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シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS -ドゥナス-』インタビュー!

コンテンポラリー・ダンス界の寵児シディ・ラルビ・シェルカウイと、フラメンコ界の女王マリア・パヘスによるデュオ『DUNAS -ドゥナス-』。世界各地で賞賛を浴びたこの異色作が、遂に日本上陸を果たします。2018年春の日本初演に先駆け、来日中のシェルカウイにインタビュー! 共演のきっかけとクリエイションの経緯、作品に込めた想いをお聞きしました。

『DUNAS -ドゥナス-』はスペイン語で“砂丘”の意味。このタイトルに込められた想い、意図とは?

シェルカウイ>作品についてふたりで話をしていくなかで、“砂漠”というキーワードはかなり早い段階から挙がっていました。砂漠というのは自由や空間を意味する場です。ここでいう空間というのは自分が自分だけになれる場でもあるし、自由というのは人間がみな探し求めているものだと思います。それはまた、国だとか固定概念から解き放たれることを意味しています。砂漠もまた自由になれる場所なのではないかと考えました。

創作の過程で、マリアと共に一度モロッコの南部に行きました。私の父はモロッコ人で、私自身モロッコにルーツがあり、そこから与えられた影響は大きいように感じます。舞台上で互いのコネクションをつくり上げる出発点として、モロッコを訪れるというのはベストなアイデアでした。

砂というのはとても強いものであり、地球を意味していますが、同時に危険を伴います。どの方向を見ても同じで、砂で満たされている。砂漠にいると自分の選択というものを強く意識せざるをえない。何故なら、間違った方向に行くとそこには死が待っているから。自由というのは危険が伴うものなのだということをそこで知りました。砂、砂漠というのは常に変化している。“砂丘”というけれど、形の変わらないひとつの丘という訳ではなくて、風の吹き方、方向によってその形は常に変わり続けている。砂漠を見ていると、海を見ているときと同じような感覚を抱きます。

 

シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』

©David Ruano

 

砂漠は常に変化しています。実際に砂漠の中にいると、それを肌で体感できる。灼熱の暑さ、砂で埋め尽くされていること。砂を掴もうとしても、それは形がなくて指の隙間からこぼれていってしまう。太陽の光の強さ、太陽の位置によってつくり出される影も違います。すごく長い影のときもあれば、太陽が高い位置にあると全く影ができないこともあります。

砂漠で体験したことは全て、人生にも置きかえられるのではないかと思います。掴みどころのない、常に変わってしまうのは人生と同じです。砂漠というは何もない、自分しかいない場所です。マリアとふたりでいると、そこいるのは自分たちだけということに気付かされる。ふたりの繋がりを生み出すという意味でも、最適な環境だったと思います。

また砂というのはスペインとも非常に深い関係があります。例えば闘牛場は砂の中にあり、互いにぶつかり合うこともするけれど、最終的にひとりになる。ふたつの砂丘があったとしても、風向きによってはひとつの砂丘に融合されてしまう。この作品のラストもそうで、融合という意味を持ち合わせています。

モロッコからスペイン、スペインからベルギー、そしてベルギーからスペインへと、ひとつのサークルを意識しました。お互いがそれぞれの文化的背景を共有し、それによりコンテンポラリー・ダンスを超えた普遍的なものが生まれたと信じています。

 

シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』

©David Ruano

 

作り手として振付に徹することもあれば、本作のように自ら出演することもあります。多忙な日々のなか、ダンサーとしての身体性をどのように維持しているのでしょう。

シェルカウイ>時期によってはコーチにお願いして身体をつくることもありますが、普段は特に何もしていません。毎日何かしら決まったエクササイズをしている訳ではないので、すごく調子のいい日と悪い日がありますね(笑)。ただダンサーとして長い間身体の動かし方を勉強してきたのでそこは熟知しているつもりだし、振付家として一日中ダンサーを見ているので身体や動きというものを常に意識はしています。

私は今41歳ですが、その年齢に合った身体づくりや気を付けなければいけないことがあると考えています。基本的な考えとしてあるのが、人間として自分の仕事をやり遂げるためにベストを尽くすということ。これに尽きると思います。しいて言えば、猫のように生きている感じです。私の家には二匹の猫がいますが、常に彼らを観察し、どう自分が動けばいいか、どう生きていけばいいか考えています。

 

シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』

©David Ruano

 

コンテンポラリー・ダンス、バレエ、フラメンコ、武道と、ジャンルを超えた作品に取り組まれています。そこに共通するものとは? 振付家として興味を惹かれる要素、創作の出発点となるものとは何なのでしょう?

シェルカウイ>どのジャンルのダンスであれ、まずその中に自分らしさ、自分と重なるものを見つけます。例えばフラメンコの中にもそれはあって、何かしら自分自身を見い出しています。武道、インド舞踊、バレエにしてもそう。何かしら自分と繋がるものを見つけようとするので、どうしてもパーソナルなチョイスになってしまいます。偏ってしまう傾向はありますが、一方でこれらの異なるジャンルもそれぞれ目には見えない部分で繋がっているように感じます。

最初に自分と共通する部分だと感じるものを何かしら見つけ、次に目には見えない部分にハイライトをあてていくのが私の作品のつくり方です。これまで『DUNAS -ドゥナス-』を世界各地で上演してきましたが、観客の反応が一番良かったのがベルギーでした。何故なら、ベルギーの文化にはフラメンコと繋がる部分があるからです。それは目には見えないものかもしれないけれど、やはり何か感じ取るものがあったのでしょう。

私はベルギーで生まれ育ってきた過程で、いろいろな文化に囲まれ、いろいろな影響を受けてきました。フランス、ドイツ、スイス、スペインといったさまざまな国の影響を受けながら育ってきた。そこには全て繋がりがあると思う。自分の文化や踊りは自分固有のものだと思っていてもそうではなくて、実は透明でさまざまな文化が交錯しているのではないかと感じています。      

 

シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』

©David Ruano

 

 

 

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