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堀内元『Ballet for the Future 2016』インタビュー!

セントルイス・バレエ芸術監督の堀内元を中心に、昨夏第一回公演を開催し大好評を博した『Ballet for the Future』。プログラムやキャストもパワーアップし、この夏待望の第二回公演を迎えます。開幕に先駆け、公演の芸術監督を務める堀内元さんにインタビュー! 舞台への想いをお聞きしました。

昨年第一回開催を迎えた『Ballet for the Future』。堀内さんを筆頭に国内外のダンサーが集結し、大きな話題を集めました。

堀内>もともと兵庫県立芸術文化センターで『堀内元バレエUSA』という公演を開催していて、毎年夏に帰国しては5年間にわたり続けていました。僕がセントルイス・バレエで上演している作品を持ってきて、日本のダンサーたちに踊ってもらうという企画です。それを東京でも開催できないかという気持ちがずっとあり、去年『Ballet for the Future』として東京で開催することができました。ただできれば一回限りではなく、一年に一回でも二年に一回でもいい、長期的に継続性をもってやっていこうということで、今回第二回公演を開催することになりました。

兵庫が発端ということもあり、キャストにも大阪で活躍するダンサーが多く加わっています。協力してくれているバレエスタジオ ミューズの方や、ソウダバレエスクールの卒業生、そこから海外に出て活躍している人たち。あと今回は、新国立劇場バレエ団から米沢唯さんや奥村康祐さん、寺田亜沙子さんも出演します。

 

2015年公演より©瀬戸秀美

2015年公演より©瀬戸秀美

 

堀内さんの作品をはじめ充実のプログラムも大きな魅力です。

堀内>プログラムのうち僕の振付作は『Romantique』『More Morra』『ヴィヴァルディ・ダブル・チェロ・コンチェルト』の三作品。あとブライアン・イーノス振付作『ブルーム』と、ジョージ・バランシンの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』が入っています。

『ヴィヴァルディ・ダブル・チェロ・コンチェルト』はオープニング作品として上演します。こちらはチュチュを着て踊る、現代のクラシック的な雰囲気の作品になっています。

『Romantique』は四楽章からなる約30分の作品で、吉田都さんが出演します。都さんと僕のまわりを女性10人、男性7人で固めつつ、都さんをフィーチャーしていきます。初演は2008年で、セントルイス・バレエのためにつくりました。都さんとは2013年に兵庫で一緒に踊っていますし、セントルイス・バレエでもやはり2014年に踊ったりと、何度か一緒に踊っています。ジャズピアニストのクロード・ボリングが作曲した曲を使っていて、そのクラシックでありジャズ的な要素もあるメロディを都さんもすごく気に入ってくれて。“せっかく東京で公演をするなら私の好きな『Romantique』はどうですか?”と都さんから提案をいただき、今回プログラムに加えた形です。

都さん用に衣裳や出方を変えたりと、多少アレンジを加えています。作品というのは一度つくったらそれきりではなく、どんどん変えていくのが僕のスタイル。これまでも上演する度に手を加えていますし、同じことを同じようにやるのではなく、そのときの感性や気持ちによって少しずつ変わっていく。キャストも変わればずいぶん雰囲気も変わると思うので、またきっと違っていくでしょうね。

 

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

2015年公演より『La Vie』©瀬戸秀美

 

『More Morra』もセントルイス・バレエのために創作した作品で、今回はロサンゼルス・バレエの清水健太さんと新国立劇場バレエ団の寺田亜沙子さんにメインパートを踊ってもらいます。作曲家のジョー・モッラはもともとニューヨーク時代の友人で、今はワシントンDCで活動しています。以前彼が自身のCDを送ってくれたことがあり、聴いてみたらすごく面白い。ならばと彼の曲に振付をしたら非常に喜んでくれて、“じゃあ今度は僕が元のためにバレエ曲を書くよ”ということで一緒に仕事をするようになりました。作曲家とのコラボレーションには前から挑戦したいと思っていたので、非常にいい機会になりましたね。

彼が曲を書いたときの経緯を聴いているうちに、それをイメージにして作品をつくろうと考えてできたのが『More Morra』。曲が生まれた当時はイラク戦争が勃発したころで、世界の和平を望む気持ちだったり、人類のハーモニー、違う人種でも仲良く暮らし、戦争のない世界をつくり上げられたらというストーリー性が込められている。実際曲のなかにも戦争に派遣された兵士たちのリズムだったり、そういう雰囲気が感じられる部分が出てきます。ただ作品としては特にそれを説明するのではなく、観てくださった方が“変わった作品だね”でも “面白い作品だね”でもいい、何かしら感じてもらえればいい。僕としては振付をするときのきっかけとして曲の背景があり、それが踊りの底辺になればと思いつくり上げていった感じです。

振付家のブライアン・イーノスをセントルイス・バレエへゲストで招き、作ってもらったのが『ブルーム』。ジョビー・タルボットというイギリスの作曲家の楽曲を使った作品です。女性はポワントを履いて踊りますが、作風としてはコンテンポラリーです。これといったストーリーはないけれど、現代的な動きというか、日本人にない感性の作品なので、みなさんに上手くアピールできると思います。こちらはグループ作品で、セントルイス・バレエの森ティファニーと上村崇人が中心になり、そのまわりを女性7人、男性5人が固めます。

『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』は米沢さんと奥村さんが出演します。去年は加治屋百合子さんとジャレッド・マシューズさんに『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥを踊ってもらいましたが、今年もクラシック的なパ・ド・ドゥを何か入れたいと考えてプログラムに加えました。おふたりの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を観てみたいという想いもありました。

 

2015年公演より『ドン・キホーテ』©瀬戸秀美

2015年公演より『ドン・キホーテ』©瀬戸秀美

 

 

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