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川村美紀子 ダンサーズ・ヒストリー

16歳でダンスをはじめ、大学生のとき発表した処女作でダンスコンペティションの最優秀新人賞を受賞。コンテンポラリー・ダンス界の新星として一躍注目を集めた川村美紀子さん。しかし彼女の活動はダンス・シーンに留まることなくーー。ダンス界の異端児、川村美紀子さんのダンサーズ・ヒストリー。

下町生まれ、下町育ち。

生まれは柴又。帝釈天の近くです。両親が共働きで公務員家庭だったということもあり、家の中でずっとひとりで遊んでいるような子供だったみたいです。ただ私自身は小さい頃の記憶がごっそりなくて、それも親から聞いた限りの話なんですけど。

 

川村美紀子

 

1歳か2歳違いの弟がいますが、一緒に遊んだ記憶がほとんどなくて、ずいぶん長いこと口もきいていませんでした。むしろ今の方が仲良くて、たまに飲みに行ったりしています。弟は会社に勤めるサラリーマンで、私とは違って真っ当な人生を送ってる。彼の結婚式ではギャラをもらって踊らせてもらいました

小さい頃はたくさん習い事をしていて、毎日のように何かしら稽古事に通ってました。ピアノ、書道、水泳、バスケ、塾といろいろやったけど、ダンスを習ったことはなかったですね。どれも自分からやりたいと言ったみたいです。ピアノと書道が一番長く続いて、15年くらい習っていました。母が“辞めるときは自分で先生に辞めますと言いなさい”という教育方針だったので、なかなか辞めにくかったというのもあったかもしれません。

 

川村美紀子

 

中学から私立の女子校に通っています。公立の中学校が家のすぐ目の前にあったけど、下町でヤンキーが多いという噂を聞いて、親に泣きついて中高大の一貫校に進学しました。ただ大学はそこには行かず、外部受験で日本女子体育大学(舞踊学専攻)に進んでいます。

校則の厳しい学校で、校長先生が朝礼で“人生は勝ち組か負け組かです!”と長々と演説しては、みんなが貧血でばたばた倒れていたのを覚えています。今では変わっていると思うけど、私の在学中は学園がちょうどそういう雰囲気の時期だったんでしょうね。このまま立ち続けて校長の演説を聞くか、仮病で倒れて満員の保健室に行くか。“どっちが勝ち組なの? 教えて、校長先生!”と思いながら立ち続けてました。

学校は厳しかったけど、勉強ができれば文句は言われないという風潮だったので、がんばって勉強して何も言われない環境を勝ち取りました。その一方で裏サイトをつくっては、先輩や後輩のことをあれこれリークしてみたり……。善悪の判別もつかずにやってましたけど、悪いことなんですよね、きっと。

 

川村美紀子

中学時代

 

創作ダンス部でダンスをはじめる。

高校は服飾系で、洋裁に加えて、浴衣など和装も教わっています。今でも暇があれば編み物をしたりと、何かしらつくることは好きですね。

高校一年のとき創作ダンス部に入部して、16歳でダンスをはじました。自分でも未だになぜダンス部だったのかわからないんですけど。何でなんでしょう。“これだ!”と思ったんでしょうね、たぶん。

 

川村美紀子

高校時代

 

ダンス部ではヒップホップを踊ったり、扇子を持って学園に伝わる謎の日本舞踊を踊ったり、体育祭でチアリーディングまがいなことをやっては、ボンボンをひたすら割いたこともありました。私は部員兼マネージャーで、型紙から衣裳をつくったり、部員の子たちを連れて路上で踊ったりしてました。自分が前面に出て踊るというより、どちらかというと支える側だったと思います。

 

川村美紀子

高校ダンス部

顧問の先生に誘われクラブデビュー。

クラブに初めて行ったのもその頃で、ダンス部の顧問の先生に連れて行ってもらいました。若い先生で年が近かったということもあって、彼女とはプライベートでも仲良くしていて、よくお好み焼きを食べに行ったりしていましたね。

最初は先生と一緒だったけど、だんだんひとりでもクラブに行くようになりました。大学がAO入試で早い段階で終わってしまったので、高校も終わりくらいになると月に14回くらい通ってて、ときにはイベントをハシゴするようなこともありました。何が楽しかったのか、気付けばそこにいるという感じです。クラブって、いわゆるダンサーは来ないんですよね。だから、あえて行くというか。部活の中にはダンススクールに通っている子たちもいて、かっちりしたダンスのスタイルも見てたけど、私はどちらかというとクラブや道で踊ってる人の踊りの方がしっくりきた感覚がありました。

 

川村美紀子

クラブ 時代

 

クラブに通っている内に、仲間的な人ができるようになったのも大きかったと思います。学校だけじゃない世界があるのってすごく大切。“これが自分の全てだ!”って思い詰めている人を見ると、“いいんだよ!”って肩を叩きたくなってしまう。私も先生のように外に連れ出してあげたいなって思うんです。

 

川村美紀子

結婚式にて

 

 

 

-コンテンポラリー