川口隆夫『大野一雄について』インタビュー!
これまで世界25カ国・30都市をツアーで巡ってきました。海外での反響はいかがでしたか?
川口>一番多くツアーしたのはヨーロッパで、アメリカは7都市、あとはメキシコやブラジル、アジアは韓国やインドネシアで上演しています。海外は都市によって舞踏熱がすごく高い場所があって、ヨーロッパでも大野一雄はよく知られていたし、実際に観たことのある人もかなりいたようです。大野について書かれた本も結構出ていて、ポーランドに行ったときは現地の編集者から書籍をいただいきました。
アメリカは特にすごかったですね。ニューヨークやロスには大野のことを覚えている方が多くいたりと、かなりの熱を感じました。もちろん海外も日本もお客さんの反応は一様ではないと思うし、大野一雄を観たことがある人、ない人、知ってはいたという人、研究している人、舞踏も大野一雄も全く知らないで観にくる人もいたと思います。
今回の日本ツアー以降もまだツアーは続きます。来年の秋にまたヨーロッパに行く予定で、パリを中心にマドリッドなどを回ります。可能性の段階としてほかにもあって、いろいろ広がりは感じています。ありがたいことではありますが、ただ僕自身のこれから先の行方を考えると、どうなんだろうとも思ってしまう。大野が『ラ・アルヘンチーナ頌』を初演したのは71歳のとき。それから一体世界中を何周したのか……。自分が71歳になったとき何をしているのか全くわからない。そう考えると大野一雄のスタミナや精神力というのは本当にすごいですよね。

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本作はニューヨークの権威ある賞・ベッシー賞の2017年度ファイナリストにノミネートされるという快挙を達成しています。
川口>ただただびっくりでした。僕はこれまで賞というものをもらったことがないんです。だから本当に青天の霹靂でしたね。僕は日本からビジターとして現地に出向いて公演をしただけなので、ニューヨークの賞の対象になるとも思っていなかったし、全く念頭にありませんでした。ノミネートされたのはリバイバル作品部門で、3組が候補に挙がっていたと聞いています。もちろんチャンスがあればまたニューヨークに行きたいという気持ちはあります。みなさんからたくさんメッセージもいただいたので、また頑張らなければいけないなと思います。
満を持しこの秋日本で再演を迎えます。現在の心境をお聞かせください。
川口>どんな反響が待ち受けているのか、すごくどきどきしています。初演のときはこの挑戦自体に対して“よくやった”といわれた部分があったと思うけど、今回はどんな風に観ていただけるのか。これだけやってきてさぁどうなんだ、何を観せてくれるんだ、という部分はやはりあるでしょう。
だからこそ、大野一雄をコピーすることとはどういうことなんだ、ともう一度きちんと向き合っていかなければいけないと思う。大野をコピーするという行為により挑戦状を叩きつける部分と、大野をとにかくやるんだという部分、そこにはふたつの側面が同時にあって。このふたつを強く持って、作品をしっかり差し出していくつもりです。

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