白井晃×首藤康之『出口なし』インタビュー!
バレエダンサーの首藤康之さん、ダンサー・振付家の中村恩恵さん、そして女優の秋山菜津子さんと、ジャンルを超えたパフォーマーが集う本作。白井晃さんが上演台本と演出を手がけ、演劇に身体性を取り入れた独自の手法でサルトルの会話劇に挑みます。
白井>はじめに首藤さんから“サルトルの『出口なし』はどうでしょう?”と言われたときは本当に驚きました。私自身学生時代に哲学書を読んでいたり、実存主義に惹かれていた時期があったので、“うわ、そこきましたか?”と何だか見透かされたような気がしたんです(笑)。私としては、もうこれはやるしかない。ただ“やります”とお返事したはいいけれど、一体どうやったらいいかと最初はかなり悩みましたね。
首藤>『DEDICATED』シリーズをはじめ白井さんとはこれまでも何度かご一緒させていただいてきましたが、白井さんは身体性を重視してくださるので、僕たち舞踊家にとってはとてもありがたい演出家さんです。サルトルには以前から挑戦したいと思っていて、白井さんとまた一緒にできないかということで提案させていただきました。ただ台本を完成させるまでは本当に大変だったと思います。
白井>台本には芝居の部分とダンスシーンを分けて書いていて、舞台でも両者が並行して展開していきます。私自身もともと身体表現が好きだったということもあり、これまでも作品に身体表現を積極的に取り入れてきました。例えば『ペール・ギュント』『夢の劇—ドリーム・プレイ—』『春のめざめ』といった作品もそう。ただし身体表現を取り入れてはいても、それはシーンとシーンの移行する部分に動きを数分間入れるという扱いでした。今回はまた違って、ダンスとセリフが均等になっています。
首藤>最近はお芝居に出していただく機会も増えましたけど、ここまでダンスと芝居がきっちり分かれた台本を読んだのははじめてです。話し合いの過程で“ダンスと芝居を分ける”というアイデアは聞いていましたし、実際台本にはセリフと並行して“ダンス”と書かれたシーンがありましたけど、“分けるとは具体的にどういうことなんだろう?”“どう分けるんだろう?”と想像がつかない部分もありました。去年の夏から少しずつワークショップをはじめて、そこでだんだん具体的になっていった感じです。
白井>ここに行き着くまでは試行錯誤の繰り返しでした。言語を身体化するにはどうすればいいか、身体的な感覚を言語化するとどうなるのか、その振幅運動の中で書き進めていきました。ただ言語を身体化していこうとすると、身体の動きが言葉の説明になってしまってちょっと弱くなってしまう。できるだけ明確に、シャープに動いた方がいいだろうということで、思い切って芝居とダンスを断ち切ってしまおうと考えました。セリフがあり、それが終わったらダンスがあり……、という形で両者の振幅運動をはっきりさたらどうだろうと。みなさんに伝えると、“それはいいかもしれません!”と賛同してくださって、最終的にこの形に行き着きました。
首藤>喋りながら動いていると、どうしてもジェスチャーのようになってしまう。ダンスとは別のものになってしまう気がしたので、分けるというのは非常にいいアイデアではないかと思いました。けれど実際にこれを演じるとなると大変です(笑)。台本の半ページがダンス、半ページが芝居となると、どう演じ分けていいか戸惑うところもある。ただその切り替えが上手く見えたら面白いなとは思っています。
白井>芝居とダンスの切り替えが上手くできたら、すごくかっこいい作品になる気がします。とはいえ私自身こんな作業をしたのはこれが初めて(笑)。みなさんも“はい演劇!”、“はいダンス!”と切り替えていると頭の中がこんがらがってしまうみたいで、リハーサルでもよく“あれっ??”となっていますよね(笑)。