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『Clementia』川崎悦子×大貫勇輔インタビュー!

ダンサーの大貫勇輔さんを筆頭に、ジャンルの異なるアーティストが集結し、かつてないコラボレーションを繰り広げる『Clementia クレメンティア~相受け入れること、寛容~』。2014年の初演、2015年の第2回公演に続き、この冬第3回公演の開催が決定! 構成・演出・振付に川崎悦子さんを迎え、各界の第一線で活躍するキャストと共に、新たなステージを創造します。公演に先駆け、大貫勇輔さん、川崎悦子さんのお二人にインタビュー。前回の手応え、そして第3回公演への意気込みをお聞きしました。

真っ暗闇の中のスタートから、“これはイケる!”という光が見えてきた瞬間とは?

川崎>私もこれまで相当いろいろなシチュエーションの現場で仕事をしてきているので、落としどころはあるだろうなという想いはどこかでずっと抱いていたんです。あとはみんなが本気を出してくれさえすればいい。ただ本気を出すメンタルに持っていくまでが大変でした。ここでこの人がこれをちゃんとやってくれたらお客さまは絶対に楽しいだろうなというのが見えてはいたけど、彼らが動かないことにはどうにもならない。台本にしても誰が読んでも面白いお話という訳ではなくて、その人がやるから面白くなるという内容なので、そこに彼らを持っていくまでがひと苦労でした。

例えば蜷川幸雄先生や小池修一郎先生のような大演出家先生だったら、みんなも“きっとこういうテイストになるんだろうな”とだいたい想像がつくじゃないですか。でも前回はみんな全くイメージできなかったんでしょうね。私としては“責任は取らせていただきます”という心境ではいましたが、それをどれだけ言っても信じてもらえないという部分がありました。でも何がきっかけかわかりませんが、あるときガラッと変わったんですよね。それまではみんな疑ってかかっていたけれど、そこからのエネルギーはすごかった。

大貫>それはやっぱり通し稽古だったと思います。初めて通してみたときに、“うん、イケる!”と思える何かきっかけがあったような気がするし、不安がなくなった瞬間が確かにありました。 “これは僕たちダンサーや演者が頑張る問題なんだ”とどこかで感じたのかもしれません。後半のスパートは本当にすごかったですね。

ダンス作品ってそもそも台本というものがないから、ひとつひとつ振付ができ、磨き上げられて通したときに初めて景色が見えてくるじゃないですか。だけど前回の『クレメンティア』は僕にとって久しぶりに関わるダンスの現場で、しばらく台本や筋書きが目に見えてわかる現場にいたから勝手の違いもあったし、そういう意味でも余計に不安だった気がします。ただやっていくうちに“そうか、ダンス公演って本来こういうものだったな”と気付いたのを覚えています。

 

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

ダンスあり、芝居あり、歌あり、笑いありと、多彩な要素とスピーディ展開で飽きることなく楽しませる。そのアイデアはどこから沸いてくるのでしょう?

川崎>私たちの先輩にあたる大人たちがものすごくエネルギッシュで、“あんな大人になりたい”“あれを超えたい”と思いながら若い時を過ごしてきました。当時は全てを壊すところから始まっていて、学生運動をしていた人たちが新劇ではないアンチの演劇を始めたり、ミュージカルのアンチをつくるようなことをしていたんです。その様子をずっと見てきたので、吸収したものがいっぱいあったし、実際現場でも役立っていると思います。彼らの影響をものすごく受けていて、いつの間にか自分も“人は何を面白いと思うんだろう”とか、“人は何に感動するんだろう”ということを自然と考えるようになっていた。その感覚が世の中とズレてしまったら終わりでしょうけど、まだ喜んでくださる方がいるのならつくらせてもらいたいなと思います。

大貫>人が感動する本質的なものって、たぶんあまり変わらないと思うんですよね。流行はあったとしても、基本的なものは全然変わらない。悦子先生がつくった昔の作品なんて、今観ても本当に面白いし、ものすごく新鮮なんです。いつの時代も面白いとされるものはやっぱり変わらないんだなって感じます。

川崎>何にでも興味があるし、きっと人が好きなんです。人が動いている姿を見ているのが好き、人間観察が好きなんだと思う。“大貫勇輔という人がこんな風に動いたらこんな驚きがあった”とか、そうしたものを探すのが好き。面白い球を投げてくれる人と常にキャッチボールをしていたい。ただ今回は初めての方たちが多いので、投げた球をどのくらい返してくれるかわからない。逆に言えばワクワクしてるけど、楽しみ方がまだわからないというのが正直な気持ちでもあります。

 

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

(C)ホリプロ、撮影:渡部孝弘

 

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