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大貫勇輔『メリー・ポピンズ』インタビュー!

この春日本上陸を迎える大型ミュージカル『メリー・ポピンズ』に、メインキャストのひとり・バート役で出演する大貫勇輔さん。開幕に先駆け、大貫さんにインタビュー。長期に渡ったオーディションと、リハーサルの様子、作品への意気込みをお聞きしました。

ダンスシーンはマシュー・ボーンが振付を手がけています。以前『マシュー・ボーンのドリアン・グレイ』に主演されたこともあり、マシューの動きには馴染みがあるのでは?

大貫>最初に振付をもらったとき、“あ、マシューっぽいな”と感じました。マシューの『白鳥の湖』で見たような腕の動きが出てきたり、独特のニュアンスの動きがあって、踊りなんだけどどこか芝居的でもある。ちょっと懐かしかったですね。

踊りだけではなく、踊りながら歌わなければいけないし、芝居もしなければならないから、このふたつを意識すると途端に踊れなくなってしまったりもする。セリフと感情と動きの3つが一致しないと踊れないので、バランスを取るのが大変です。動きは完全に身体に入って、動きながら芝居をして、音程も意識して、歌の中の表現もできてーーと全てクリアしなければいけない。なのでマシューの動きに馴染みはあっても、踊りやすいという感覚はないですね。

踊りだけをみせるシーンというのはなくて、『Step In Time』にしてもタップを踏みながら芝居をしてるし、だいたい芝居や歌がミックスされています。歌だけのシーンはあります。冒頭のシーンもそうで、バートが煙突から顔を出して歌う場面から物語が始まります。

 

大貫勇輔

 

なかでもバートの一番の見せ場といえば?

大貫>間違いなく『Step In Time』ですね。これは大きな見せ場だと思います。もともと原作には一章、二章、三章とそれぞれの章に教訓が込められていて、ミュージカル化するときもそのシステムを取り入れようということで、一場面ごとに気づきがあるようになっています。

バートはナレーターとして章と章を橋渡しする、繋いでいく役なので、シーンをがらっと変えつつも自身は主張しすぎてはいけない。話の道筋を残しつつ、いかにシーンを転換していくか。印象に残しながら、印象に残りすぎないようにする必要がある。お客さん側と舞台の上を行き来できる唯一の存在を上手く表現できたらと思っています。一幕の冒頭もバートの歌がまずあるし、一幕の最後もバートのシーンで終わる。本を開ける作業と閉じる作業を僕がする。そこが見せ場でもあると思います。

シーンを引っ張っていく存在なので非常にエネルギーが必要です。ただ演じていて、すごく自分に合っているなというのは感じています。ムリしなくていいというか、自然とバートに入ることができる。バートってとにかく明るいキャラクターなんですよね。僕自身子供が好きだし、基本的に明るくいたいと思っているし、バートとはすごく近いものを感じます。

 

メリー・ポピンズ

(C)Disney/CML  Photo: Johan Persson

 

ミュージカルに意欲を持ったのはいつからですか? やはりクリフ役に大抜擢された『キャバレー』(2012年)がきっかけでしょうか。

大貫>正直、『キャバレー』の頃のことはあまりよく覚えていないんです。あのときはあのときで、精一杯やっていたんですけど……。覚えているのは、膝をケガしたことと、舞台稽古の最中に演出の小池修一郎先生に呼び出されてロビーで芝居の稽古をマンツーマンで受けたことと。大変だったということしか覚えてない。当時は右も左もわからなかったし、何が正解で何が間違っているのかもわからなかったです。

ミュージカルにもっと力を入れていきたいという気持ちになったのは、『ロミオ&ジュリエット』のあたりから。でもそれが実際にできる環境になったらやはりすごく大変で、またすぐにミュージカルに出たいという気にはならなくて。いつかミュージカルがきちんとできるようになれたらーーと、どこかで思ってるくらいだった。

その後ぽつぽつと舞台で歌を歌わせていただく機会をもらったり、そこで上手な人の歌を聴いて“こんな風に歌えたらな”と思ったり、レッスンや舞台を通して少しずつ“歌えるようになってきたな”という手応えを感じはじめて、想いがちょっとずつ大きくなっていったというか。

僕の中で大きな変化があったのは、『ビリーエリオット~リトルダンサー~』のとき。ビリー役の子供たちの成長と進化を一番近くで見ていて、“子供でできるんだから自分もがんばらないとダメだ”と思った。彼らは本当に変わりました。歌のレベルも日を重ねるごとにぐんぐん上がっていったし、いろいろ考えて取り組んでいるのがそばで見ていて伝わってきた。彼らは当時小5〜中3でしたけど、本当にあの成長はすごかったですね。彼らの存在が僕の背中を押してくれた。ビリーたちを想うと、“負けていられない、頑張らないといけない、僕もやればできるんだ”って思えます。

ただ本気でミュージカルをがんばっていこうと考えはじめたのは、この作品に出演することになってから。バート役が決まってからだと思います。

 

大貫勇輔

製作発表

 

 

 

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