Kバレエカンパニー矢内千夏インタビュー!
11月公演『ラ・バヤデール』で、主演のニキヤを踊ります。全幕作品での主演は今年5月の『白鳥の湖』に続き二度目ですね。ニキヤ役に選ばれたときの心境はいかがでしたか?
矢内>本当にびっくりしました。前回の上演時はまだKバレエスクールにも入っていなかった頃で、いち観客として舞台を観に行きました。浅川紫織さんと遅沢佑介さんが主演の日で、ニキヤが本当に美しくて目が離せなかったのを覚えています。
ニキヤを踊るのは初めてです。リハーサルが始まる前に、まずはDVDなどで動画を片っ端から見ていきました。もともと不器用で、音や振りが身体に入らないと動けないタイプなので、動画を見てイメージを掴み、家で実際に動いてみてからリハーサルに備えるようにしています。パリ・オペラ座バレエやロシア系のバレエ団などいろいろなカンパニーの映像を見たけれど、なかでも印象的だったのは英国ロイヤル・バレエの公演で踊っていたタマラ・ロホのニキヤです。ものすごいテクニックで驚きました。あとはカンパニーの初演のときの資料を見て、振りと音を叩き込んでリハーサルに臨みました。
リハーサルの手応えはいかがですか。
矢内>『白鳥の湖』のときもそうでしたが、今回も荒井祐子さんに教わっています。荒井さんはすごく細かなところまでみてくださいます。一生懸命集中して踊っていても、注意がびしばし飛んでくる。いつもたくさん指摘をしてくださるので本当にありがたいです。カンパニーに入る前から荒井さんの大ファンだったので、その方に教わることができてとてもうれしいし、荒井さんに近づけたらと思っています。
指導の最中“こうしなさい”と言うことはないけれど、“私はこうしてたよ”“こうするとやりやすいよ”というヒントやコツを伝えてくださいます。実際舞台に上がると稽古場とはまた感覚が違うことも多いので、“今からここを気をつけておいた方がいい”というような、踊ったことがある方だから言えるアドバイスをいただきます。
ソロル役はトリプル・ビル『ラプソディ』でもペアを組んだ山本雅也さん。フレッシュなふたりのパートナーシップも見所です。
矢内>山本さんはふたつ年上で、年齢も近いのでいろいろと話しやすいですね。“もっとこうしてほしい”と伝えたり、山本さんも“ここはこうしたらどうだろう”と言ってきたりと、お互い意見を出し合いながら模索している最中です。
私はせっかちでどうかするとあせってしまいがちなのですが、山本さんは逆にあわてないタイプ。音に間に合わないからと私がひとりでどんどん先にいってしまうことがよくあって、お互いのタイミングが上手く重なるようにするのが今の課題です。ふたりがぴたりとくるところまで追求していかなければと思っています。
ニキヤを演じる上で難しいところは?
矢内>やはり表現の部分がすごく難しいですね。表現に関しては『白鳥の湖』でも一番苦労したところです。ただ『白鳥の湖』は物語の中で恋が始まるので話の中で役に自分を重ねていけた部分がありましたけど、ニキヤとソロルははじめからすでに恋仲なので、その関係性を見せるのが難しい。リハーサルがスタートした頃は、“全然恋仲に見えない”と繰り返し注意をされ続けてました。
特に恋敵との関係やどろどろした部分が上手く掴みきれなくて、ニキヤの心情や裏切られた感覚が実感として沸かないので、見よう見まねで仕草を研究してみたり、周りの人にいろいろと話を聞いてみたりと模索しています。最近になってようやく少し掴めてきた感じです。以前はソロルがガムザッティと立ち去ってしまう場面も、“あ、悲しい”くらいの感情しか沸きませんでしたが(笑)、近頃はガムザッティに対する嫉妬心や怒りが表現できるようになってきた気がします。
開幕に向け、意気込みをお聞かせください。
矢内>『ラ・バヤデール』はコール・ド・バレエがすごく大変な作品だなと感じます。特に影の王国のシーンは本当に毎日厳しいリハーサルをしているので、そこで作り上げたものを台無しにしてはいけないし、周りに感謝しながら踊りたいです。私が引っ張るというよりは、みんなに支えてもらってやっと舞台に立つことができるので、むしろ胸を借りている心境です。みんなでつくり上げているんだという想いを励みに、本番まで頑張っていい舞台にしたいと思います。