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小㞍健太『Study for Self/portrait』インタビュー!

コンテンポラリーダンサーの小㞍健太さんが、この夏原美術館を会場にダンスパフォーマンス『Study for Self/portrait』を開催。自身の振付によりソロを踊り、そのダンサー人生と今後の行方を描きます。開幕を前に、小㞍さんに作品への想いをお聞きしました。

この夏原美術館で上演される小㞍さんのソロ作品『Study for Self/portrait(セルフポートレイト(習作)』。タイトルに込められた意味、テーマとするものとは?

小㞍>自分自身がこれまで何をしてきて、これから何をしたいのか。それを自分の身体と向き合いながら、ダンスにとらわれずに動きをつくれたら、という想いがまずありました。“どうしてバレエを辞めたんですか?”とか“どうしてコンテンポラリーに転向したんですか?”とよく聞かれることがありますが、僕の中ではバレエが発展した形でコンテンポラリーがあり、踊るという意味ではつながっている。“僕がやりたいのはこれだ!”と思って進んできたら、いつしかコンテンポラリーになっていた。

今改めてその過程を振り返り、例えば何をしてきたからキリアンが好きになったのか、どうしてキリアンが僕を好きになってくれたのか、いろいろ自分自身で整理して、じゃあ次は何ができるのかというところに行けたらと思っています。そう意味での“セルフポートレイト”であり、僕の人生まだまだ続くだろうということで“習作”と付けました。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

より身体と向き合うために、今回は即興を多く取り入れています。比率でいうと全体の約3/4がインプロです。これまで作品の一部がインプロになっていたり、イベントでちょっと踊ることはありましたけど、ひとつの作品をほぼインプロで踊るのは今回が初めてです。

自分で自分に振付をしていると、困ったことに毎日変わってしまうんです。やっぱりこうしようとか、音の取り方はこっちの方がいいだとか、毎日同じところを繰り返して、やっとできたと思ってもまた変えたくなってしまう。結果的に、表現を制約しているように感じて自分を苦しめることになる。そういう部分も含めて振付を踊ることにちょっと飽きてきているというか、壊していきたい気持ちが強くなっているのを自分でも認識していて、即興パフォーマンスにしようと決めました。ただインプロと対比させる意味でも振付のパートを一部設けて、制約を課した上で音楽とどう対話できるか挑戦しようと思っています。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

自作ソロのクリエイション法とは? 

小㞍>創作で重視するのはコミュニケーションです。僕は対話をするのが好きで、振付家としてダンサーと対話をしたり、自分がダンサーであれば観客と対話をしたり、空間、身体との対話をしたり……。そこでのコミュニケーションが、いわゆるインスパイアされている部分だと思う。ソロの場合は自分の身体とのコミュニケーションで、それをどうお客さんに想像させられるものになるかすごくわくわくします。ただ僕が“こういう想像をさせたい”と思っても、なかなかそこまで到達できない自分がいて。自作自演の難しさです。

2010年にネザーランド・ダンス・シアター(NDT)を辞めた直後に一度20分間のソロ作品をつくったことがありますが、毎日自己嫌悪の連続でした。“これしかボキャブラリーがないんだ”とか“何だこれ、つまらないな”と、映像をみるたび落ち込んで。あれから7年経が経ち、身体は当然衰えている。身体的なダンサーのピークは30歳くらいでもう越えている。その間に蓄積できたものはというと、表現を豊かにする部分。でも何をどうしたら豊かにできるかというと難しい。指導をしているとすごくよくわかるし、いつも人に言っているんですけど、それが全て自分に返ってくる(笑)。本当に勉強になります。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

 

インプロではありますが、あらかじめいくつかタスクをつくっておきます。身体のタスクと創造的なタスク、音楽的なタスクと、いろいろネタをつくってノートに書き留めておく感じです。やっぱり自分が伝えたいことが伝わらないとなると悲しいし、表現者として傷つくので、嫌いでも好きでも何らかの形で何かが伝わるようにつくりたい。頑固親父のラーメン屋みたいに“これが旨いんだ、黙って食え!”というのではなくて、おいしいという人もいれば、そうじゃないという人がいてもいい。でも何かが触れるようにはしたいと思っていて、最近はその辺を考えてつくるようになりました。

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

今回は美術館が会場ということで、観客との距離感もまた普段とは違うものになりそうです。

小㞍>演出はあえてシンプルにするつもり。ライティングもほとんどあるものだけで構成するので、お客さんからどう見えるかというのは一番難しいところです。舞台の場合は舞台と客席の空間が全く違う。こうして同じ空間にお客さんと一緒にいるのは、また違った緊張感がありますね。

ミュージシャンのライブでステージとお客さんが一体になる空気感、あれがすごく好きで、いつかそういうパフォーマンスをしてみたいという憧れもあります。ミュージシャンがライブ中にトークをするように、ダンスでもちょっとした+αがあっても面白いのではと。ダンスの内容自体はお客さんに想像して欲しいけど、どうしてその作品をつくったのかという話を聞くと興味深いこともあると思う。例えばモーツァルトの楽曲ですごく明るく聴こえる曲でも、実はこの時期彼は落ち込んでいて自分を励ますためにつくったんだという話を聞くと、また新しい解釈ができたりする。これは僕の作品に限らず、そういうスタイルのパフォーマンスがあっても面白いのではないかと思っています。

 

(C) TOKIKO FURUTA

(C) TOKIKO FURUTA

楽曲はどのようなものを考えていますか?

小㞍>サウンドデザイナーの森永泰弘さんにお願いしています。森永さんにまず全体の構成を伝えた上で、サウンドのデザインはもちろん、どういう形で展開していくか、どういう形でラストに持っていくのか、いろいろイメージを共有しつつ進めています。彼は東京藝術大学大学院映像研究科を卒業し、映画理論家/作曲家のミシェル・シオンに師事していたなどの経験があるので理論的な知識も豊富で、逆に僕は現場の人間で理論としての知識がないので、一緒に創作していると改めて知ることも多いですね。創作していく過程で、“健太くんが言っているのはこういう理論なんだよ”と教わったりと、音楽的に整理しながらつくっています。

振付のパートではグレン・グールドのピアノ・ソナタを一曲使用する予定です。彼が若いころに弾いた曲とキャリアの終わりに弾いた曲のふたつのバージョンがあって、今回使うのは前者の方。面白いことに、若い頃の方が音がゆっくりなんです。僕がクラシックからコンテンポラリーに移行してきたことと関連づけるというとヘンですけど、いつか歳を取って何十年後かにまたソロパフォーマンスをする機会があれば、ふたつ目の方の音を使いたいなと考えています。

 

(C) TOKIKO FURUTA

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-コンテンポラリー