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レーゲンスブルク劇場ダンスカンパニー・竹内春美インタビュー!

森優貴芸術監督率いるドイツ・レーゲンスブルク劇場ダンスカンパニーが、この秋最新作『Shakespeare Dreams』を発表! レーゲンスブルク劇場ダンスカンパニーは森優貴さんが日本人として初めてヨーロッパの公立劇場で芸術監督に就任した気鋭のカンパニーであり、竹内春美さんはその最古参メンバーとして活躍しています。『Shakespeare Dreams』の上演に際し、本作の主要キャストを務めた竹内さんに現地取材を敢行! 初演を迎えた感想と、作品への想い、現地での活動をお聞きしました。

オーディションともなれば世界中からダンサーが押し寄せ、才能ある人材が次々と入ってきます。そんななか、ダンサーとしての価値を自身で示していかなければならない。焦りや緊張感を感じることはないですか?

竹内>緊張感はずっとありました。入団するとまず二年更新の契約をもらい、最初の二年が過ぎると一年更新の契約になります。更新ごとに切られる可能性というのは常にあって、実際にメンバーが変わらなかった年はないですね。

私は自分に自信がないというのもあって、入った当初は“これが最初で最後の二年だろうな”とどこかで覚悟していた気がします。新しいメンバーを見ていると、いいところがたくさん目に入ってくる。“この人はこんなことができる、あんなこともできるんだ。それに比べて私はどうなんだろう、いつ切られてもおかしくないな”という恐怖は常に感じていました。

 

森優貴『Shakespeare Dreams』

『Shakespeare Dreams』© Bettina Stöß

 

ただそこで“果たして自分は何ができるんだろう?”と模索したのがよかったような気がします。この5年間、やらなければいけないこと、チャレンジが次々と降ってきました。優貴さんの新作や外部から招聘するゲスト振付家の新作プログラム公演以外に、一年に一度優貴さんから与えられたコンセプトに沿って私たちダンサーが小品を振付・発表させていただく機会が設けられていて、その公演で2分間ひとり語りをしたこともありました。振付家いわく“何でもいいからとりあえず日本語で喋って。僕たちにはどうせわからないんだから”と言う。だけどもともと喋るのが苦手だから踊りをはじめたような部分もあったので、喋るのなんて絶対に無理だと尻込みしていたんです。

でもそこで無理だと言ったら何も始まらないと思い、あたって砕けようと考えました。そうしたら言葉の意味を通り越したユーモアや感情が伝わったのか、日本語がわからないお客さんも笑ってくれた。そこで一歩進めた気がして、ノーは言わないようにしようという覚悟を新たに決めました。

これまで舞台で歌を歌ったこともあれば、ミュージカルのバックダンサーを務めたこともあります。劇場でさまざまな公演に関わり出演することでできることが増えたし、楽しいと思えて、どんどん自信もついた。入った当初はいつ切られるかすごく怖かったけど、今では“切れるもんなら切ってみろ!”とおこがましくも思えるようになってきた(笑)。

『The House』では特別な役もいただいて、私の個性をたくさん出してもらったし、私にしかできない奇妙な子供がつくれたと思います。最初はコンプレックスばかりで、“私なんか使えないのに”という気持ちでいたけれど、それが徐々に変わって、今では自分にしかできないものができるようなったという感覚が生まれています。

 

森優貴『Shakespeare Dreams』

『Shakespeare Dreams』© Bettina Stöß

 

ダンスとプライベートの切り替えはどうしていますか? オフの過ごし方はというと?

竹内>日曜は本番がない限り基本的にお休みです。ただプロダクションがスタートするとプレミアまで2週間オフがなかったり、そのあと穴埋めみたいにたくさんお休みがあったりと、スケジュールはバラバラ。他の国のダンサーの話を聞くと、うちのカンパニーは結構働いているみたいです。身体を維持するのは大変だけど、私は大切な人たちがみんな日本にいるので、休みの日にひとりでいるよりは仕事をしていた方がいいなと思ってしまう。やっぱり5年経っても寂しいんですよね。

オフのときは、家事をしたり、日本の映画やドラマをひたすら観たり、小説を読んだり。こちらの冬はすごく厳しいので、寒くなると劇場と近くのスーパーと家の3箇所をひたすら往復する日々。家は劇場のすぐ近くにあるので、あまり切り替えもできない感じです。できればダンスと離れる時間も欲しいけど、家でもへこんでいたり、興奮していたりする。そこはいまだに不器用ですね。

 

森優貴『Shakespeare Dreams』

『Shakespeare Dreams』© Bettina Stöß

 

劇場のあるレーゲンスブルクは世界遺産に指定された街。おとぎ話のような美しい石畳の風景が広がります。

竹内>“すごく可愛い街だよ!”と聞いてはいたけど、実際に来たら本当にかわいくて、メルヘンの絵本がそのまま現実になったよう。ヴィースバーデンもステキでしたけど、レーゲンスブルクには来たとたんに惚れこんでしまった感じです。人もすごく温かくて、親切で、日本に近い。ドイツって街によって雰囲気が違うらしいので、私にとってはそれもラッキーでしたね。何かあると街が元気を与えてくれるし、この街に救われてるなって感じることは多い。レーゲンスブルク、大好きです(笑)。

 

森優貴『Shakespeare Dreams』

『Shakespeare Dreams』© Bettina Stöß

 

 

-コンテンポラリー