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福田紘也『Nosferatu』インタビュー!

新国立劇場バレエ団の福田紘也さんが、横浜BankARTで振付作『Nosferatu ノスフェラトゥ』を発表! 新国立劇場バレエ団のダンサーをキャストに迎え、自身の作品世界を披露します。創作中の福田さんに、作品への想いと意気込みをお聞きしました。

『Nosferatu』の同時上演として昨年新国立劇場で発表した『福田紘也』が再演されるのも見所のひとつ。『福田紘也』にはお兄さまで新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田圭吾さんと、プリンシパルの福岡雄大さんが友情出演します。

福田>頼んでもいないのに、兄から突然「『福田紘也』踊るよ、簡単でしょ?」と言われたんです(笑)。さらに、「雄大くんも誘うから」と言う。“いや、兄貴は家族だからいいとしても、雄大くんは幼馴染とはいえどうなの……?”と思っていたら、兄がさっさと話を付けて、結局雄大くんも出演してくれることになりました。

リハーサルで雄大くんが踊っているのを見て、“あ、僕より上手い!”って思いましたね(笑)。ただ机の上で倒立するポーズに手こずっていて、“コツ何?”と聞かれて……。雄大くんとはもう少しで30年近くの付き合いになりますが、コツを聞かれたのは初めてです。初日に兄が『福田紘也』を踊り、二日目と最終日は雄大くんが『福田紘也』を踊ってくれます。ただ兄はコーラが飲めないので、そこだけ練習しといてね、と言ってあります(笑)。

 

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そもそもふたりが出演することになったのは、『福田紘也』の初演のときにバレエ団の宝満直也さんから「これ圭吾さんや雄大さんが踊ったら面白いんじゃない?」と言われたのがきっかけでした。そのときのことを兄も覚えていたんでしょう。僕も“いつかは……”という気持ちはあったけど、思った以上に早く機会が巡ってきたなという感じ。バレエ団の中でも宝満さんには一番いろいろ相談しています。彼も創作をするので、「自分のソロをつくるときってどうしてる?」とか、「どの程度まで物語のディテールを伝えたらいいのかな?」と聞いたり。いつもためになるアドバイスをくれるので、僕の中では“宝満先生!”と思っています(笑)。

ユニット名を“fukudance”にしたのも、宝満さんの後押しがあったから。今回の出演にあたりユニット名を付ける必要があったんですが、何にするか決めかねていて。”fukudance”は兄が昔ツイッターをはじめたときのアカウント。宝満さんに“これどう思う?”って聞いたら、“いいんじゃないですか、紘也さんの作風と雰囲気が合ってる”と言われて、その言葉で速攻“fukudance”に決めました。

 

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すごくうれしかったのが、宝満さんに「”fukudance”という企画が発展して、いつかジョイントで公演ができたらいいですね」と言われたこと。創作していて本当に心が折れそうだったけど、その言葉を聞いて“がんばろう!”って思えて。いつか一緒にやる公演のタイトルもすでにそのとき決めています。

“fukudance”にしてもきちんと定義している訳ではないけれど、ゆくゆくは兄と僕のふたりで作品をつくれたらいいねという話をしていて。そこに雄大くんが加わり、さらに“fuku”が付く人をいろいろ呼んで公演ができたらと漠然と考えていたんです。僕としてはまだまだ先の話だと思っていたけど、一回目からこの三人でやることになってしまいました(笑)。ただ僕自身兄が作品をつくるときはいつも音の編集をしているので、今後本格的に活動できたらいいなと思っています。

 

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お兄さまとは普段からバレエの話をされていますか?

福田>普段はお笑いの話や映画の話をするくらい。ふたつしか歳が離れていないというのもあって、昔は兄がコンクールで賞を獲ると“自分も同じ賞を目指さなきゃ!”という気持ちがありました。ですが、10代後半のころ、“この人とは違うんだな”ということに気づいて。兄は努力家だけど器用でもあり、対する僕は不器用だからタイプが違う。同じ道だと思っていたけれど、実は別の道なんだと……。でもずっと兄を見ていたから、バレエを踊っているとやっぱり仕草が似てしまう部分はありますね。

 

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僕は最初ドイツのカンパニーにいて、ディレクターの作品をひと通り踊ったとき、“もっと面白い作品が踊りたい、ヨーロッパで今面白い作品をつくる人は誰だろう?”と考えて浮かんだのがデイビッド・ビントレー。デイビッドの作品が面白いというのは聞いていましたが、そのときはまだ彼の作品をきちんと観ていなかったので、ゴールデンウィークに休みをもらって弾丸で新国立劇場の『アラジン』を観に行きました。実際に観てみたらやっぱり面白い。それに話を聞いているとディレクターとしてもちゃんといる方だなという印象を受けて、“間違っていなかった、この人の作品をもっと踊りたい!” と思い、新国立劇場バレエ団に移籍しました。

だから兄の方が先輩になるのですが、バレエ団ではよく“君たち本当に兄弟? なんでそんなに喋らないの?”って言われます(笑)。でも決して仲が悪い訳ではなくて、普段からそういう感じ。ただ僕にとって、兄はバレエに関して一番間違ったことを言わない人ですね。

 

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-コンテンポラリー