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Noism設立20周年! 国際活動部門芸術監督 井関佐和子インタビュー

日本初の公共劇場専属舞踊団として、2004年にりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館に誕生したNoism。設立20周年を迎えた今、国際活動部門芸術監督・井関佐和子が想うこととはーー。これまでの20年と、現在、そしてこの先の展望を聞いた。

新制度ではレジデンシャル芸術監督(=芸術総監督)の契約は5年ごとの更新で、現在の契約は2027年まで。また芸術監督の任期は最長2期・10年までと制定されています。現在の体制をどう考えますか?

Noismの体制については、穣さん、山田勇気(地域活動部門芸術監督/ Noism0)と私の三人でよく話し合っています。それぞれの部門で必要だと思うものは私たちも穣さんに要求するし、それを穣さんが市や財団に要求してもくれます。今あるもので満足しないというのは、もうNoismのある意味鉄則になっているので(笑)。

ここからどうなっていくかというのは冷静に判断しなければいけないところです。今後については穣さんが一番責任を担っているので、穣さんの意向というものがまずあるでしょう。ただ状況が変わらなければ、やっぱりこのまま続けていくのは難しいでしょうね。

たとえ難しくても、行動を起こしてきちんと発言をしていかないといけない。難しいということを明らかにしないと、内側だけの問題で終わってしまう。そのことの重要性というのは外側にいるみなさんにはわからないだろうし、なぜダメなのかということをきちんと説明しなければいけない。それによって事が動くかもしれないし、それによって他の県が動きはじめるかもしれない。私たちにとっては、Noismだけでなく、この国に劇場専属舞踊団をもっと増やしていくことが理想だから。「新潟のNoismは特別だから安泰でやっているんでしょう」と言われるのは危険だと感じています。

Noismというのは、ただ踊りが好きだから、お金がもらえるから、みんながいるから続けましょう、というカンパニーではない。それなら民間で一生懸命お金を集めて、集団で集まって、みんなで一緒にやりましょうでもいい。Noismはそういう集団ではなくて、劇場専属舞踊団としてどういう風にやっていくか。メンバーにも“プロフェッショナルなカンパニーなんだ”ということを日々伝えています。

『セレネ、あるいは黄昏の歌』リハーサル 撮影:遠藤龍

国の助成金に関しては今後新しい動きがありそうで、可能性を探っている状態ではあります。とはいえまだ何も決定していないので、どうなるかわからないですが、もしその新しい助成金が出たとき、この国の芸術監督やプロデューサーと言われる人たちが何に使うか。そういう段階にはきている。

今は単純にお金がないから難しいということになっているけれど、“もしお金があったとして、果たしてみなさんどうしますか?”という問いは投げかけたい。専門家を育成して専属化していくことができるのに、そうしないということがあったとしたら、果たしてこの国の未来はどうなるのだろう。それをしっかりと見極めて、この国の舞踊家の未来を本気で考えているかどうかを判断したいと思っています。

『セレネ、あるいは黄昏の歌』リハーサル 撮影:遠藤龍

国際活動部門芸術監督/舞踊家として、井関さんのこの先の展望、そして今後のNoismに期待することは?

穣さんが掲げる劇場文化100年構想については全く同意見です。ただ自分の人生においてどうするかというのは、ちゃんと自分で判断しなければいけないと思っています。永遠があるとは誰も思っていない。その部分は結構冷静です。

2027年で一旦契約更新となるけれど、もし市に要求したものが通ったとして、穣さんがやるのかどうか。穣さんが辞めると言っても私が残る可能性はあるし、穣さんがやると言っても私が国際活動部門芸術監督を降りる可能性もある。穣さんが辞めると言ったとき、国際活動部門芸術監督として「絶対にいてください」とお願いするのか、「穣さん大丈夫です」と言ってその後自分が引き継ぐのか、また違う人を立てましょうとなるのかーー。そこに関しては個人個人、自分の選択というものを持っています。これが2人一致するかもしれないし、しないかもしれない。

『セレネ、あるいは黄昏の歌』リハーサル 撮影:遠藤龍

Noismの今後については今は長く見ることができないけれど、現時点では、やっぱりもっと広く知られていきたいという想いがすごくあります。もっと海外に行きたい。海外にはすでに出ているけれど、コロナ禍もあり最近はあまり行けていませんでした。

穣さんがずっとメンバーに言い続けているのは、世界と勝負するんだということ。稽古で「そこは違う、そうじゃない」と注意をしていること自体、穣さんの作品を良くするためだとか、単に彼らのレベルが上がるためではない。上手くなりたいから、楽しいから踊っているのではなくて、世界で勝負するためにこの身体性、表現をみんなひとりひとり持ってやるべきだと思う。やっぱりそれは私たちが一番忘れてはいけないところ。大きいことかもしれないけれど、でもそれを目指さなければいけない。

メンバーのみんなにもっと広い視野を持たせてあげたい。海外でもっと穣さんの作品を見せたい。みんなに踊ってほしいし、自分も踊りたい。そこはやはり求め続けていきたいと思っています。

 

プロフィール

撮影:松崎典樹

井関 佐和子
Sawako ISEKI

Noism Company Niigata国際活動部門芸術監督 / Noism0
舞踊家。1978年高知県生まれ。3歳よりクラシックバレエを一の宮咲子に師事。16歳で渡欧。スイス・チューリッヒ国立バレエ学校を経て、ルードラ・ベジャール・ローザンヌにてモーリス・ベジャールらに師事。’98年ネザーランド・ダンス・シアターⅡ(オランダ)に入団、イリ・キリアン、オハッド・ナハリン、ポール・ライトフット等の作品を踊る。’01年クルベルグ・バレエ(スウェーデン)に移籍、マッツ・エック、ヨハン・インガー等の作品を踊る。’04年4月Noism結成メンバーとなり、金森穣作品においては常に主要なパートを務め、日本を代表する舞踊家のひとりとして、各方面から高い評価と注目を集めている。’08年よりバレエミストレス、’10年よりNoism副芸術監督を務める。22年9月よりNoism Company Niigata国際活動部門芸術監督。第38回ニムラ舞踊賞、令和2年度(第71回)芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

 
 

公演情報

Noism Company Niigata 20周年記念公演 Amomentof

[新潟]2024年6月28日(金)〜6月30日(日)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉

[埼玉]2024年7月26日(金)〜 7月28日(日)
彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉

問合せ:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル
025-224-5521(11:00-19:00 / 休館日除く)
https://noism.jp/amomentof-20th/

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