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首藤康之×丸山和彰(CAVA)『レニングラード・ホテル』インタビュー!

ダンサーの首藤康之さんとパントマイム集団CAVAの丸山和彰さんのタッグにより、この夏初演を迎える『レニングラード・ホテル』。バレエとマイムという異なる出自を持つおふたりがひとつの舞台に集い、新たな世界を創造します。開幕を前に、リハーサル中の首藤さんと丸山さんのおふたりにインタビュー。舞台の発端とクリエイションの様子、作品への想いをお聞きしました。

丸山さんのクリエイション法とは? パントマイムの動きというのはどのようにつくられていくのでしょう。

丸山>こればかりは本当に方法論がなくて、説明のしようがないというか……。ひとつヒントになるのは楽曲で、尺が4分あるとしたら、その中でどこまで描けるだろうかと考えます。描き方にしても、ここはダンスに寄った方がいいのか、演劇的な描き方がいいのかと探っていく。そこから“この人物がこのシチュエーションにいたらこういう動きができるのでは”と想定して、まずそれをキャストに動いてもらうところからはじめます。

みんなの様子を見て、これはもう少し演劇的な感じにした方がいいなとか、このモチーフは動きに転化できそうだなとか、ひとつひとつまず素材を決めていく。お米があって、お魚があって、バターがあって、それを合体させたらピラフになった、という感じでしょうか。すごくわがままなつくり方で、キャストには申し訳ないんですけど、その場でいろいろ試しつつ少しずつ形にしています。

首藤>僕としては試したものを使っても使わなくてもいい、そのプロセスが楽しいんです。バレエはすべきことが決まっているし、コンテンポラリーも振付家に言われた動きがまずそこにある。だけどマイムの場合は違って、一日1分できればいいというレベル。すごく苦労しますけど、その苦労が醍醐味でもある。丸山さんが書いてくれた台本があり、その言葉が動きに変わっていく瞬間を少しずつ楽しんでいます。

試作に時間をしっかりかけて、稽古にこれだけ費やせるのは贅沢だと思う。丸山さんとの創作は非常にいい時間だし、自分自身が成長できている感覚がすごくある。最近は丸山さんもバレエに詳しくなってきて、“ここでアラベスク”とパの名前で言われたりする。『空白に落ちた男』のときにはなかった言語が出てきたりして、なかなか面白いですよ(笑)。

 

『空白に落ちた男』(C)青木司

『空白に落ちた男』(C)青木司

 

互いの身体性の違い、異なるジャンルが出会うことで改めて気づいたことはありますか?

丸山>僕はやはりパントマイムの人間なので、パントマイム的なものが基本になってムーブメントが生まれます。パントマイムはリアクションの芸術と言われていて、反応があってはじめて動き出す。反応があるからアクションがあり、それを循環させる身体表現というのがもとにあります。

たとえば何か飲みたいとする。飲む行為にしても何で飲むのか考えていくと、どういう動きをするか選択肢が別れてくる。パントマイムでは動くための理由や動機が必要になるんです。ある意味頭でっかちで遠回りしている感があるけれど、ダンサーの場合は動物的にわっと身体本来の魅力を直感的に出してくる。そういう感覚は自分の中にはないのですごく刺激的で、身体と神経の経路は直結しているんだなと感じることが多いし、そこはやはり身体表現の魅力だなと思います。

首藤>自分の本流とは違う舞台をやるときって、僕としてはできれば自分の基本と違うこと、今回の舞台でいえばすごくパントマイムがやりたいんです。この前なんて丸山さんにパントマイムを教えてくれと言って、それだけで一日終わっちゃいました。ほとんどワークショップみたいな感じ(笑)。僕もそこで筋肉痛になったりもしますし、やっぱりお互いできることとできないところが違うんですよね。でも違う身体がパントマイムをやると、丸山さんも新たな発見があるみたい。僕も『ドン・キホーテ』で彼らにバレエ的なステップを与えたとき、あきらかに本流の人がやるのとは違った形のものが出てきて、“バレエって面白い!”って改めて思えるんです。

丸山>空を飛ぶために鳥の羽根が進化しているように、首藤さんはバレエを踊るためにすごく進化してるように僕には見えて……。パントマイムの定義ってあってないようなものだから、ある意味すごく難しい。たとえばCAVAのメンバーの藤代博之は愛嬌があってちょこちょこ動くような感じが似合う、チャップリン的なタイプ。僕が参考にしているのはまた違って、フランスのジャック・タチさん。映画『ぼくの伯父さん』に出ているクラウンで、フランスのチャップリンと言われている人です。背が高くてのぼっとしていて、僕の個性に合っているのではと思ったりする。パントマイムってモデルケースがあってそこにはまっていくというよりは、自分に何ができるのかという話なので、パントマイムの身体とはどういうものなんだろうと改めて考えさせられています。

 

SWITCH 30th Anniversary 文学への新しい冒険 チャイコフスキー『くるみ割り人形』(C) 大河内貞   

SWITCH 30th Anniversary 文学への新しい冒険 チャイコフスキー『くるみ割り人形』(C) 大河内貞

 

 

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