dancedition

バレエ、ダンス、舞踏、ミュージカル……。劇場通いをもっと楽しく。

リアル動画で大注目! 谷桃子バレエ団 大塚アリスインタビュー

リアル動画で話題沸騰中の谷桃子バレエ団が、この夏75th Anniversaryガラ公演「TMB HISTORY GALA PERFORMANCES」を開催。谷桃子バレエ団が誇る人気演目とダンサーが勢揃いする豪華プログラムで、大きな話題を集めています。ここでは、主要キャストを務める大塚アリスさんにインタビュー! 公演への意気込みとバレエ団での日々をお聞きしました。

2023年4月に入団。ちょうどYouTubeがはじまり、いきなりフィーチャーされました。

大塚>「まずご自宅に一度伺います。何日何時大丈夫でしょうか」と言われ、そのまま撮影がはじまりました。

YouTubeに関しては特に説明もなく、撮影にしても全て私がトップバッターでした。だからどんな風に映るのか、どんなものなのかもわからないままでした。

事前にアンケートをわたされて、いくつか質問に答えています。生年月日とか、趣味、好きなこととか、簡単な自己紹介です。そこに私が“趣味はお菓子づくり”と書いていたらしく、撮影のとき「今日つくってください」と言われてつくったのがスコーンでした。あれはいろいろなところで言われましたね(笑)。

どんな風になるかはわからなかったけれど、ディレクターさんに全てお任せしていました。バレエ団の方からも、こういう話はしたらダメとNG的なことは何も言われていなかったので、いろいろ喋っちゃった(笑)。そうしたらあんな感じになってしまって。

YouTubeにあがった動画を見たときは、“どうしよう、やらかした!”と思いましたね(笑)。バレエ関係者はもちろん、バレエに関係ない方も誰でも見ることができるじゃないですか。街で突然知らない人から声をかけられるようにもなりました。「サインください」と言われたりもして、それは本当にびっくりでした。

東京タワー公演

どうしようとは思ったけれど、もう何を言われてもいいやと考えて、YouTubeのコメント欄は一切見ないようにしようと決めました。というのも、YouTubeが流れるのはタイムリーではなくて、私にとってはもう過去のことだから。でもInstagramのダイレクトメッセージに書き込まれることもあって、どうしても目にしてしまう。東京タワー公演で花魁をやるとYouTubeで流れた瞬間、すごい賛否両論が巻き起こって、「なんで花魁なんですか。そこまでロシアでやってきて、花魁をやるんだったらやめた方がいい」など、いろいろなことを言われました。私自身そこで、じゃあ見返してやろうという気持ちになりました。

ただ東京タワー公演の握手会はすごく楽しかったですね。あんな機会はなかなかないし、みなさんほとんどバレエを観に来たことのない方ばかりで、もっとバレエをたくさん観てもらえたらなって思います。

YouTubeでみなさん注目してくださって、励まされたこともたくさんあります。うれしかったのが、「昔からバレエがしたかったけど身体が不自由だからできない。けれど75周年ガラの『瀕死の白鳥』の動画を見てすごく心動かされた」というメッセージ。「公演に行けるかわからないけど、生き甲斐です」という言葉をいただいて、やってて良かったなって改めて思いました。

東京タワー公演

YouTubeではたびたび涙されています。入団後はいろいろ葛藤があったようですね。

大塚>入団当初から、“あれ、なんか違うな”と思うことはいろいろありました。本当にロシアバレエが好きで、ロシアメソッドが好きで、ロシアバレエが踊りたくてやってきた。写真で見る限り谷桃子先生はロシアバレエの踊り方をされる方なのかなという勝手なイメージを抱いていて、でも実際に来てみたら全然違ってた。ロイヤルメソッドが主流になっていて、髙部先生もロイヤルですよね。

もう最初のクラスから「違う、違う、違う」と言われてしまって、すごく戸惑いがありました。どうしたらいいかわからなくなって、立ち方からわからなくなってしまった。とりあえず真面目に言われたことは全部やろうとしすぎて、自分が何なのかわからなくなってしまった。最初にみんなを見たとき、良くも悪くも全く一緒だなという印象がありました。自分らしさがなくなってしまう気がして、それもすごく嫌だった。そこで揺れたというのがありました。

ロシア州立バレエシアター時代

谷桃子バレエ団はすごく温かいですね。ロシアとは違います。まずバレエに向き合う姿勢から違う。いい意味でも悪い意味でも日本人らしいというか、本当にザ・日本という感じがします。すごく真面目なところとか、周りに気を使うところもそう。それが日本らしさなのかもしれないけれど、ロシアの方が効率がいい気がしてしまう。

『白鳥の湖』のリハーサルがはじまる前、髙部先生に「もう無理です、辞めます」と伝えています。こんな気持ちで出ることはできない、失礼だなと思って。でも髙部先生に「谷桃子バレエ団の『白鳥の湖』は特別だから、1回経験してほしい」といわれ、そこで踏みとどまりました。

『白鳥の湖』ではパ・ド・トロワを踊っています。やはり気持ちがどうしてもついていかなくて、いろいろ注意もたくさんもらいましたし、しんどい部分もありました。コール・ド・バレエにも入っていたので、パ・ド・トロワだけに集中できるわけでもない。もともと人と合わせることが苦手な上に、谷桃子バレエ団のコール・ド・バレエは徹底的に揃えなくてはいけない。ラインよりも揃えることが大事で、とにかく揃えてと言われてしまう。もちろんロシアでもコール・ド・バレエはやってきたけど、揃え方が違うんです。

谷桃子バレエ団公式YouTubeより

谷桃子バレエ団では、背が低い人から高い人まで、みんなが同じように合わせてくださいと言われるのだけど、それがすごく難しくて。私は身長165cmあるけれど、フォーメーションによっては150cmの人が前にくることもあるわけですよね。それでもミリ単位で合わせていく。私にしてみれば、“どうやって合わせるんだろう?”という気持ちです。いろいろ納得できないところがあって、ここを合わせるよりもっと上体を合わせたいと考えてしまう。コール・ド・バレエを踊るとき、いかに自分を殺すかというのがすごく辛くかった。『白鳥の湖』のときは結構しんどかったです。

新春公演『白鳥の湖』

現在の心境は? 今後どんなダンサーを目指していこうと考えていますか。

大塚>『白鳥の湖』が終わっても、しばらくは揺れていました。でもいろいろな方とお話をして、だいぶ気持ちが変わりました。日本のバレエ団にもいいところがあれば悪いところもあり、ロシアのバレエ団にもいいところもあれば悪いところもある。どちらにいても結局何かある。だったら今いるところで自分が変えていけばいいと考えようと気持ちを切り替えました。“この人のためにみんなでこうしたいよね”という踊りを踊れるようになればいいんだ、コール・ド・バレエも変えてけばいいんだ、そう思うようにしています。

谷桃子バレエ団公式YouTubeより

バレエダンサーとしての理想はすごくあります。この人のこれがすごい、あれがすごいというのではなくて、心に残る踊りを踊りたい。バレエをよく知らない方でも、“うわ、すごいバレエを観た!”と思ってもらえるバレエを踊ることができたらと思っています。

東京タワー公演

 

プロフィール

大塚アリス
Alice Otsuka

2016年〜2018年ワガノワ記念ロシアバレエアカデミー留学。リュドミラ・コワリョーワに師事。2018年~2020年Russian State Ballet Theater Gordeev(ロシア州立バレエシアター、モスクワ)2023年4月谷桃子バレエ団入団。

第4回わかやま全国バレエコンクール 第3位
第3回ふくおか全国バレエコンクール 第4位
エドゥケーショナルバレエコンクール 第1位、審査委員特別賞
第29回こうべ全国洋舞コンクール 第7位

AsianGrandPrix 2017 第4位
第4回びわ湖洋舞コンクールinもりやま 第1位、滋賀県知事賞
European Ballet Grand Prix 第2位

 

谷桃子バレエ団公式HP
https://www.tanimomoko-ballet.or.jp

谷桃子バレエ団公式YouTube
@tmbcompany

 

 

-バレエ