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『Clementia』川崎悦子×大貫勇輔インタビュー!

ダンサーの大貫勇輔さんを筆頭に、ジャンルの異なるアーティストが集結し、かつてないコラボレーションを繰り広げる『Clementia クレメンティア~相受け入れること、寛容~』。2014年の初演、2015年の第2回公演に続き、この冬第3回公演の開催が決定! 構成・演出・振付に川崎悦子さんを迎え、各界の第一線で活躍するキャストと共に、新たなステージを創造します。公演に先駆け、大貫勇輔さん、川崎悦子さんのお二人にインタビュー。前回の手応え、そして第3回公演への意気込みをお聞きしました。

この冬第3回公演を迎える『Clementia クレメンティア~相受け入れること、寛容~』。今回は大貫勇輔さんをはじめ、歌手の田代万里生さん、人形舞のホリ・ヒロシさん、アコーディオン奏者の桑山哲也さん、三味線プレーヤーの浅野祥さん、ジャズピアニストのクリヤ・マコトさんが出演します。実にバラエティ豊かな顔ぶれですが、これだけ異ジャンルのアーティストたちをどのように束ね、ひとつのステージに集約していくのでしょう?

川崎>クリエイションとしては、まず台本を書くところから始めます。これは『クレメンティア』に限らず、台詞があってもなくてもいつもそう。たいていの場合あて書きで、そこからイメージしたものにキャストの力をお借りしてつくり上げていく感じです。

大貫>前回僕は『桃太郎』の犬役でした。自分でも犬っぽいなと思います(笑)。悦子先生って人のことを見抜く力がズバ抜けてすごいんですよね。だからいただいた台本を読んでいると、“この人はこういう感じで……”とイメージできるんです。今回の台本も、最初の5行からして何気ない会話がもう面白い。

川崎>役者部門の田代さんと勇輔くんは、二人でセッションしながら面白いものを見つけていくという作業になると思います。身体性に関しては勇輔くんが背負う部分がより多くなり、そして田代さんの歌という言葉がお客さまのところに届くことでより演劇性が強くなってくるでしょう。音楽に関しては、ミュージシャンの方々に“だいたいこんなイメージの曲で”とお願いをしています。オリジナルと既存の曲は半々くらい。ただそれも最終的に全部オリジナルになるかもしれないし、やってみないとわからない部分はありますね。

ほとんどの方がご一緒するのは初めてですが、ホリさんだけは例外で、彼とは15年くらい前に何度かお仕事させていただいたことがあります。ホリさんの操る人形は本当に美しくて、圧倒的な存在感がある。お人形は女性役ですが、170㎝くらいあるので等身大以上でしょうか。もしあのお人形が舞台で絡んでくれたらきっと豪華になるだろうなと思い、私の方から彼に出演してもらえないかとお願いしました。ホリさんはある種のイメージ、舞台の核となる象徴的な存在として考えています。勇輔くんとホリさんの絡みもあります。だけど私以外のみなさんは、ホリさんのお人形がどう動くかまだ知らないんですよね。

大貫>人形と踊るのはもちろん初めての体験です。僕も映像では観たことがあるけど、実際に拝見したことはまだなくて。今回ダンサーは僕だけなので、舞台の上で一緒に動く可能性はあるだろうなと思ってはいましたけど、僕自身もどうなるかイメージできていないというのが正直な気持ちです。ただ映像を観ていても、ものすごい美しさは伝わってきましたね。

 

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

 

そもそもお二人はいつからのお付き合いなのでしょう。

大貫>悦子先生が『マシュー・ボーンのドリアン・グレイ』を観に来てくださって、そのときご挨拶させていただいたのが初めての出会いでした。

川崎>大貫勇輔というすごいダンサーがいるというのはずい分前から噂になっていたし、私もお名前だけは何度も耳にしていたんですけど、なかなか実際に舞台を観る機会がなくて。『マシュー・ボーンのドリアン・グレイ』で初めて勇輔くんを観たとき、“あぁ、日本人にもこういう大陸的な踊りをする人が出てきたんだな”と驚きました。ダンスも上手いし、マスクも良くて、いろいろな意味で整ってる。本当に全部を兼ね備えている人がいるんだということに大きな衝撃を受けたんです。ただ私はどちらかというと小劇場寄りの舞台作品を手がけることが多いので、そのときはまさか自分が振り付ける舞台でご一緒するとは思っていませんでしたけど。

大貫>『霧矢大夢コンサート「The Gentle woman」』で初めてご一緒させていただいたんですが、悦子先生とお仕事をして、ものすごく丁寧で頭のいい方だなと思いました。とにかく作業が早いんです。それでいて、ヒントが欲しいなと思っているとぽんと何か言ってくれる。あれが3年前ですけど、当初からずっと悦子先生の舞台は早くて丁寧につくられている印象があります。

川崎>霧矢さんという宝塚歌劇団のトップだった方が私のレッスンに来ていたことがあり、彼女がリサイタルを開催するときに振付のオファーをいただいて。そのときゲストダンサーとして勇輔くんに出てもらったんです。あれからまだ3年しか経ってない? すごく長い付き合いのような気がするけど……。

大貫>その後もワークショップでご一緒したり、悦子先生が振付した『ユイット』(2015)に出演させてもらったりと、お仕事する機会が続いたんですよね。

 

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

 

川崎>付き合いもだんだん深くなり、丁度いいタイミングでの『クレメンティア』でした。一緒にお仕事をするうちに、勇輔くんとは感覚的にすごくわかりあえる、近いものがあるのに気づいて。それで、いつしか私がアッシーをさせられるようになっていた感じです(笑)。

大貫>いやいや、悦子先生とは家が近くて、“乗っていく?”と言ってくださるので(笑)。

川崎>勇輔くんとは飲みにも行きますし、実際仲はいいんです。彼の方が当然飲みます。ザルです。それにすごくグルメ。おいしいものを沢山知ってます。話題のメインはダンスのこと、あとお芝居や舞台の話をよくしてますね。

大貫>悦子先生は大先輩ではありますけど、すごくフランクかつおおらかに優しく僕のことを包み込んでくれるので、いつも居心地よく過ごさせていただいてます。ただ前回の『クレメンティア』のリハーサルのとき悦子先生のご機嫌を損ねて、帰りの車の中で一度謝ったことがありました。衣裳さんが服をいろいろ持ってきてくださったときに、僕と宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)さんで“この衣裳もうちょっとこうの方がいいな、ああの方がいいな”と演出家の話も聞かずに言い合っていたら、ぴりっとする空気を感じて。“あ、これはまずいぞ”と……。

川崎>そういう部分の察知能力はすごいよね。まぁ、可愛い話ですけど(笑)。

 

 

 

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