金森穣Noism0『愛と精霊の家』インタビュー!
本作はユニットシアン(金森穣と井関佐和子によるプライベートユニット)で2012年に発表した『シアンの家』を原案にしています。『シアンの家』をNoism0のために再構築するにあたり苦労した点、こだわった部分とは?
金森>今となっては『シアンの家』は『愛と精霊の家』を創造するための準備であった気がします。それほど『愛と精霊の家』の創作は苦労なく、まるで何かに導かれるように進みました。演出振付家として20年の活動の中で、この感覚は数回訪れています。私の振付デビュー作であり、本作品の最後に用いられている『Under the marron tree』の創作もそのひとつでした。
ユニットシアンとNoism0の棲み分け、違いをご自身のなかでどう考えていますか?
金森>ユニットシアンはきわめて個人的なプロジェクトであり、Noism0は日本唯一の公立劇場専属舞踊団の活動の延長上にあります。
ユニットシアンでは“Noismではできないこと”という意味でプライベートな要素も作品に取り入れていました。それらはどうNoism0に反映されていったのでしょう。
金森>私のすべての仕事は、他のすべての仕事に反映されます。しかしそれらがどう互いに影響しあっているかの判断は、私自身ではなく第3者、すなわち観客の方々によるものだと思います。私はただ、さまざまな仕事を通し、舞台芸術をより深く理解したい、ひいては人間とは何かを問い続けているだけです。
リクリエイションにあたり、具体的にどういった作業を行いましたか?
金森>『シアンの家』においてすでにあった4つのシーンに始まりとつなぎ、そして終わりを与えました。しかしそれらは一貫した時間的流れ、明確な物語にしたということではなく、愛と死における不条理をより際立たせる作業でした。それは作中用いられているイヨネスコの「椅子」という戯曲の抜粋においても言えることです。不条理な展開は観客の想像力を刺激し、唯一無二の物語を観客の心に生み出します。
何か具体的なストーリーは背景にあるのでしょうか。
金森>『愛と精霊の家』というタイトルはイザベル・アジェンデの素晴らしい小説と同じですが、物語の展開に具体的なつながりはありません。ただし、20歳の私がこの小説を原作とした映画に非常に魅了されたことは事実であり、当時の私が『Under the marron tree』を創作したこととも符合しています。ですから、40歳になった私が『愛と精霊の家』という作品を発表することは、20歳の時にすでに決まっていたのかもしれません。