dancedition

バレエ、ダンス、舞踏、ミュージカル……。劇場通いをもっと楽しく。

白井晃×首藤康之『出口なし』インタビュー!

J.P.サルトルの会話劇をもとに、白井晃上演台本・演出で描く『出口なし』。首藤康之×中村恩恵×秋山菜津子の三人をパフォーマーに迎え、芝居とダンスを駆使した新たな作品世界を創造します。開幕を直前に控え、白井さんと首藤さんのおふたりにインタビュー! リハーサルの手応えと、作品への想いをお聞きしました。

演劇とダンスの両者を切り替えながら演じていく上で、特に難しさを感じるのはどういった瞬間ですか?

首藤>ダンスから芝居に変えるときがやはり難しいですね。普通の状態から踊りに入るというのは一歩舞台に出ればいつもやっていることなので、さほど抵抗を感じることはありません。だけど踊っているところから芝居に切り替えようとすると、そこに身体が残ってしまう。舞踊の身体のままセリフを喋る訳にもいかないし、芝居になったらまたすっと普通の状態に戻らなければいけない。僕たち舞踊家にとっては普通に歩くことの方が難しかったりするので、喋るときにどれだけダンサーの身体を捨てるか、というのが課題になります。でもきっと秋山さんにとっては逆で、芝居からダンスに変わるときの方が難しいんでしょうね。

白井>おふたりとは違って秋山さんは芝居にはすっと入れても、ダンスに変わるところは混乱して“ワーッ、なんだっけ”となっていますよね(笑)。彼女も昔ジャズダンスをやっていたようだけど、さすがにこうしたスタイルはなかったでしょうね。首藤さんと中村さんもこれからどんどん本気を出してくると思うけど、ダンスが身体に入れば、きっと彼女もこれからガッと来ますよ(笑)。

 

「DEDICATED 2014」より 撮影:大河内 禎

 

首藤>秋山さんと一緒に稽古をしていて、“あぁ、なるほどな”と思うことがたくさんあるし、“こんなに引き出しがいっぱいあるんだ”と本当にびっくりさせられます。演技をしているときはもちろんすばらしいけれど、動くとまたすごい。さすがです。

秋山さんは白井さんとよく台詞についてセッションをされていて、それを見るたび“僕たちはまだまだそこまで達してないな”と改めて思います。自分の中で台詞を解釈して、自分の言葉として発するという作業をされている。たぶん秋山さんとしては、言葉を理解した上で実際にセリフとして発っしたい、ということなんでしょう。一方僕らはまだ言葉をきちんと覚えたかどうかという段階で、早くあそこまで行けたらと思うし、すごく勉強になります。

 

「DEDICATED 2014」より 撮影:大河内 禎

 

三人のパフォーマーについて、演出家としてどう感じますか?

白井>三人が一緒にいると面白いし、素敵な三人だなと思います。三人揃うと本当にいいコンビネーションが生まれていて、みなさん切れ味がいいし、かっこいいなと思いながら見ています。

首藤さんは最近は芝居の方でも活躍されているけれど、恩恵さんがこれだけ喋るのは初めてだと思います。役者としての恩恵さんはすごく素直で、発声練習も一生懸命されていてかわいらしいくらい。首藤さんも同様ですが、一流の表現者は舞踊に限らず何をやってもすてきなんですよね。表現形態を変えたとしても、おふたりが持っている何かすてきなものが出てくるような気がします。

テクニックということではなくて、表現者が持つ内なるものというのは自然と舞台にあらわれるものだし、それはやはり魅力的に見えます。おふたりとご一緒していて、“上手い役者とは一体どういうことなんだろう?”、なんて改めて考えさせられてしまいます。

首藤>いくつかストレートプレイに出演させていただいて、最近ようやく言葉の面白さ、言葉を自分のものにして発する楽しさが少しわかってきたような気がします。だから今、台本を眺めているのがすごく楽しいんです。自分たちは毎日こんなに言葉を使っているのに、想いを持って喋るということはあまりしていないんだな、と改めて感じたりする。サルトルの戯曲にしても、人間の奥底にあるものをどんどん抉り出すような言葉が詰まっていて、“あぁ、人間誰しもこういう感情を隠している部分がいっぱいあるんだな”と思います。いろいろな発見がありますね。

 

「DEDICATED 2012」より 撮影:大河内 禎

 

振付は中村恩恵さんが手がけています。白井さんから振付や動きについて何かオファーはされたのでしょうか?

白井>中村さんの振付があり、そこに首藤さんのアイデアが加わり、また僕も“こっちの方がいいんじゃないでしょうか?”とちょこちょこ提案したりと、みんなでつくり上げていっている感じがします。だから面白いですね。

おふたりとはジャンルが違うし、もちろん文脈が違う部分はあると思います。音楽家と打ち合わせをしているとよくあることですが、“白井さんの言うことは言葉としてはわかる、でもテクニック的に難しい”と言われたりしますから。きっとおふたりも当初は僕が言うことに対して、“白井さんは何を求めているんだろう。それはダンスではちょっと難しいかもしれないな”なんて思われていたかもしれません(笑)。

首藤>最初の頃はそれぞれのジャンルの違いというものを感じたこともありましたけど、今は共通言語が増えた気がするし、両者が上手く溶け合っている感じがします。だからすごくスムーズですよね。白井さんは身体性を重視してくださると同時に、舞踊家と違う側面から観てくださるので、身体性においてもとても勉強になります。

 

「DEDICATED 2012」より 撮影:大河内 禎

 

-コンテンポラリー