ユニバーサル・バレエ プリンシパル カン・ミソン×イ・ドンタク インタビュー!
ロームシアター京都で開催された『京響クロスオーバー「バレエ×オーケストラ」~ニューイヤー・ガラ~』に出演されました。公演を終えた心境をお聞かせください。
ドンタク>とてもいい環境で素晴らしい方々と共に踊る機会に恵まれ、ただただうれしく思っています。何より無事に終わってほっとしています。
ミソン>こんなにすてきな劇場で、素晴らしいオーケストラ演奏で踊るような機会は韓国ではなかなかないので、本当にいい経験になりました。何より日本のお客さまが喜んでくださったことが、私にとってはとてもうれしいことでした。
今回はおふたりでペアを組み、『くるみ割り人形』のグラン・バ・ド・ドゥと中村恩恵演出による『シンデレラ』のアダジオを踊っています。手応えはいかがでしたか?
ミソン>『くるみ割り人形』はユニバーサル・バレエでも毎年11月〜12月にかけて上演している作品で、昨年の年末もやはり踊っています。ただパートナーは違っていて、こうしてドンタクと組むのは久しぶりですね。『シンデレラ』を踊るのはふたりともは今回がはじめて。私自身『シンデレラ』は大好きな作品なので、踊ると決まった時からずっとわくわくしてました。恩恵さんの振付は音楽の流れや動きと動きの繋ぎがすごくスムーズで、とても気持ち良く踊ることができました。
ドンタク>『シンデレラ』という大作を踊ることができ、とても光栄に思っています。今回の公演のために恩恵さんが韓国に来て下さり、昨年の8月に3〜4日、11月に3〜4日の二回に渡って直接指導を受けることができました。また恩恵さんの帰国後も彼女からの注意を踏まえ、日本での公演に向け練習を重ねてきました。恩恵さんには、振付はもちろん動きの基本を含め、いろいろ教えていただきました。とても成長できたと思うし、自分のバレエ人生にとって大きな一歩になりました。
中村恩恵さんの振付はクラシック・バレエの動きに現代の要素も加味されたものでしたが、踊る上で難しさを感じる部分はなかったですか?
ドンタク>古典作品とはまた違った動きに見えますが、求められるのはやはりクラシック・バレエの基本です。例えば左から右に重心を移す振付などは、やはりクラシック・バレエの基本がしっかりしていないと対応できないでしょう。全てクラシック・バレエの基本があっての振付なので、さほど戸惑いを覚えるようなことはなかったように思います。
ミソン>クラシック・バレエには古典的な決まった動きがありますが、それができていないとネオ・クラシックやモダンの動きも踊るのは難しいと思います。そういう意味でも、恩恵さんの作品はクラシックとモダンの両方の楽しみを感じられる作品でした。
公演には中村恩恵さんご自身もダンサーとして出演されていました。彼女の踊りを間近でご覧になった感想をお聞かせください。
ミソン>リハーサル中の恩恵さんはいつも笑顔で接してくださって、とても女性らしくうつくしい方という印象がありました。ただいざ作品に入ると全く違う別人のように感じられましたね。作品に対する集中力、情熱、カリスマ性にとても驚かされると同時に、ダンスの深さというものがすごく伝わってきました。私ももう少し年を重ねたとき、恩恵さんのような深みと雰囲気を持ったダンサーになれたらいいなと思います。
ドンタク>公演の前に恩恵さんから“動きというのは普段の生活習慣や日々の志があらわれるもの。そして劇場というのは神聖なものである。今日が劇場で踊る最後の日になるかもしれない。だからその機会を大切にして欲しい”と言われた言葉がとても印象に残っています。恩恵さんの動きを見ていると、繊細で、切なく、感情がものすごくダイレクトに伝わってくる。それは今回とても刺激になったところです。
おふたりはこれまでもユニバーサル・バレエの公演でたびたび来日されています。来日時の思い出、日本の印象をお聞かせください。
ミソン>昔はほぼ毎年のように日本公演があって、私も毎年のように来日していました。最近は少し間隔が長くなっていますが、それでも2〜3年に一度は来日しています。日本にツアーで来るたびに、長時間かけてあちこち地方へ行きました。日本での楽しみは、車窓からの景色を眺めたり、リハーサルの合間や公演の後などに時間をみつけて街をぶらぶら歩くこと。ソウルはとても賑やかで忙しすぎて、たまに疲れを感じることもありますが、日本の街並は落ち着いていて歩くだけですごく癒されます。
ドンタク>日本の第一印象は、食べ物がすごくおいしいということ。男性ダンサーは食べることが大切な仕事のひとつでもあるので、これはとてもうれしいですね。なかでもお気に入りはすきやき! 今回の来日時にスタッフのみなさんと一緒に食べに行き、とてもおいしくて感動しました。日本は街並もきれいだし、日本の方は礼儀正しく、とても親切に接してくれます。何よりスタッフのみなさんがいろいろ配慮してくださるので、日本での公演はとても踊りやすいですね。むしろ韓国にいるときより調子がいいくらいです(笑)。
ユニバーサル・バレエは1984年に韓国で初の民間バレエ団として設立され、以来ソウルを拠点に各地で公演を行ってきました。現在のカンパニーの活動内容をお聞かせください。
ドンタク>ユニバーサル・バレエの年間公演数は約70〜80回、多いときで100回以上あります。年に一度海外ツアーがあり、それ以外は国内ツアーでいろいろな場所で踊っています。韓国には国立のバレエ団とユニバーサル・バレエのふたつ大きなバレエ団がありますが、これだけ公演数があるのはユニバーサル・バレエだけだと思います。今年は4月に『白鳥の湖』をもってフランスのパリへツアーに行く予定です。下半期のプログラムはまだ正式に決まっていませんが、『沈清(シムチョン)』や『ドン・キホーテ』、『ジゼル』といった人気作品はおそらく上演されるのではないでしょうか。
ミソン>レパートリーが豊富なのもユニバーサル・バレエの魅力大きな魅力で、私がこのバレエ団に長く所属している理由でもあります。カンパニーでは『白鳥の湖』、『ドン・キホーテ』、『ジゼル』などクラシックの大作を年に2〜3回上演していて、そのほか『オネーギン』をはじめとしたネオ・クラシック作品に、韓国の伝統を取り入れた創作バレエ作品もいくつかレパートリーとして持っています。私がよく踊っているのはテクニックを多く必要とされる作品で、例えば『ドン・キホーテ』もそのひとつ。個人的に好きなのは『ロミオとジュリエット』など、ドラマティックな作品です。
ドンタク>韓国の伝統を取り入れた『沈清(シムチョン)』という作品を子供の頃にはじめて観て、“男性のバレエダンサーもあんなにかっこ良く踊れるんだ!”と衝撃を受けました。今でも『沈清(シムチョン)』は自分の中で一番好きな作品です。
おふたりがユニバーサル・バレエに入団した経緯をお聞かせください。
ミソン>ふたりとも仙和芸術高等学校の卒業生です。ここはユニバーサル・バレエの傘下にある学校で、バレエ団のすぐ隣に校舎があり、ユニバーサル・バレエの公演でダンサーが必要なときは学生が出演することもあります。学生時代にカンパニーの公演に参加したり、プロの踊りを間近で見ることができたのはとても大きな経験になりました。仙和芸術高等学校は高校過程までで、卒業後は大学に進学する人もいれば、海外に行く人もいます。
ドンタク>僕は仙和芸術高等学校卒業後、大学(韓国芸術総合学校舞踊院)に進学しています。大学卒業後、オーディションを受けて2011年にユニバーサル・バレエ団に入団しました。ミソンは僕よりもベテランで、一番上の大先輩です(笑)。
ミソン>私は仙和芸術高等学校を卒業後、ワシントンにあるキーロフバレエアカデミーで学びました。その卒業公演を観に来た団長にスカウトされ、ユニバーサル・バレエに入団しました。ただそれはイレギュラーなケースで、ダンサーは基本的にオーディションで採用されます。ユニバーサル・バレエでは海外のダンサーも受け入れていて、実際に外国人ダンサーも在籍しています。外国人の場合はまずビデオ審査があり、そこで一定の評価をされた人はバレエ団のレッスンを一緒に受け、入団の可否が決定します。
韓国を代表するバレエ団でプリンシパルとして踊っていく上で、日々心がけていることは何でしょう。
ミソン>ユニバーサル・バレエに入団して17年目になります。よく周りにも言われることですが、これだけひとつのバレエ団に長く在籍するというのは非常に珍しいケースかもしれません。海外に出て世界的に有名なバレリーナになるというのももちろん素晴らしいことだけど、私は自分の名前を有名にするというよりは、韓国にこういうバレエダンサーがいて、こういうバレエ団があるんだ、ということを少しでもみなさんに伝えられたらと思っています。
ドンタク>財団が掲げているのが“芸術を通して世の中を美しくしよう”というモットーで、私自身その信念を大切に、舞台はもちろん日々の生活を過ごしています。カンパニーは本当に家族のような雰囲気です。自分自身が前に出るというよりは、一緒に踊っている仲間とのチームワークを大事にしたいという気持ちがあります。プリンシパルだとか誰が主役だということではなく、みんなで一緒にいかに良い舞台をつくり上げていけるかを常に考えています。
ユニバーサル・バレエでの活動に加え、今後また日本で踊ってみたいというお気持ちはありますか?
ミソン>ぜひ! いつでも呼んでいただければ光栄です。
ドンタク>日本の舞台で踊りたいという気持ちはすごくあります。もっともっと自分を磨いて準備をしておきますので、また声を掛けていただけたらうれしいです!