは使わずに、さまざまな要素を組み合わせてつくっています。歌はひとりでつくってひとりで録って、“くそー!”とかいいながら延々と家で作業しています。かなりシュールです(笑)。保険でいっぱいつくっておいて、次の日電車で聞いてみる。そうすると半分くらいボツになりますね。だからダンスの練習をしている時間より圧倒的に長い時間をかけてると思います。

歌もいつかは自分ではなく他の誰かに歌ってもらいたい。でもうちのメンバーはみんな歌がヘタなので、合唱以外は絶対にムリ。今のメンバーは声は良くても、何なんだろうって思うくらい歌が上手い子はひとりもいないんですよね(笑)。

 

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振付家で音楽も自分でつくるというのは珍しいのでは?

KENTARO!!>映画監督のなかには自分で音楽をつくる人も結構いて、岩井俊二監督とかパルム・ドールをとったエミール・クストリッツァもそう。クストリッツァはバンドをやっていて、音楽も自分でつくって自分の世界観を築いてる。そういう人が好きです。ただダンスでは音楽からつくる人ってあまり聞いたことはないかもしれない。

ちょっとした曲ならつくれても、歌詞が乗るとなるとすごく難しいんです。でも難しい割に全然そこは評価されないんですよね。むしろ“えー、ダンスで自作の歌かよっ”てたまにネガティブにとられる気がする。良い曲をつくるのが当たり前に難しいし、歌詞があると聞いちゃうから世界観が限られてしまうので、そういう踊りとの距離のバランス面では自分でもよくやってるなと思います。

例えば無音で同じことをした方がダンス的に強度があると思うんです。いつも東京ELECTROCK STAIRSでやっているものを無音でやったらそういう層にウケると思う。でもそれがわかっている時点でやりたくない。みんながみんな音楽をつくるようになったら僕は無音で踊ると思う。

 

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KENTARO!!さんの作品からは、ある種の初々しさを感じます。

KENTARO!!>そこは僕のひねくれている部分かもしれません。10代のころから人格が歪んでて、純愛だとか他人に対して疑っているようなところがあって、作品になるとそれが逆の方向にあらわれることがあるんです。10年以上前にやった初のソロではものすごくベタなラブストーリーに取り組んで。それって実はすごくキライなことだけど、その時はダンスでやってみたいという気持ちがありました。

今でも作品にそういう部分があるとしたら、ダンスをはじめて楽しかったときの初期衝動がたぶん残っているんだと思います。作品を踊っていて楽しいという意識は今はもうないけれど、たまにすごくエモーショナルになるときがあって。悪い方に出ると、怒りのパターンになる。例えば以前ドイツで踊ったときは、観に来ていた学生たちがすごくうるさくて、舞台上で“うるさい!”って怒ったことも……。それがある種ドキュメントなんじゃないかと思う。人間なので誰でもいらっとすることはあるはずで、その感覚を全部否定して我慢してしまうと面白くない。音楽をやってる人にしても、“みんな愛してるぜ!”みたいな人より、気にくわないことがあると怒って出て行くくらいの人がいい。それでしぶしぶ戻ってきて一曲演奏すると、そのときの音楽はすごくよかったりする。何かアクシデントが起きたときに切り返せる人を見るといいなって思います。

 

東京ELECTROC-STAIRS_2013年「東京るるる」photo:大洞博靖

東京ELECTROC-STAIRS_2013年「東京るるる」photo:大洞博靖

 

 

-コンテンポラリー