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谷桃子バレエ団新芸術監督 高部尚子インタビュー!

谷桃子バレエ団の新芸術監督に、同団プリマの高部尚子さんが就任! 芸術監督就任第一弾公演として、この夏『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』を上演します。開幕に先駆け、高部さんに芸術監督就任の想いと公演への意気込み、今後の展望をお聞きしました。

この夏三人の振付家を招き、『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』を上演します。芸術監督就任第一作としては挑戦的な取り組みですね。

高部>谷桃子バレエ団ではこれまで古典の全幕を主体としつつ、創作も積極的にレパートリーに加えてきました。というのも、谷先生が昔から創作に積極的で、バレエ団の中に振付家をつくっていこう、同時に外部の作品もどんどん上演しましょうという考えをお持ちの方だったので、他のバレエ団に比べると創作公演には力を入れてきた方だと思います。外部の振付家をお招きする機会も多く、これまでも木佐貫邦子先生、島崎徹先生、後藤早知子先生、主人の坂本登喜彦などの作品を上演しています。

今回の『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』は、三人とも外部の振付家です。これまでもコンテンポラリー作品を上演することはありましたが、今回は三人ともがちがちのコンテンポラリーで、かつ三人とも外部からのゲストというのは初めてのこと。バレエ団として、新たな一歩になればと考えています。

今は世界的にみても、クラシックのダンサーもある程度コンテンポラリーを踊る時代になっていますよね。パリ・オペラ座バレエ団でも、古典を上演しながらピナ・バウシュ作品をレパートリーに加えていたりする。私たちもやはり、古典はもちろんコンテンポラリー作品も踊っていきたいという気持ちがあって、今回はトリプルビルでいこうと決めました。あと将来的には海外へ持っていくことも視野に入れ、バレエ団の新たなレパートリーとして育てていけたらと考えています。

 

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

 

柳本雅寛さん、島地保武さん、広崎うらんさんと、個性的な振付家がそろいました。この三人に振付を託した理由とは?

高部>柳本さんはもともと研究所の方でお世話になっていたという縁がありました。谷桃子バレエ団の研究所は4年前にシステムが変わり、クラシックのクラスだけだったのが、コンテンポラリー、パ・ド・ドゥ、解剖学も取り入れるようになりました。コンテンポラリーのクラスを教えているのが、うちのバレエ団の出身者でありコンテンポラリーダンサーの黒田育世さん。柳本さんは彼女のピンチヒッターとしてたびたびお世話になっていたので面識はあったし、もちろんダンサーとしても本当に素晴らしい。彼が日本に帰ってきたころからいろいろな舞台を観ていますが、日本人離れしたダンサーだなという印象がありました。最近は振付もたくさん手がけていて、できればうちの団員にも振付けてもらえないかとお願いしたら、喜んでお受けいただきました。

島地さんとは奥さまの酒井はなさんを通して知り合いました。私は若いころからはなさんと共演することが多くて、2013年に出演した山梨の国民文化祭でやはりはなさんとご一緒し、そのときステージを観に来ていた島地さんとお話しさせていただきました。もちろん私も島地さんの踊りや作品は観たことがあったので、機会があったらいつか島地さんの作品をうちのバレエ団で上演したいとお願いしていて、ようやくそれが実現した形です。

 

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

 

唯一面識がなかったのが広崎さん。彼女は制作スタッフからの推薦でしたが、友人たちが彼女の作品に出演しているので噂は聞いていましたし、私も映像で彼女の作品をいろいろ観て、これだったら面白いものができるのではと確信が持てました。ミュージカルや蜷川幸雄作品など演劇の舞台も多く手がけているので、ちょっと変わった方面からのアプローチがあったりと、また違うことができるのではという期待もあります。島地さんと柳本さんはこういう作品を提案してくれるんじゃないかと何となくイメージができたけど、彼女の場合は全く想像がつかない。いい意味で一番うちのバレエ団的ではない人かもしれなくて、だからこそチャレンジしてみたいと考えました。三者三様できっと賛否両論があるだろうなという予感はしていて、どきどきしています。だけど、やっぱりどんなこともやってみないとわからないですよね。

去年の暮れに三人にバレエ団へ来ていただき、ワークショップ形式で団内オーディションを行いました。プリンシパルだとか肩書きは全く関係なく、私も含めてみんな胸に番号を付けて受けました。なので、今回出演するメンバーはそれぞれの振付家に選ばれたダンサーです。島地さんと柳本さんのふたりが選んだのは、若くてよく動けるダンサー。広崎さんの場合は年齢の高いシニアプリンシパルを使いたいというご希望があったので、かなり限定されたなかでのキャスティングでした。ただシニアプリンシパル以外はオーディションで選ばれています。

贅沢なことに島地さんのアシスタントにはなさんと高比良洋さんがついていて、おふたりから手取り足取り教えてもらえるということで、メンバーにとっては最高の時間になっています。柳本さんはエネルギッシュな方で、リハーサルが終わった後でみんなを飲みに連れて行ったりしています。楽しそうではありますが、リハーサルはすごく厳しいですね。たぶん三人の中で一番厳しいんじゃないでしょうか。

 

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

 

高部さんも広崎作品『pêches ペシュ』にダンサーとして出演されます。

高部>最初は自分が出ることになるとは思っていなくて、いざはじまってみると想像していた以上に動きが多くて今ちょっとひーひー言ってます(笑)。作品的にはマイム的な部分も多く出てきたりと、お芝居の要素がかなり多く盛り込まれています。タイトルの“ペシュ”はフランス語で“桃”という意味で、私が演じるのは“桃”の役。谷先生をイメージされた役です。広崎さんは谷先生にお会いしたことはないけれど、本をいろいろ読んで研究されて、どこか谷先生の面影のようなものが垣間見える作品になっていると思います。

自分自身が踊りながら芸術監督として全体をみるという作業はやはり大変です。全体を通して何か一貫したものを出していきたいので、この作品だけでなく他の作品もみながら進行しています。ただ作品をつくるのは三人なので、そこは私が口出しすることなく完全にお任せしています。

 

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

『コンテンポラリーダンス・トリプルビル』リハーサル

 

 

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