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首藤康之×丸山和彰(CAVA)『レニングラード・ホテル』インタビュー!

ダンサーの首藤康之さんとパントマイム集団CAVAの丸山和彰さんのタッグにより、この夏初演を迎える『レニングラード・ホテル』。バレエとマイムという異なる出自を持つおふたりがひとつの舞台に集い、新たな世界を創造します。開幕を前に、リハーサル中の首藤さんと丸山さんのおふたりにインタビュー。舞台の発端とクリエイションの様子、作品への想いをお聞きしました。

おふたりは2008年の小野寺修二振付作『空白に落ちた男』で初共演されています。当時の印象、思い出をお聞かせ下さい。

首藤>丸山さんは小野寺修二さんが主宰するカンパニーデラシネラのメンバー・藤田桃子さんのご推薦だったんですよね。あのときは僕と小野寺修二さん、藤田さん、ダンサーの梶原暁子さんがまずキャストに決まっていて、もうひとり男性が欲しいとなったとき、藤田さんが“すごくいい男の子がいる!”と連れてきたのが丸山さん。丸山さんとは初対面でしたけど、“背の高い人だな”というのが第一印象でした。

丸山>時期は重なってはいませんが、もともと小野寺さんと藤田さんが通っていた日本マイム研究所で僕も習っていたことがあって、おふたりは僕の先輩にあたります。あるときCAVAの公演を藤田さんが観に来てくださり、それが縁で一度短い作品に出演させていただきました。『空白に落ちた男』で首藤さんと初めてご一緒しましたが、あの稽古はとにかく長くて、かなり密な時間を過ごしましたよね。本番は冬でしたけど、初めてましてのころはまだ暑かった記憶があります(笑)。

 

『空白に落ちた男』(C)青木司

『空白に落ちた男』(C)青木司

 

首藤>あの作品はすごく丁寧につくっていて、半年くらい稽古をしていたんじゃないでしょうか。本番は2008年の1月でしたけど、稽古がはじまったのは2007年の夏。全53公演で、フィジカルシアターでこの公演数というのは後にも先にもないし、今では考えられないですよね。

『空白に落ちた男』をきっかけに僕もフィジカルシアターに興味が出てきて、CAVAのパフォーマンスをたびたび観させてもらってたんです。丸山さんとはいつかご一緒したいと思いつつタイミングがなくて、2014年の雑誌SWITCHの30周年記念公演『くるみ割り人形』でようやく願いが叶いました。その後、僕が演出したバレエ『ドン・キホーテ』と『コッペリア』でご一緒させていただきました。『くるみ割り人形』のときは丸山さんが演出で、とてもいい台本を書いてくださいましたよね。

丸山>普段は音楽と動きと道具でパフォーマンスの世界を構築していますが、あのときは朗読もあったので、言葉をどう入れたものかすごく悩みました。フィジカル的な要素としては、『くるみ割り人形』という古典演目だけに、バレエの身体性が必要になる。初めてのことだらけで、終わった後はしばし寝込んでしまいました(笑)。

首藤>古典は特にチャイコフスキーの曲だけでもすごく強いものがあるから、やはりそこが大きな壁だったと思います。丸山さんが悩んでいるのを見ていると、僕もすぐ口を出したくなっちゃって。僕自身これまでいろいろなバージョンの『くるみ割り人形』を踊ってきたので、その知識の中で古典バレエのお話をさせていただきました。

丸山>恥ずかしながらそれまで古典バレエというものをほとんど観たことがなくて、『くるみ割り人形』についてもあまりよく知りませんでした。普段観ているのはパントマイムの中でもわりと小規模な作品が多くて、パントマイムやサーカス的なテクニックを持った人たちがつくるフィジカルシアターやヌーボーシルクとカテゴライズされる実験的な新しい舞台にばかり足を運んでいたんです。だけど首藤さんから古典のDVDを借りて観たら、これが面白いんですよね。さらに首藤さんの解説を聞いていると、同じ『くるみ割り人形』でも版によってこんなにも違うんだということがわかって。自分も歳を取ってくると古典的なものもいいものだなと感じるようになり、やはり古典には普遍性があるんだなと思えてきた。首藤さんにいろいろ伝授してもらって、すっかりハマってしまいました(笑)。

首藤>『くるみ割り人形』をきっかけにいろいろ興味を持って、アレッサンドラ・フェリの『ロミオとジュリエット』も観たりしていましたよね。その頃は芝居を観るよりよほどバレエの方が面白いと言ってたけれど、古典は何百年も残っている訳だし、やはりきれいなものはみんな惹かれるんだなと改めて僕も感じました。

 

SWITCH 30th Anniversary 文学への新しい冒険 チャイコフスキー『くるみ割り人形』(C) 大河内貞   

SWITCH 30th Anniversary 文学への新しい冒険 チャイコフスキー『くるみ割り人形』(C) 大河内貞

 

2015年に大分で上演された『ドン・キホーテ』では、首藤さんが演出・振付を手がけ、丸山さんはドン・キホーテ役で出演されています。

首藤>バレエの『ドン・キホーテ』って、たいていキトリとバジルにばかり光があたる物語になっているじゃないですか。僕もフリーランスになっていろいろな仕事をしてきたけれど、演劇性というのはすごく重要だなと感じるようになって、ドン・キホーテやサンチョ・パンサといったキャラクターをもう少し前面に押し出してもいいんじゃないかと考えていたんです。ただバレエの場合はまずテクニックがあり、様式美が付いてくるのでリアリティを追求するということが難しいし、なかなか演技まで到達しない。どうかするとストーリーがおろそかになりがちなので、僕はダンサーの演技というものを疑っている部分があって、できれば違うジャンルの方にしたいと思っていたんです。

誰がいいかと考えていたら、CAVAは男性が4人いて、ドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ガマーシュ、ロレンツォと、『ドン・キホーテ』のキャラクターにぴたりと一致する。これはもうCAVAしかないだろうと丸山さんに緊張しつつオファーをしたら、快く受けてくださって。僕は振付家ではないので、いろいろ慣れないこともあったと思います。ただ自分で言うのもなんですけど、CAVA の4人に助けていただきながら、なかなか面白いものができましたね。

丸山>演出家としての首藤さんは本当に頼り甲斐満点でした。ご自身が舞台に立つ方なので、出演する人間の不安や心情がよくわかっているし、キャストに対するケアが素晴らしくて。リハーサルで自分の演技について“今のはどうだったんだろう?”と思っていると、“今こう感じていたよね、その方向性は間違ってないだろうから、もう少しその線を追ってみよう”と、的確なアドバイスをしてくださる。“ああ、そこをちゃんとわかってくれているのか”という感じで、非常に信頼できるんです。

首藤>たぶん演技の好みが一緒なんだと思います。バレエダンサーの表現と丸山さんたちの表現は間の取り方にしても全く違う。僕はどちらかというと丸山さんのスタイルの方が好みなんです。それに丸山さんたちがダンサーの中に入ることで、お互い刺激になっていたと思います。

丸山>僕たちもカルチャーショックでしたけど、ダンサーのみなさんも“あの人たちは何をやっているんだろう?”という感じでこちらをちらちら見たりして、すごく面白かったですね。

首藤>ダンサーもすごく影響を及ぼされていたし、またダンサーから丸山さんたちが影響を受けることもあったと思います。みんなCAVAとのセッションをすごく楽しんでくれていたようです。そういった意味で、別の風をふっと入れると、新たな空気が生まれるんだなという発見がありました。

 

『ドン・キホーテ』

『ドン・キホーテ』

 

 

 

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